書名:メリサンド姫 むてきの算数!
原題:Melisande
作者:E・ネズビット(イギリス作家)
出版:小峰書店
内容:昔、人間と妖精が一緒に暮らしていた頃、ある国にお姫さまが生まれ、メリサンド姫と名づけられました。ところが、王さまは姫の誕生祝いの会をしないことにしました。「気をつけていても、呼ぶべき妖精の誰かを忘れる。そうなると、ひどい目にあう」という理由でした。とはいえ、国王夫妻が赤ちゃんを連れて教会から戻ってくると、すでに大広間には七百名の妖精が待っていて言いました。「なぜ誕生祝いに、呼んでくれなかったのだ?」そして「我々はこれから順番に、姫に呪いの贈り物を授けてやろう」と、一番いじわるな妖精ワルボラが言いました。「姫は一生、はげ頭となるだろう」続いて次の妖精が呪いを唱えようとすると、王さまが止めました。「しきたりでは、祝いの会に呼ばれないのは悪い妖精ただ一人と、決まっておる。それは勿論、呪いをかけたワルボラだろう」それで納得した妖精たちは帰っていきました。ですが、赤ちゃんはつるつるの禿げ頭になってしまいました。泣き崩れるお妃さまに、王さまは言いました。「わしは、どんな願いごとでも、一つだけ叶えてくれる魔法の小箱を持っておる。姫が大きくなったら、ゆずるとしよう」さて、大きくなったメリサンド姫が願いごとをする時になると、お妃さまが言いました。「わたしがいうとおりに、願いごとをしておくれ」姫はその通りにしました。「わたしに、金色の髪が生えますように。髪の毛は毎日三センチのび、切るたびに、倍の速さでのびますように……」「そこまで!」と、王さまが遮りました。算数が得意な王さまは、姫が大変なことになると気づいたからです……。
※作者E・ネズビット(1858~1924年)は、自分が女性であると分からないように、「イーディス」という名前をいれずに、イニシャルの「E」だけで作品を発表していた。
書名:ちとせ
作者:高野知宙(たかのちひろ)
出版:祥伝社
内容:明治五年、博覧会に沸く京都。俥屋(くるまや)の跡取り息子・藤之助は急激に変わってゆく京の町を記憶に留めようと歩き回っているおりに、春の鴨川べりで三味線をひく少女ちとせと出会う。十四歳のちとせは丹後の漁師の娘だが、疱瘡(ほうそう)に罹患した後遺症でやがて失明する運命だった。ちとせは元芸妓・お菊のもとで住み込み弟子として稽古に励んでいる。三味線で生計を立てれるようになるために頑張るちとせだが、だんだんと目が見えなくなる不安や自分とは釣り合わない相手である藤之助への恋心に揺れる。三味線を弾くちとせに声を掛けてくれる元武家で邏卒(らそつ)の稔(みのる)や橋の下で草鞋を作りながら暮らす足の悪いツバメなどとの交流を通して成長してゆくちとせが、三味線弾きとして舞台に立つまでの春夏秋冬の話。
※2022年、第三回京都文学賞・中高生部門最優秀賞を受賞した『闇に浮かぶ浄土』に大幅な加筆をし たうえで改題した作品が本書。
俥屋:人力車の店
書名:アインシュタインをすくえ! 時間と空間をこえた8日間
原題:Wie ich Einstein des Leben rettete
著者:コーネリア・フランツ(ドイツ作家)
出版:文溪堂
内容:エミリーは12歳の誕生日のお祝いで、父親と2人で豪華客船クイーン・メリーⅡ号に乗って、ドイツのハンブルクからアメリカのニューヨクに向けて旅をしている。2020年2月28日の真夜中、ご馳走を前にして誕生日まであと5分というタイミングでエミリーは船酔いになってしまう。新鮮な空気を吸おうと1人で甲板へと上がったエミリーは、そこで風変わりなおじさんに出会った。そして、エミリーはめまいで気を失い、意識が戻ったときには周囲が様変わりしていた。父親の待つレストランに戻ろうとしたエミリーは、船の構造や設備がすっかり変わってしまっていることに戸惑う。すれ違う乗客たちの服装も古めかしいもので、エミリーは自分の船室に戻ることが出来ず、疲れ切って食堂のテーブルに突っ伏して眠った。体をつつかれてエミリーが目を覚ますと、傍に2人の男の子がいた。エミリーより年上の少年ロレンツォと7歳くらいの男の子マリクは、今は1913年で此処は蒸気船インペラトール号だと言う。2人は2016年からタイムスリップしてホーボーケンの港につく直前の3日間を繰り返しているのだと語る。3人は船員に見つからないように貨物室の自動車の中で過ごすことにしたが、車の所有者である一等船客の家族がやってきた。隠れているエミリーたちを見つけた女の子エルナは3人を密航者と勘違いするが、両親や大人には告げ口せずに後で会おうと言い残して去って行った。待ち時間のあいだにエミリーたちは家族で移民する少年ヴィリーと仲良くなる。約束の時間に現れたエルナは、3人に空室になっている二等船室を提供し、食事などの世話をしてくれた。3人はエルナとヴィリーに自分たちの本当の身の上を話して聞かせる。2人は未来の話に半信半疑ながらも、ホーボーケンの港でインペラトール号が火事になり乗船客が死亡する事を聞き、それを皆で協力して防ごうということになり……。エミリーたちはループから抜け出し元の時代に戻れるのか?
※本書は、史実と作家の想像を混ぜて創作されている。エミリーがタイムスリップして乗船したインペラトール号は、1913年に就航したばかりの、当時、世界最大の客船でした。全長272メートル、幅30メートルで、4200人もお客を乗せることができた。1等室には908人が宿泊できて、もっとも料金が安い4等船室には1772人分のベッドがあり、さらに乗組員が1200人いた。タイタニック号の事故があったのは前年のことで、人々の記憶にも新しく、このインペラトール号には救命ボートも80艘以上積んでいた。エミリーたちはこの船で火事に遭うが、この火事も本当にあった出来事。物語と同じように、1913年8月26日、ホーボーケンの港に到着した早朝、火事が発生した。
※時代背景:1913年の翌年の夏にはヨーロッパでは第一次世界大戦が始まる。20世紀初頭のヨーロッパは厳しい状況にあり、19世紀から大勢の人々がヨーロッパからアメリカに渡った。インペラトール号のような大型客船ができて、一度に多くの人々が海を渡れるようになったこともこの動きを後押しした。1907年には128万人を超える人々が移民としてアメリカに渡った。ところがアメリカの方でも、資本主義の下、やはり階級格差の問題は大きくなっていて、労働者は長時間の労働や低賃金に苦しんでいた。その結果、あちこちでストライキが起きた。
※作中で、ヴィリーがアメリカではじめて会った黒人に対して差別的な言葉を使う場面もある。今では考えられないことだが、ヨーロッパでは「人間動物園」が人気で、1870年から動物園やサーカス、歳(とし)の市などで、本物らしいセットが作られて、人間が見世物にされていた。ドイツでは1900年にこうした見世物のために植民地から人々をつれてくることは禁止されたが、1940年まで非人道的なショーは続いた。
※作品タイトルにもなっているアルベルト・アインシュタインは、1879年、ドイツのウルムという小さな町で生まれた。物質、空間、時間の構造や重力の本質について研究し、1915年には「一般相対性理論」という論文を発表した。作中でエミリーたちが船でアインシュタインと一緒になるのは、その2年前の1913年だが、実際にアインシュタインがアメリカに行ったのは、1921年である。その後、1932年に3回目のアメリカ訪問をするが、その翌年ドイツでナチスが政権をとると、ユダヤ系だったアインシュタインはアメリカに亡命する。
書名:カトリと霧の国の遺産
著者:東曜太郎(ひがしようたろう)
出版:講談社
内容:エディンバラの旧市街にある金物屋の養女カトリオナ・マクラウドことカトリは、家業を継がず研究者を目標にしている14歳の少女。カトリはエディンバラ博物館で研究助手として働きながら、大学進学のためにラテン語を勉強している。だが、十カ月たっても初学者のまま足踏みしている状態でカトリは将来に不安を感じてもいる。1886年6月下旬、エディンバラ博物館に古物収集家だったバージェス男爵の遺品が寄贈された。呪われた品と噂されるコレクションは、六世紀頃のビザンツ帝国にあったネブラという街からの出土品らしい。しかし、ネブラの場所が何処にあったかは不明で、手がかりは都市の歴史を記した『ネブラ年代記』だけだと言う。寄贈品の確認に立ち会ったカトリは、爬虫類の皮で装丁された大判の本に嫌な印象を受けた。これらの寄贈品は鑑定されることなく夏休みの特別展として7月中旬に公開された。会場の監視の手伝いにかりだされたカトリは、ガラスケースを覗きこんでいた11歳の少女ソフィ・ホールが姿を消すところを目撃した。少女が迷子になったと捜索されるが見つからず、誘拐事件として警察が呼ばれる。事件のあった翌日、カトリは仕事の後の見回り中に特別展示室で不可思議な白い霧と、霧の中に城壁と塔からなる街を目撃する。不可解な体験をしたカトリは、行方不明になった少女以外にも特別展で失踪した人間が三人もいることを知った。週末の日曜日、カトリは幼馴染みのジェイクの家族が経営する宿屋で昼食をとっていた。一緒に食卓を囲むのは、寄宿舎学校の女生徒で良家のお嬢様エリザベス・オールデンことリズ。昨年の春に起きた「眠り病事件」で親しい友人になった二人は定期的に交流を続けているのだ。カトリとリズは連続行方不明事件について書かれた新聞記事を読み、互いの考えを話し合う。それでも何かが引っかかるカトリは、やがて失踪者の名前がネブラ年代記に赤文字で記されていることに気が付く。しかも自分と同じ語源の「カタリナ」という名前も載っていることを発見する。不安になったカトリはリズを巻き込み、二人でバージェス男爵の屋敷へ調べに行き、無人の邸内に忍び込むが……。19世紀後半の英国エディンバラが舞台のファンタジー。
※著者は一橋大学社会学部卒業。エディンバラ大学国際関係専攻修士課程修了。
「霧に巻かれてそこに定住したからネブラ(霧)という名前の街になった」
ソフィア(ラテン語)→ソフィ(英語)
ミハイル(ラテン語)→マイケル(英語)
アガタ(ラテン語)→アガサ(英語)
シメオン(ラテン語)→サイモン(英語)
ラテン語の辞書を開いて「ソフィア」の項目を調べた。
「ソフィア。高い知性、学習、知識を意味する。古代ギリシャ語に由来。中世英語以降はソフィとも」
「カタリナって名前、わたしの名前と同じ語源だったりしますか?」
「そうだよ。カタリナ、キャサリン、カトリオナ。全部古代ギリシャ語の『カサーロス』、つまり『純粋な』という形容詞からきている」
「ゲオルギオスはジョージのギリシャ・ラテン語読みだ」
書名:クルックヘイブン 義賊の学園
原題:CROOKHAVEN The School for Thieves
著者:J.J.アルカンジョ
出版:理論社
内容:13歳の少年ガブリエル・アズリーの特技はスリ。血のつながらない祖母に連れられて各地を移り住んできた。いま暮らしているトーブリッジは、花崗岩の橋が観光名所の田舎。観光客が居なくなる夏の終わりの朝、ガブリエルは乗り換えの通勤客でごった返す駅にたたずんでいた。家政婦として屋敷で働く祖母の稼ぎでは毎日の食事にも事欠く有様なため、通勤客からすった財布でガブリエルは食料を買っているのである。その日、狙ったカモである銀髪の男性から財布をすったガブリエルだが、いつもスリの小道具として愛用している古いコインをすり替えられてしまっていた。そして男性の財布には一枚の十ポンド紙幣と白いカード。そこに記されたメッセージは、『切符を買って、ムーアハート駅に来ること。そこには、きみの才能を活かせる場所がある』。半信半疑のガブリエルは両親から貰った唯一の品物であるコインを取り戻すため、無賃乗車して指定された駅へ赴いた。そこは雑草だらけの荒れはてたひどい駅だが、ホームの端に銅像がぽつんと立っていた。銅像を調べて駅の仕組みに気付いたガブリエルは、隠された門の扉を開け森の中へ伸びている道を進む。やがて前方に深い森に囲まれた湖と、その中央の島にたつ建物が見えてきた。桟橋で同年代の少女と出会ったガブリエルは、銀髪の男に貰ったカードを見せてボートに乗せてもらう。島で彼を待っていた銀髪の男は「カスピアン・クルック」と名乗り、「ここは、クルックヘイブン。犯罪者や詐欺師、泥棒のための学校だ」と言い、ガブリエルをスカウトしたことを告げる。学校創立者の子孫で校長だと言うカスピアンに校内を案内されて説得されたガブリエルは、貧乏な祖母に楽をさせたい一心で入学を決意する。祖母には手紙を出し、ガブリエルの全寮制学校での生活が始まる。学校の生徒は才能をスカウトされた『メリット』と親族が学校の卒業生だという『レガシー』とに分かれ、クルックカップと呼ばれる賞をめぐる競争をする。ガブリエルが桟橋で出会った勝気な少女は校長の娘ペネロペで、他にもハッキングの才能を持つ双子の兄弟など、さまざまな才能をもつ同級生たちと競い合うことになるのだが……。
※著者はポルトガル人とイギリス人の血を引き、ポルトガルのアルガルヴェ地方とイギリスのデヴォン州で育った。アベリストウィス大学で犯罪学と心理学の学位を取得。ロンドン大学シティ校の創作&出版コースで修士号を取得。現在はブルームズベリー出版社で編集を担当している。
「クルックって、犯罪者って意味がありますよね。本名ですか?」
「本名だよ。クルック一族は、昔から犯罪者でもある」
書名:消えたソンタクホテルの支配人
著者:チョン ミョンソプ(鄭 明燮:韓国作家)
出版:影書房
内容:裵正根(ペチョングン)は16歳の少年。父を亡くしたうえに母まで亡くして通っていた外国語学校のフランス語科を中退した正根(チョングン)は、10歳年長の兄で皇宮を守る侍衛(シウィ)隊の参尉(さんい)である裵裕根(ペユグン)に連れられてソンタクホテルにやってきた。ホテルの経営者ソンタク女史の面接に合格した正根はボーイとして働くことになる。1907年春、性悪な先輩ボーイ黄万徳(ファンマンドク)の指導に耐えながら徐々に仕事に慣れてきた正根は、梨花(イファ)学堂の女生徒に下品なからかいをしたという濡れ衣を着せられそうになる。正根は何とか無実を証明し、真犯人の万徳(マンドク)はホテルを追放された。騒動がおこった数日後、伊藤博文統監(とうかん)主催の晩餐会が催される。ところが、翌日からソンタク女史の姿がホテルから消えた。突然の失踪に驚くボーイたち。その後、玄関の郵便受けからソンタク女史の手紙が見つかるが、正根は疑問を持つ。さらに追い出された万徳がホテル周辺をうろついていることに不審を覚えた正根は、ソンタク女史と親しい人たちを訪ねようと考える。しかし、正根は西洋人がおもに話す英語を話せない。困った正根が頼ることにしたのは、先の騒ぎで関わった梨花学堂の女生徒・李福林(イポンニム)。二人は協力して真相を究明し、ソンタク女史が高宗(コジョン)皇帝からあずかった信任状を、潜伏中の密使・李儁(イジュン)に渡す手助けをするが……。
※2018年初版
※物語の背景:本書は、日本の植民地支配(1910年の韓国併合)が始まる3年前を舞台に、史実をもとに創作された物語である。当時、日清戦争と日露戦争の勝利によって朝鮮(1897年から国号は大韓帝国)の属国化を進めた日本は、1905年の第二次日韓協約(乙巳〔ウルサ〕条約)によって韓国の外交権を奪い、漢城(ハンソン:現在のソウル)に統監府(後の総督府)を設置した。大韓帝国皇帝・高宗(コジョン)は、国の独立を守ろうと手を尽くし、1907年にハーグ密使事件が起きる。
※ソンタクホテルは1902年に建てられた西洋式ホテル。経営者のソンタク女史が皇帝高宗(コジョン)に下賜された慶運宮(キョンウングン)近くの土地に建ち、高宗や皇室と密接な関係にある外国人たちの泊まる宿舎、つまり迎賓館だった。
※ソンタク女史は、ロシア公使カール・イバノビッチ・ウェーベルの遠縁(ソンタク女史の妹と結婚したロシア貴族の妹がウェーベル公使と結婚したため姻戚)で、ドイツ・フランス・スイスの国境地帯であるアルザス・ロレーヌの出身。ウェーベルとともに朝鮮に来た彼女は、明成皇后(ミョンソン:閔妃〔ミンビ〕)の信頼を得て、皇后の死後に高宗(コジョン)の側近となり、皇室典礼官として活躍した。清と日本の干渉と圧力を受けていた朝鮮としては、ロシアの協力が必要で、公使の親戚であるソンタク女史は、皇帝と公使を結びつける役割を担っていた。
※梨花(イファ)学堂:小説当時、ソンタクホテルの隣に建っていた学堂は、1886年に米国の女性宣教師が設立した朝鮮で初めての女子教育機関。梨花学堂という名称は高宗がつけたと言われている。現在、梨花女子大学は世界で最も大きな女子総合大学として世界的にも有名である。
大韓帝国侍衛(シウィ)隊:朝鮮王朝末期に王を護衛した軍隊。
参尉:日本の少尉くらいの階級。
書名:魔法のほね
著者:安田登
出版:亜紀書房
内容:小学五年生のたつきは、ある日、算数の授業で答えられず皆に笑われてしまった。落ち込むたつきは真っ直ぐ家に帰らず隣町へ来てしまったうえに迷子になる。追い打ちをかけるように雨が降り、雨宿りに駆け込んだ店は「見捨てられた店」という看板の骨董店。店番の老人は居眠りしているようで、古いものが好きなたつきは店内を見て回り、そこでオラクル・ボーンを見つけた。オラクル・ボーンは三千三百年以上も前のもので、未来を予知する魔法のほねだ。欲しいけどお金がないと悩むたつきに、眠っていたはずの店主が声をかける。「ほねに刻まれている文様の意味を読み解くなら持って行っていい」たつきは出来ないと断ろうとしたが、まわりの人に助けてもらっても良いと言われて骨を貰うことになる。帰宅したたつきは、ほねを見た母親に祖父と話すよう勧められる。ハワイに住んでいる母方の祖父オルオルじぃじとオンライン通話をしたたつきは、オラクル・ボーンに刻まれている文様は殷の時代の甲骨文字だと教わる。オルオルじぃじに助けをもらいながら甲骨文を読み解くうちに、オラクル・ボーンには生贄にされる羌族(きょうぞく)のことが記されていると分かる。たつきは幼友達の風太とかおる、それに前世を覚えているという飼い犬のポチこと前田茶々丸と一緒に古代中国にタイムスリップ!三人と一匹は力を合わせて羌族の人たちを助けようとするが、殷の女王婦好(ふこう)と武丁(ぶてい)王に捕らわれてしまい……。
「オルオル」というのはハワイの言葉で「陽気な」という意味
生贄としてちょうどいい太り方を「美」といった。「美」という漢字は、「太った(大)羊」という意味だ。
書名:最後のユダヤ人
原題:The Last Jew
著者:ノア・ゴードン(アメリカ作家)
出版:未知谷
内容:1489年8月、スペイン王国カスティーリャ地方トレド、コンベルソの医師ベルナルド・エスピーナは聖母被昇天小修道院院長パードレ・セバスティアン・アルバレスから呼び出されて殺された少年の死体を見せられる。少年メイールはユダヤ人銀細工師エルキアス・トレダーノの息子で、依頼された聖骨箱を届ける途中で強盗に殺されたらしい。小修道院長に犯人を見つけるよう頼まれたベルナルドは遺体を調べた後、周辺を訪ね歩いて聞き込みをした。その結果ベルナルドは殺人事件に異端審問所所属の修道士が関わっていることに気付く。そんなときベルナルドは異端審問所からの呼び出され、フライ・ボネストルカと面会する。そして修道士ボネストルカこそが殺人者だと悟ったベルナルドは家を引き払い家族を連れてトレドから逃げ出した。その後、聖アンナの遺骨も盗まれたことで小修道院は閉鎖されてしまった。それから3年後の1492年、フェルナンドとイサベルのカトリック両王は「キリスト教への改宗か追放か」をユダヤ人に迫る布告を行った。スペインからの退去期限は8月2日。長男を喪ったエルキアスは次男と三男を連れてスペインを出て行く決心をした。エルキアスは不足する旅費を補うために未払いの顧客フェルナン・バスカ伯爵を訪ねてトレド郊外のテムブレケ城に赴く。応対に出た執事に伯爵は留守だと告げられたエルキアスは期限ギリギリまでトレドに留まることに決める。エルキアスは三男のエレアサルを弟夫婦に預け、次男のヨナ・ベン・エルキアス・トレダーノと出発目前の最後の夜を自宅で過ごす。そこへ修道士ボネストルカに扇動された群衆が押し寄せ、エルキアスはヨナに裏窓から脱出して隠れているように指示する。言われた通りに洞窟に身を潜めていたヨナは三日後、父の友人の金細工師ベニート・マルティンの家へ人目を忍んで訪れる。ベニートから父の死と叔父夫婦が弟を連れて旅立ったことを聞かされたヨナは後を追おうと考えたが、今からでは合流して国外退去するには間に合わないと指摘される。ベニートからキリスト教に改宗して自分の養子になるよう勧められたヨナはスペイン最後のユダヤ人となることを決意し、弟宛の手紙を空き家となった生家に隠すとロバに乗ってトレドから立ち去った。ペオンとして偽名を名乗って各地を逃亡するヨナは、シウダー・レアルの町でアルグアシルに留置場の小間使いとして雇われる。囚人の世話をすることになったヨナは独房のひとつにトレドで医師をしていたベルナルド・エスピーナを見つける。かつてヨナの亡母を治療したことのあったベルナルドは、彼をトレダーノ家の息子だと覚えていた。ヨナは兄が被害にあった強盗殺人事件の実行犯が異端審問官フライ・ボネストルカであり、真相に気付いたベルナルドを無実の罪で拘留したことを教えられる。ベルナルドから彼の息子への聖務日課書を託されたヨナは、アウト・デ・フェで火あぶりの刑に処せられた彼を見届けると、父と兄を殺したボネストルカへの復讐を胸に町を離れて流亡の生活を続けた。ヨナはグラナダでジプシーの指導者ミンゴと出会い、異文化異民族のなかで生きている彼らの精神に感銘を受ける。そして、絹織物商イサアク・サアディから隠れユダヤ教徒の生活を知らされ、彼の娘イネスに恋する。だが、異端審問の手がグラナダにまで伸びて来ているとのミンゴの忠告に従ってグラナダを去り、船員見習いをして、ジブラルタルに行き着く。そこで、武具師マヌエル・フィエロと出会い、見習いとして働く。敬愛するマエストロ・フィエロが殺されると、彼の遺品を持ってサラゴサで医師をしているマヌエルの兄ヌーニョのところへ行く。医師ヌーニョとの出会いはヨナの人生と思想を根本的に変え、彼は医師となる決意をした。ヌーニョの下で見習い修業をしていくうちに、ヨナは人間の肉体の癒しを通して徐々にに心の癒しに目覚め、やがて怨讐の彼方へ辿り着くのだった……。本書は異端審問時代の1492年にスペインからユダヤ人が追放された歴史的事件を背景とした歴史小説である。
※2000年初版
※コンベルソ:(スペイン語で)キリスト教に改宗したユダヤ人、およびその子孫。
※パードレ:(スペイン語で)司祭(神父)のこと。原義は「父」。
※フライ:(スペイン語で)修道士
※ペオン:(スペイン語で)最下層の肉体労働者。
※アルグアシル:(スペイン語で)裁判所の廷吏(ていり)。
※聖務日課書:(カトリック用語で)司祭や修道者が毎日唱える聖務日課を収めた書物。
※アウト・デ・フェ:(スペイン語で)異端判決宣告式。
※マエストロ:(スペイン語で)親方、師匠、船長。
ヨナは受領書を書いたが、執事はほとんど字が読めなかった。執事は自分の十字記号をぞんさいに書いた。
※十字記号:字を書けない人が代わりに書いた記号
修練士:修道請願を立てる前の試験期間中の人。
助修士:聖職位階につかない修道者。
セボ:セバスティアンの略称。
書名:同志少女よ、敵を撃て
著者:逢坂冬馬(あいさかとうま)
出版:早川書房
内容:独ソ戦が激化する1942年2月、モスクワと要衝都市トゥーラの間にある村人40人程度の小さな農村イワノフスカヤで育った18歳の少女フィーマことセラフィマ・マルコヴナ・アルスカヤは、外交官を目指して大学進学が決まっていた。生まれる前に父を亡くし母娘ふたりで半農半猟の暮らしをしてきたセラフィマ。彼女たちが食害を防ぐための鹿撃ちを終えて村に戻ると、パルチザンを探すドイツ軍が村人たちに銃口を向けていた。セラフィマの母親が村人を救おうと猟銃を構えたものの撃つことを躊躇ううちに、ドイツ軍の狙撃兵イェーガーに撃ち殺されてしまう。セラフィマもドイツ兵に連行されて尋問を受け暴行される寸前、赤軍を率いる女性兵士イリーナに救われる。ところが、イリーナは焦土作戦のために村を焼くと言い、村人たちの遺体にガソリンをかけて焼き払う。イリーナに「お前は戦うのか、死ぬのか!」と問われたセラフィマは、母を殺したドイツ人狙撃兵と母の遺体を焼いたイリーナを殺すと誓う。彼女はイリーナが教官を務める女性狙撃兵訓練学校の生徒となる。学校にはセラフィマと同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女生徒たちがいた。彼女たちと寝食をともにし訓練を重ねるセラフィマ。厳しい訓練に脱落していく生徒が続き、残ったのはセラフィマ・カザフ人の猟師で射撃の天才アヤ・模範的な優等生シャルロッタ・最年長の生徒で皆にママと呼ばれるヤーナ・ウクライナ出身のコサックで誰とでも仲良くなるオリガ。1942年11月、戦局が悪化するなか訓練生たちの養成課程が短縮され、セラフィマたちの卒業試験を実施することが決まった。そこへ内務人民委員部(NKVD)所属の女性ハトゥナが現われ、オリガが本当はNKVDで訓練生たちをスパイしていたことを知る。ショックを受けたセラフィマたちだが、何とか気持ちを立て直し、卒業試験の模擬戦を圧勝して終える。卒業したセラフィマたち4人はイリーナを隊長とした第三九独立小隊として戦地に向かう。イリーナを恨むハトゥナの差し金か、配属先はウラヌス(天王星)作戦が行われる戦場、スターリングラードの前線だった。独ソ戦の決定的な転換点となる戦闘。おびただしい死の果てに、セラフィマが目にした『敵』とは?独ソ戦を背景に、スターリングラード攻防戦と、要塞都市ケーニヒスベルクの戦いを女性狙撃手の立場から描く。
※第二次世界大戦でソ連は参戦国のなかで唯一、女性兵士が従軍した国である。
ミーシカ:ミハイルの愛称
ターニャ:タチヤーナの愛称
アーニャ:アンナの愛称
コーリャ:ニコライの愛称
リューダ:リュドミラの愛称
イーラ:イリーナの愛称
ザイツェフ。兎に由来する名字だ。その教え子故にザイチョーノク(子兎)か
ドイツ語で「王の山」を意味する古都、ケーニヒスベルク
書名:砂漠の旅ガラス
著者:長谷川まりる
挿絵:長谷川まりる
出版:小学館
内容:マッシュルーム戦争によって世界は砂で覆われ、文明は途絶えた。『ぼく』ことツバメは16歳の少年。ツバメは半年前に居住地を出て、『旅ガラス』の青年ミサゴの世話になっている。旅ガラスとは、単独で砂漠を走りまわって砂を掘って暮らす人のことだ。ミサゴの家には二年前に拾ったという声のない少年キツツキも居る。三人は黄色く冷たい砂を掘りかえし、古代人が残した食べ物や日用品や服やバイクを探し当てて暮らしている。砂漠の砂は『防腐塵(ぼうふじん)』と呼ばれる特殊なもので、砂の中に埋もれているものは絶対に錆びたり腐ったりしない。だから古代人の街は、昨日うもれたばかりのように遺っている。ある日、採掘作業のあとにツバメはある物を落とした。それを見たキツツキが小さな声で「バンクシア」と言う。喋れないはずのキツツキが言った言葉に、ツバメは驚く。キツツキを警戒しながらも、ツバメは居住地を出て行くきっかけになった物の名前が分かったことを喜ぶ。そんな時、ミサゴから「旅ガラスの一座に連れて行ってやる」と言われる。『旅ガラスの一座』とは、砂漠に散った旅ガラスたちが月に一度集まって、物々交換や情報交換をする助け合いの場のことだ。よそ者のツバメは今まで連れて行ってもらえず留守番だったのだ。一座の日、ツバメはタシギという青年に旅ガラスをやめて居住地に行ったアビという人物を知らないかと尋ねられる。ツバメはアビが死んだことを言えずに思い悩む。そして、夜になると一座は砂賊の襲撃に遭い、ツバメたちは逃げ出すが……。