志乃ちゃんは自分の名前が言えない(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

志乃ちゃんは自分の名前が言えない(ネタバレ)

志乃ちゃんは自分の名前が言えない



2017/日本 上映時間110分
監督:湯浅弘章
原作:押見修造
脚本:足立紳
製作:安井邦好、崔相基、二宮清隆、鷲見貴彦
プロデューサー:田坂公章、伊達毅
音楽プロデューサー:緑川徹
ラインプロデューサー:小橋秀之
撮影:今村圭佑
照明:平山達弥
録音:池田雅樹
装飾:前屋敷恵介
衣装:松本恵
ヘアメイク:橋本申二
音楽:まつきあゆむ
助監督:松浦武志
制作担当:村上麻里子
吃音監修:富里周太
出演:南沙良、蒔田彩珠、萩原利久、小柳まいか、池田朱那、柿本朱里、中田美優、蒼波純、渡辺哲、山田キヌヲ、奥貫薫
パンフレット:なし
(あらすじ)
上手く言葉を話せないために周囲となじめずにいた高校1年生の大島志乃は、同級生の岡崎加代と校舎裏で出会ったことをきっかけに、彼女と一緒に過ごすように。コンプレックスから周囲と距離を置き卑屈になっていた志乃だが、加代にバンドを組もうと誘われて少しずつ変わっていく。やがて、志乃をからかった同級生の男子・菊地が強引にバンドに加入することになり……。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




93点


※今回の記事は、恐ろしく面倒くさいので、ヒナタカさんの記事を読むと良いです。

7月14日に公開されたという本作、ハッキリ言って、「7月の観たい映画の覚え書き」ではタイトルすら挙げてなかったように、何の興味もなかったんですけれども。① 映画関係の方から前売り券をもらった ② 三代目タマフルミステリーメンのユーフォニア・ノビリッシマさんから熱くオススメされた ③ ムービーウォッチメンのリスナー枠に選ばれた(2回も!)という3つの理由により、今週火曜日、「ウインド・リバー」を観てから、新宿武蔵野館にて、劇場で販売されていたのぞみ園のクッキー(250円)を食べつつ鑑賞いたしました(その後、恵比寿で「セラヴィ!」を観た)。「見事な思春期映画!ヽ(TДT)ノ ウワァァァン!」と感動しましたよ…。もうね、鑑賞後にパンフ代わりの「オフィシャルブック」原作漫画デジタル盤のサントラを衝動買いしちゃったし、できれば多くの人に観てほしいと、こんなツイートをしてしまったほどだったのです。


もろもろの画像をまとめたgifを貼っておきますね。劇場は8割ぐらい埋まってましたよ。



お話をザッと書くと、高校1年生の志乃は吃音症でして(でも、原作者の意向で劇中では明言はされていない)。性格が内気なため、なかなか友だちができずに「1人で昼食を食べてます (´・ω・`し ションボリ」状態だったんですが、ひょんなことから同じクラスの加代と友だちになりまして。加代は音痴だったため、つい彼女の歌声を志乃が笑ってしまい、険悪なムードになったりしたものの、仲直りすると「アタシがギターを弾くから、志乃が歌って!m9`Д´し ビシッ」と文化祭でのデビューを目指して「しのかよ」を結成! 夏休みの間、あまり人がいない場所での路上ライブを決行するなど、着実に経験を積み重ねていったものの、初日の挨拶の時に志乃の吃音をからかったクラスメイトの菊池に見つかってしまうのです。


文化祭に向けて頑張っていた2人ですが…。


菊池に見つかったことで、事態が急変するのでした。



この菊池、実は中学時代は「空気が読めないこと」でいじめられていて、今のクラスでもアホなことをしては浮いてしまい、校舎裏でゲロを吐くほど精神的に追い詰められてましてね。そんな彼に「仲間に入れてYO!ヘ(゚∀゚*)ノ オネガイ!」と頼まれた加代は、つい仲間に入れて仲良くなってしまうも、加代との2人の世界を壊されて孤立感を抱いた志乃は「こんなに苦しいのなら愛などいらぬ!ヽ川TДT)ノ ドドオオッ!」と、加代と距離を置くようになってしまって。結局、加代と菊池が気を遣いまくるも志乃は心を閉ざす一方という状態のまま文化祭当日を迎えてみれば、なんと加代は1人で参加→自らの音痴を省みずにオリジナル楽曲「魔法」を熱唱!ヽ川`Д´)ノ カエリタイ!! ヤレヤレ顔の観客もいる中、その熱い(熱い)歌唱にハートを撃ち抜かれた志乃は若干どもりながらも「私をバカにしているのは私だった!ヽ川TДT)ノウワァァァン!」己の想いを衆人環視の中で激白しましてね…(近作では「猫は抱くもの」の主人公もこういうタイプでしたな)。最後は、吃音が治ったワケではないけど、自分を恥じずにクラスメイトにお礼を言う志乃が映って、映画は終わってたような気がします、たぶん。


クライマックスの激白は、激痛ながらも胸を打ちまして。


僕はすっかり「花山薫に褒められた柴千春を見ている仲間」のようでしたよ… ( iДi) イイシーンダナー
柴千春の仲間


いや〜、予想以上に良かったというか。45歳にもなって「女子高生が主役の青春映画」にここまでストレートに感動するとは思わなかったです。まず、主演の2人が素晴らしい。南沙良さんは話す時のテンパり具合がリアルな上に、泣く時の「鼻水をいとわない姿勢」も最高だったし、蒔田彩珠さんも中学時代のクラスメイトに絡まれる時の微妙な空気や歌う時の絶妙な音痴振りが見事だったし、褒めるところだらけでしたよ。そんな2人を“ブサイクに見える表情”も含めて、観客に等身大で見せるリアルな雰囲気にグッときたし、単なるお調子者に見えた菊池にも彼なりの事情があったことを描いたのも良かったなぁと。映画を観た後、「オフィシャルブック」原作漫画を読んでみたら、原作を映像化する際に上手く改変した部分が多くて(例えば漫画のラストには「母親になった志乃」が出てくるんですが、それを実写で見せたら微妙だったと思う)、そういうところにも感心いたしました。


この2人の仲良し描写は永遠に見ていられると思ったり (´∀`=) ウフフ


菊池を見て、ちょっと思い出した「コージ苑」のコマを貼っておきますね。


ちなみに、このシーンはジェーン・スーさんの「おちんぽまんじゅう」を思い出してホッコリした…というどうでも良い文章(原作漫画より)。



で、何よりも「思春期を“面倒くさいもの”として描いている」ところがスゲー良かったんですよね。吃音を扱った映画ではアカデミー賞を受賞した「英国王のスピーチ」が有名ですが、僕的には失声症を扱ったアニメ「心が叫びたがってるんだ。」を連想しまして。あの作品も「失声症の大変さ」ではなく、「思春期の少年少女特有のままならなさ」を描いてたなぁと。主人公たちと年齢が近い人が本作を観たら、煮え切らない志乃に対して結構イラ立つかもしれませんが(汗)、僕的には「そう言えば“昔の自分”はこういう面倒くさい感情を抱いてた!Σ(゚д゚;)」記憶を掘り返されまくったというか。

すっかり忘れてたけど、自分が大好きな友だちが他の人と仲良くすることに悶々としたりとか、素直になれずに友人と疎遠になったこととか、僕にもありましたよ。中学一年生の二学期という中途半端な時期に転校して、不良どもにいじめられて死にたい毎日だったけど、1人でファンタジー小説(確か「グイン・サーガ」)を読んでたら上原くん(仮名)が話しかけてくれて、テーブルトークRPGを教えてくれて。彼の他の友だちに負けまいと、ファンタジー系の知識を勉強しまくって、一時は親友と思えるほどに仲が良かったのに、中三の時にオリジナル種族にダンピールを入れるかどうかで揉めて疎遠になった…なんて、己の面倒くささを思い出しながら観たりして。彼のおかげで救われたのにね、本当に後悔することしきりなんですが、しかし。クライマックス、志乃が体育館で“面倒くささの最高峰のような激白”をするシーンを観て、「そもそも思春期とは面倒くさいものであり、少年少女には面倒くさく生きる権利があるんだよな」なんてことを思ったりした次第。


ここまで読んだ方の気持ちを代弁する素敵な曲を貼っておきますね↓




その他、「『加代が1人でカラオケボックスに行く(音痴を克服するため?)』とか『路上ライブシーンを入れた』とか『菊池のバックボーン』などの改変は最高だけど、加代が初めて家に誘うシーンは少し唐突ではないか」とか「2人の路上ライブシーンは100点!m9`Д´) ビシッ」とか「2人が乗らないバスは『ゴーストワールド』オマージュ!?」とか「そりゃあ同情するけど、でも、やっぱり菊池は邪魔だよな…という台無しな文章」とかとか思うところはあるんですが、長くなるので割愛! 正直なところ、ちくしょう、残念ながら僕は思春期をすぎて45歳になった今でも相当に面倒くさい男でして。「何者」の二階堂ふみさんに「アンタ、自分のこと大好きだもんね!川`∀´) チンカスヤロウ!」と罵られそうなぐらいに自分LOVEなくせに、とは言え、未だに自分がどうしようもなくクソな人間だと卑下することもやめられなくて、ううむ、死にたくなる日々ですけれども。高校生の志乃ちゃんが頑張ってるんだから、アタシ、もう一度頑張ってみる…って、なんだそりゃ ( ゚д゚)、ペッ


ここまで読んだ方の気持ちを代弁するジェイソン・ステイサムを貼っておきますね(「ブリッツ」より)。
三角絞めでつかまえて-なんだそりゃ


おしまい。




押見修造先生による原作コミック。素晴らしかったので、ぜひ読むべし!m9`Д´) ビシッ



パンフ代わりのオフィシャルブック。映画が好きな人はマストバイ!m9`Д´) ビシッ



まつきあゆむさんによるサントラ。デジタル盤もあります。歌の数々も収録されているので、買うべし!m9`Д´) ビシッ



なんとなく思い出したアニメ映画。僕の感想はこんな感じ



吃音の主人公を描いた映画。僕の感想はこんな感じ