小さな独裁者(ネタバレ)
小さな独裁者
原題:Der Hauptmann
2017/ドイツ、フランス、ポーランド 上映時間119分
監督・脚本:ロベルト・シュベンケ
製作:フリーダー・シュライヒ、イレーネ・フォン・アルベルティ
製作総指揮:フィリップ・リー、マーカス・バーメットラー、マルセル・グリーブ、カイ・ニエッセン、ダニエル・ヘッツァー
撮影:フロリアン・バルハウス
美術:ハラルト・トゥルツァー
衣装:マグダレナ・ルトキウィッツ
編集:ミハウ・チャルネツキ
音楽:マルティン・トートゥシャロウ
出演:マックス・フーバッヒャー、ミラン・ペシェル、フレデリック・ラウ、ベルント・ヘルシャー、ワルデマー・コブス、アレクサンダー・フェーリング、ブリッタ・ハンメルシュタイン、サッシャ・アレクサンダー・ゲアサク、ザムエル・フィンツィ、ボルフラム・コッホ
パンフレット:★★★(800円/本国版プレスの引用記事と大場正明さんのレビューが良かった!)
(あらすじ)
1945年4月。敗色濃厚なドイツでは、兵士の軍規違反が続発していた。命からがら部隊を脱走したヘロルト(マックス・フーバッヒャー)は、偶然拾った軍服を身にまとって大尉に成りすまし、道中出会った兵士たちを言葉巧みに騙して服従させていく。権力の味を知ったヘロルトは傲慢な振る舞いをエスカレートさせ、ついには大量殺戮へと暴走しはじめるが……。(以上、映画.comより)
予告編はこんな感じ↓
80点
※本作は「カミヤマ 春の“マン”祭り」対象作品です。
タイトルに「マン」が付かないのに、なぜ本作が「カミヤマ 春の“マン”祭り」対象作品になっているのかというと、ドイツ語の原題が「Der Hauptmann」だからーーなんてことはどうでも良いとして(苦笑)。何かの作品を観に行った時に劇場で予告編を観たら、面白そうながらも実に厭なムードがムンムン匂ってきたので、スルーするつもりだったんですけれども。「アトロク」リスナーの「はたらくほうのももさん」がオススメしていたので、ちくしょう、スゲー気になってしまってね…。2月8日の公開から2ヵ月以上経った本日、アップリンク渋谷にて会員価格(1300円)で鑑賞してきました。「予想以上に厭な映画!(°д°;) ヒィ!」と思ったり。
3番スクリーン、観客は6人ぐらいでしたかね。
お話自体は「敗戦間近の1945年4月、ドイツの脱走兵ヘロルトが将校の軍服をゲットすると、ハッタリをかまして大尉になりすまし、権力を濫用する」と、まったく予告編通りなんですが…。「へロルトが勝手に暴走した」のではなく、“そのウソに薄々気付きながらも己の利益のために目をつむった周囲の人間たち”も彼のモンスター化に一役買っていたから、なるほどなぁと。要は「権力を握った個人の暴走」だけでなく「歪んだ権力構造が作られる過程」もキッチリ描いていて、現代にも通じるテーマだったというか。例えば、最近話題になった起業家・塚本廉さんの経歴詐称問題とか、彼自身が残念なだけでなく、正直、薄々気付いていた人もいたんじゃないか(でも自分の利益のために目をつむっていたんじゃないか)、なんて思ったりしてね。あと、そりゃあ現政権の歪みとか、自分が働いていた“マッチョな職場特有の嫌な空気”とかも重ねちゃったりしましたよ。
マックス・フーバッヒャー演じる脱走兵へロルトが口八丁手八丁で成り上がるのです。
同じく脱走兵のキピンスキー(フレデリック・ラウ)はすぐ気付くも、利害が一致しているので見逃すというね(のちに射殺)。
警備隊長シュッテ(ベルント・ヘルシャー)は胡散臭さを感じつつも、脱走兵を処分するためにへロルトを利用してましたよ(のちに爆死)。
パンフで大場正明さんが書かれていて、「我が意を得たり!Σ(°д° ) クワッ!」と思ったんですけど、「おかしな人があれよあれよとドイツで権力者になっていく」ということで、近作の「帰ってきたヒトラー」をスゲー思い出したんですよ。でも、本作はコメディ感ゼロなのに、調子に乗ったクズが「即決裁判」と称して、収容所の脱走兵たちを裁判にかけずに殺害していく様子や、街で無法の限りを尽くす様子を延々と見せられるから、よりキツかったなぁと。僕的には、穴に入れた脱走兵たちを対空砲や機関銃で射殺するシーンと、縄でつながれた囚人たちを面白半分に射殺する場面(あの将校の威を借る女がまた憎い!)、最初はまだマトモに見えた部下のフライターク(ミラン・ペシェル)が終盤はすっかりクズ化してたあたりがヘビーでしたねぇ…。ただ、パンフによると、囚人を溺死させたり、八つ裂きにしたりと、実際の「即決裁判」はさらに残虐だったというのだからドン引きしたし、「そういうのはキッチリ再現してほしかったナー」なんて思ったりもしちゃったアンビバレントなアタシ (ノ∀`) ダメネ
このシーンは醜悪のひと言。自殺した囚人の気持ち、わかるわー ('A`) ワカルー
鑑賞中の僕はこの徳川光成のようでしたよ…(「バキ道」より)。
一応、オチを書いておくと、権限を掌握した収容所が連合軍に爆撃された後、ヘロルトは「ヘロルト即決裁判所」として市民を蹂躙しまくっていたら憲兵隊に逮捕されるも、戦中のゴタゴタということで…なんと無罪放免!Σ(゚д゚;) マジカ! その後、最前線に送られそうになって脱走すると「連合軍に捕まって、21歳で処刑された」的なテロップが出て、現代のドイツで暴れ回るヘロルトたちとともにエンドクレジットが流れて、映画は終わってましたよ(ここも「帰ってきたヒトラー」っぽい)。ちなみに、実際のヘロルトはギロチンで処刑されたそうです (゚⊿゚) ヘー
威勢の良い言葉を並べ立てて無罪になる展開はビックリしました。
その他、「僕的には『小さなバイキング』の方が好きカナー (・ε・) ビッケ」なんて意見は胸の中にそっと秘めておくとして(って、書いてますがー)。これまたパンフによると、演技した後に役者さんが泣き崩れたり、監督が落ち込んだりと、こんなクズどもの話を撮るのはかなり大変だったようで、よく頑張ったなぁと。残虐描写も意外としっかりしてたし(連合軍の爆撃で警備隊長シュッテが爆散するシーンは笑った)、「あの『RED レッド』の監督がここまで厭な映画を撮るとは!(°д°;) ヒィ!」と、スゲー感心いたしました。ただ、「君は山か」さんのnoteの記事によると、なんと「世界の多くでは本作品は白黒上映がされていた」そうで。ハッキリ言って、僕にはキツすぎて「二度と観たくない」タイプの作品だっただけに、できればモノクロ版を上映してほしかったなぁ…なんて文章を書いて、この感想を終えたいと思います。
ちょっと連想したヒトラー映画。僕の感想はこんな感じ。
劇場で観たロベルト・シュベンケ監督作。僕の感想はこんな感じ。
レンタルで観たロベルト・シュヴェンケ監督作。僕の感想はこんな感じ。
なんとなく似たタイトルなので貼ってみました。未見でございます。
本作でハンゼン所長を演じたワルデマー・コブス、こちらではハルバル父さん役なのです ( ゚д゚) ダカラナンダヨ
原題:Der Hauptmann
2017/ドイツ、フランス、ポーランド 上映時間119分
監督・脚本:ロベルト・シュベンケ
製作:フリーダー・シュライヒ、イレーネ・フォン・アルベルティ
製作総指揮:フィリップ・リー、マーカス・バーメットラー、マルセル・グリーブ、カイ・ニエッセン、ダニエル・ヘッツァー
撮影:フロリアン・バルハウス
美術:ハラルト・トゥルツァー
衣装:マグダレナ・ルトキウィッツ
編集:ミハウ・チャルネツキ
音楽:マルティン・トートゥシャロウ
出演:マックス・フーバッヒャー、ミラン・ペシェル、フレデリック・ラウ、ベルント・ヘルシャー、ワルデマー・コブス、アレクサンダー・フェーリング、ブリッタ・ハンメルシュタイン、サッシャ・アレクサンダー・ゲアサク、ザムエル・フィンツィ、ボルフラム・コッホ
パンフレット:★★★(800円/本国版プレスの引用記事と大場正明さんのレビューが良かった!)
(あらすじ)
1945年4月。敗色濃厚なドイツでは、兵士の軍規違反が続発していた。命からがら部隊を脱走したヘロルト(マックス・フーバッヒャー)は、偶然拾った軍服を身にまとって大尉に成りすまし、道中出会った兵士たちを言葉巧みに騙して服従させていく。権力の味を知ったヘロルトは傲慢な振る舞いをエスカレートさせ、ついには大量殺戮へと暴走しはじめるが……。(以上、映画.comより)
予告編はこんな感じ↓
80点
※本作は「カミヤマ 春の“マン”祭り」対象作品です。
タイトルに「マン」が付かないのに、なぜ本作が「カミヤマ 春の“マン”祭り」対象作品になっているのかというと、ドイツ語の原題が「Der Hauptmann」だからーーなんてことはどうでも良いとして(苦笑)。何かの作品を観に行った時に劇場で予告編を観たら、面白そうながらも実に厭なムードがムンムン匂ってきたので、スルーするつもりだったんですけれども。「アトロク」リスナーの「はたらくほうのももさん」がオススメしていたので、ちくしょう、スゲー気になってしまってね…。2月8日の公開から2ヵ月以上経った本日、アップリンク渋谷にて会員価格(1300円)で鑑賞してきました。「予想以上に厭な映画!(°д°;) ヒィ!」と思ったり。
3番スクリーン、観客は6人ぐらいでしたかね。
お話自体は「敗戦間近の1945年4月、ドイツの脱走兵ヘロルトが将校の軍服をゲットすると、ハッタリをかまして大尉になりすまし、権力を濫用する」と、まったく予告編通りなんですが…。「へロルトが勝手に暴走した」のではなく、“そのウソに薄々気付きながらも己の利益のために目をつむった周囲の人間たち”も彼のモンスター化に一役買っていたから、なるほどなぁと。要は「権力を握った個人の暴走」だけでなく「歪んだ権力構造が作られる過程」もキッチリ描いていて、現代にも通じるテーマだったというか。例えば、最近話題になった起業家・塚本廉さんの経歴詐称問題とか、彼自身が残念なだけでなく、正直、薄々気付いていた人もいたんじゃないか(でも自分の利益のために目をつむっていたんじゃないか)、なんて思ったりしてね。あと、そりゃあ現政権の歪みとか、自分が働いていた“マッチョな職場特有の嫌な空気”とかも重ねちゃったりしましたよ。
マックス・フーバッヒャー演じる脱走兵へロルトが口八丁手八丁で成り上がるのです。
同じく脱走兵のキピンスキー(フレデリック・ラウ)はすぐ気付くも、利害が一致しているので見逃すというね(のちに射殺)。
警備隊長シュッテ(ベルント・ヘルシャー)は胡散臭さを感じつつも、脱走兵を処分するためにへロルトを利用してましたよ(のちに爆死)。
パンフで大場正明さんが書かれていて、「我が意を得たり!Σ(°д° ) クワッ!」と思ったんですけど、「おかしな人があれよあれよとドイツで権力者になっていく」ということで、近作の「帰ってきたヒトラー」をスゲー思い出したんですよ。でも、本作はコメディ感ゼロなのに、調子に乗ったクズが「即決裁判」と称して、収容所の脱走兵たちを裁判にかけずに殺害していく様子や、街で無法の限りを尽くす様子を延々と見せられるから、よりキツかったなぁと。僕的には、穴に入れた脱走兵たちを対空砲や機関銃で射殺するシーンと、縄でつながれた囚人たちを面白半分に射殺する場面(あの将校の威を借る女がまた憎い!)、最初はまだマトモに見えた部下のフライターク(ミラン・ペシェル)が終盤はすっかりクズ化してたあたりがヘビーでしたねぇ…。ただ、パンフによると、囚人を溺死させたり、八つ裂きにしたりと、実際の「即決裁判」はさらに残虐だったというのだからドン引きしたし、「そういうのはキッチリ再現してほしかったナー」なんて思ったりもしちゃったアンビバレントなアタシ (ノ∀`) ダメネ
このシーンは醜悪のひと言。自殺した囚人の気持ち、わかるわー ('A`) ワカルー
鑑賞中の僕はこの徳川光成のようでしたよ…(「バキ道」より)。
一応、オチを書いておくと、権限を掌握した収容所が連合軍に爆撃された後、ヘロルトは「ヘロルト即決裁判所」として市民を蹂躙しまくっていたら憲兵隊に逮捕されるも、戦中のゴタゴタということで…なんと無罪放免!Σ(゚д゚;) マジカ! その後、最前線に送られそうになって脱走すると「連合軍に捕まって、21歳で処刑された」的なテロップが出て、現代のドイツで暴れ回るヘロルトたちとともにエンドクレジットが流れて、映画は終わってましたよ(ここも「帰ってきたヒトラー」っぽい)。ちなみに、実際のヘロルトはギロチンで処刑されたそうです (゚⊿゚) ヘー
威勢の良い言葉を並べ立てて無罪になる展開はビックリしました。
その他、「僕的には『小さなバイキング』の方が好きカナー (・ε・) ビッケ」なんて意見は胸の中にそっと秘めておくとして(って、書いてますがー)。これまたパンフによると、演技した後に役者さんが泣き崩れたり、監督が落ち込んだりと、こんなクズどもの話を撮るのはかなり大変だったようで、よく頑張ったなぁと。残虐描写も意外としっかりしてたし(連合軍の爆撃で警備隊長シュッテが爆散するシーンは笑った)、「あの『RED レッド』の監督がここまで厭な映画を撮るとは!(°д°;) ヒィ!」と、スゲー感心いたしました。ただ、「君は山か」さんのnoteの記事によると、なんと「世界の多くでは本作品は白黒上映がされていた」そうで。ハッキリ言って、僕にはキツすぎて「二度と観たくない」タイプの作品だっただけに、できればモノクロ版を上映してほしかったなぁ…なんて文章を書いて、この感想を終えたいと思います。
ちょっと連想したヒトラー映画。僕の感想はこんな感じ。
劇場で観たロベルト・シュベンケ監督作。僕の感想はこんな感じ。
レンタルで観たロベルト・シュヴェンケ監督作。僕の感想はこんな感じ。
なんとなく似たタイトルなので貼ってみました。未見でございます。
本作でハンゼン所長を演じたワルデマー・コブス、こちらではハルバル父さん役なのです ( ゚д゚) ダカラナンダヨ