運び屋(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

運び屋(ネタバレ)

運び屋



原題:The Mule
2018/アメリカ 上映時間116分
監督・製作:クリント・イーストウッド
製作:ティム・ムーア、クリスティーナ・リベラ、ジェシカ・マイヤー、ダン・フリードキン、ブラッドリー・トーマス
製作総指揮:アーロン・L・ギルバート
原案:サム・ドルニック
脚本:ニック・シェンク
撮影:イブ・ベランジェ
美術:ケビン・イシオカ
衣装:デボラ・ホッパー
編集:ジョエル・コックス
音楽:アルトゥロ・サンドバル
出演:クリント・イーストウッド、ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン、マイケル・ペーニャ、ダイアン・ウィースト、アンディ・ガルシア、イグナシオ・セリッチオ、アリソン・イーストウッド、タイッサ・ファーミガ、ユージン・コルデロ、ローレン・ディーン、グラント・ロバーツ、ピート・バリス、ロバート・ラサード、ソウル・ウエソ、リー・コック、ノエル・G、クリフトン・コリンズ・Jr.、ダニエル・モンカダ、ポール・リンカーン・アラヨ
パンフレット:★★★★★(820円/解説記事が超充実&映画の原案になった記事が掲載されていて素晴らしい! 松竹事業部の森岡裕子さん、良い仕事!)
(あらすじ)
家族をないがしろに仕事一筋で生きてきたアール・ストーンだったが、いまは金もなく、孤独な90歳の老人になっていた。商売に失敗して自宅も差し押さえられて途方に暮れていたとき、車の運転さえすればいいという仕事を持ちかけられたアールは、簡単な仕事だと思って依頼を引き受けたが、実はその仕事は、メキシコの麻薬カルテルの「運び屋」だった。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




88点


※本作については、松竹事業部による非常に良く出来たパンフを読んでから、宇多丸師匠の的確かつ愛情溢れる時評をチェックするのがオススメでございます。
※今回の記事は、「悪の法則」のネタバレに触れているので気をつけて!


ああん、本当は3月15日にアップする予定の記事だったのに、すっかり4月下旬になった本日、適当にアップしておきますね。「クリント・イーストウッド監督の最新作」となれば、それだけでもそれなりに観る気ゲージが上がるワケですけど、あの名作「グラン・トリノ」以来の監督主演作と聞けばさらに上昇するし、「メキシコ麻薬カルテルが絡んだ話」となれば、ゲージは一気に満タンですよ(微笑)。で、ちょうど愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の課題作品になったということで、3月上旬の金曜日、上野で「コードギアス 復活のルルーシュ」を鑑賞してから、ユナイテッド・シネマとしまえんに移動して観てきました。「えっ、こういう映画なの!? Σ(゚д゚;)」とビックリいたしました。


9番スクリーン、8割ぐらいは埋まってた気がします。



ハッキリ言って、僕的には本作の特報が超ストライクでしてね。かつてはマッチョだったイーストウッドがすっかりヨボヨボの老人状態であり(「老い」って口周辺に出ますよね)、家族のために人生を犠牲にして働いてきた男が、怪しい仕事を請け負ったことでメキシコ麻薬カルテルと絡んでしまって、自分だけでなく家族にもハードな災難が降りかかりそうなムードがムンムン漂っているという恐ろしさ。間違いなく故・山田康雄さんを意識した声音の「人は永遠には走れない」というナレーションも渋すぎて100点だし、観る前はかなり恐怖を感じながらもワクワクが止められなかったのです。


この弱々しいイーストウッドを観て! たぶん麻薬カルテルに脅されたんでしょうな… (´・ω・`) カワイソス


鑑賞前の僕の気持ちを代弁する加納秀明を貼っておきますね(「バキ道」より)。



ところが! 実際に観てみれば、確かに犯罪を扱っているものの、基本的にはコメディ要素が入ったホッコリ家族ドラマだったから、「えっ、こういう映画なの!? Σ(゚д゚;)」と。イーストウッド演じるアールはかつては園芸家として成功を収めていた&朝鮮戦争帰りで胆力がある→信じられないほど無神経でマイペースであり、大量の麻薬を運んでいるのに好き勝手に行動するんですよ。でも、ちょっとしたトラブルが起きたり、ギャングたちに脅されたりしても、適当な会話で結構スムースに切り抜けていって、凶悪なギャングたちもアールと接するうちに「このじいさんは仕方ないな (´∀`=) ンモウ!」とすっかり好きになっちゃったりするから、メキシコ麻薬カルテル描写が超恐ろしかった「悪の法則」のように、最愛の人が酷い目に遭うなんてこともナッシング (o^-')b グー 終盤、アールが「運び屋」の仕事を放り出して、末期ガンで余命幾ばくもない妻の側にいることを選んだ時は「妻への愛を選んで殺されるのね… (ノω・、) グスン」なんてフライング涙を流していたのに、怒り心頭だったギャングたちが直接会って話した途端、「奥さんが病気で亡くなったなら仕方ないね (´・ω・)(・ω・`) ネー」とほだされるから、スゲー笑っちゃいましたね。


「メキシコ 地獄の抗争」のように、舌と両手をサクッと切り落とす的な残酷描写もゼロでしたな(人は死にますが)。
チクリ屋の運命


まぁ、本作の主人公アールは、予告編を観て想像していた以上のクズでしてね(「仕事を優先して娘の結婚式をすっぽかす」とか、正気かと)。とは言え、演じるイーストウッドがとても魅力的で、僕も劇中のギャングたちのように「このじいさんは仕方ないな (´∀`=) ンモウ!」と許せちゃったし、何よりも「運び屋の仕事を飄々とこなして大金を稼ぎながらも“家族の大切さ”にやっと気付いて、仕事よりも奥さんを優先する」というストーリーが、ついつい家庭よりも仕事やらブログやらを優先しがちなダメ人間の自分を重ねるところもあって。ちょっと感情移入しながら鑑賞した次第。一応、オチを雑に書いておくと、奥さんを看取ってから運び屋の仕事を再開してみれば、ずっと彼を探していたDEA捜査官(ブラッドリー・クーパー)に逮捕されまして。裁判ではしっかり罪を認めて、かつて本業で扱っていた百合を刑務所で栽培する様子が映って映画は終わってたんですが…。どこか達観した雰囲気のアールが園芸に精を出す姿を観ているとね、なんか…刑務所で暮らすのもいいなぁって思えてきた…って、あぶなーい!Σ(゚д゚;) ダメゼッタイ!


左の人がアールのモデルとなったレオ・シャープ。2016年に亡くなられたそうです。



まぁ、正直なところ、「こんなに優しいギャングたちがいるのか?」とは思ったけど、それはそれとして。僕的には「人間、取り返しがつかないことはあるけど、取り返しがつくことだってあるかもしれない」ということを考えさせられたというか、「グラン・トリノ」とはまた違った「人生の終わらせ方」の映画だと思ったり。何はともあれ、実際に家族をないがしろにしてきただろうイーストウッドが娘役を実の娘(アリソン・イーストウッド)に演じさせたのはスゴいし、何よりも88歳でこんな面白い作品を撮るなんて「お見事!m9`Д´) ビシッ」としか言いようがなくて、とりあえず88点という評価でございます。イーストウッド監督、まだまだ元気に映画を撮り続けてほしいですな。おしまい。




クリント・イーストウッド主演&監督作。素晴らしい映画ですよね… (ノω・、) グスン



クリント・イーストウッド監督の前作。僕の感想はこんな感じ



クリント・イーストウッドが似たような役を演じたという作品。未見だったりします (´∀`;) エヘヘ



仁義なきメキシコ麻薬カルテルムービー。僕の感想はこんな感じ



メキシコ麻薬カルテルの抗争を描いた地獄ムービー。僕の感想はこんな感じ