韓国の16歳未満24時~6時までオンラインゲームにアクセスできないのはGood♪
心より愛と感謝を込めて
18歳未満の子どもがゲームで遊ぶ時間を「平日60分」までとする香川県の「ゲーム条例」案。早ければ4月にも施行される。他の自治体にも広がりそうだが、条例で制限できるのか。
香川県の条例案は、スマホやゲーム依存の問題を議論するきっかけをつくったという点で評価できます。一方的な時間制限には効果に疑問を感じますが、この問題を家庭任せにしないためにも、条例は必要だと思います。国としても取り組むべき課題です。
厚生労働省による2017年度の調査では、ネット依存の疑いがある中高生は全国で約93万人と推計されました。ネットから隔離して、入院治療が必要な子もいます。ゲームなどにはまると生活が乱れ学業成績も急落します。
先進国の中で、日本はゲーム依存に対する危機感が低いと思います。数年前までは、診察できる機関は全国で数カ所程度。今は40カ所ほどになりましたが、診察まで数カ月待ちというところもあります。一方で、他国は取り組みが進んでいます。韓国は、小・中・高校生に対して調査し、必要に応じて治療をしています。16歳未満の少年が午前0時~翌朝6時まではオンラインゲームにアクセスできない制度も作りました。
香川県の条例案は、家庭や学校、医療機関、通信やゲーム業界などが広く依存症の予防に取り組むよう求めています。県がゲーム以外の活動や人との交流を促す場を確保するなど、悩む親の助けになる項目もあります。ゲームに依存する子は、家庭や学校などで孤立していることが多いので、それを防ぐ取り組みや、課金制限などは必要です。時間制限だけが注目され、批判もされましたが、自治体が具体的な対策を示した点でモデルになり得るでしょう。
時間については、管理や締め付けではなく、子ども自身が考えて適切な行動ができる管理能力を養えるように導くことが大切。今まで許されていたのに、急に1時間だけと言われたら、反発するのは当たり前です。子どもが条例の運用に参画してルールを決めていくのもいいでしょう。
米国では、ある家庭がスマホを子に与える際に作った18の約束が話題になりました。「所有権は親にある」「約束違反をすれば罰として利用停止」などを互いに納得の上でルール化しています。
1週間で充電できる回数を決めて、子どもがゲームのペース配分をする方法もいいと思います。授業などに支障をきたさなければ、スマホなどを持ち込めるという中学校もあります。子どもが考え、適切に行動できように、スマホやゲームを利用するのです。
依存状態の子が立ち直るために必要なのは、自立した生活力や人とのコミュニケーションです。依存状態の若者でもこれらを回復する中で立ち直った例もあります。家庭や実生活で仲間とさまざまな活動をし、充実感を得られれば、スマホやゲームへの依存は減っていきます。(聞き手・後藤太輔)
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おぎなおき 1947年生まれ。法政大学名誉教授。「おしえて!尾木ママ 最新SNSの心得」全3巻など著書多数。
■押しつけでは納得しない 高橋名人(ゲーム界のレジェンド)
「ゲームは1日1時間」
これは、ファミコン全盛の1985年、ゲームメーカーの社員で名人だった私が各地で開いたゲーム大会で子どもたちに呼びかけていた標語です。長くゲームを売っていくには、親が取り上げないように健全に遊んでもらおうと考えたからでした。お母さんたちからは喜ばれましたね。
香川県が条例で1日1時間に規制するそうですが、上から押しつけても意味がありません。どんなに言っても、やりたい人はやります。自分で時間を区切って遊ぶように仕向ける方が大事です。
そもそも大人たちは、忙しいときに子どもにスマホを渡して見せておくでしょう。一度見せてしまったものを取り上げるのは難しいと思います。しかも、大人は家でも電車でもスマホを見ています。「子は親の鏡」なんです。条例で決めても、子どもたちは納得しなければ守りません。
実際には、親が子どもが触れるゲームを選ぶしかないでしょう。たとえば、私が勤めていたハドソンの「桃太郎電鉄」。鉄道で全国をめぐるすごろくゲームですが、今の親世代はこれで地名を覚えた人もいるんじゃないでしょうか。こんな「役に立つゲーム」もあると思うのです。
今のゲームは、種類によりますが、かつてのファミコンの時代に比べてクリアするまでの時間が長くなりました。技術の進化でゲーム機の性能が上がり、ソフトの記録メディアの容量が大幅に増え、内容が盛りだくさんになってきたからです。RPG「ドラゴンクエスト」のマップはどんどん広くなり、「ファイナルファンタジー」はまるで映画のようです。作る側も、長く遊んでもらおうと知恵を絞っているわけです。
ゲームとの向き合い方は、「遊びの一つ」と割り切ることです。かくれんぼや鬼ごっこ、サッカー、トランプといった遊びと同じだと考えるのです。カルタで全国大会に出たら、ほめるのと同じように、ゲーム大会でチャンピオンになったら、やはり「すごい」のです。長じてeスポーツのプロゲーマーになれるかも知れませんし。
子どもたちは自分が何に向いているか分かりません。様々な遊びを通じて、足が速いとか、物覚えがいいとか、自分が得意なこと、やりたいことを見つけるはずです。
35年前に呼びかけた「ゲームは1日1時間」には、続きがあります。「外で遊ぼう元気良く。僕らの仕事はもちろん勉強。成績上がればゲームも楽しい。僕らは未来の社会人」。今は子どもたちにとっても情報過多で、環境は変わりましたが、遊びが大事なことには変わりありません。ゲームに限らず、子どもたちがどう遊んだらいいのかを考えるべきではないでしょうか。(聞き手・諏訪和仁)
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たかはしめいじん 1959年生まれ。ファミコン全盛期に「16連射」で名人として有名に。著書に「高橋名人のゲーム35年史」など。
本日 朝日新聞 朝刊 より