食事は口から摂りたいもの♪♪♪

 

 心より愛と感謝を込めて

 

在宅栄養専門管理栄養士・安田和代さん

 今回は、地域のうどん屋さんと和菓子屋さんの協力を得て、食支援として関わったケースを紹介します。

 まず、全国チェーンの讃岐釜揚げうどん「丸亀製麺」と一緒に関わった悪性リンパ腫の女性Kさん(享年60)のケース。2017年8月9日、初めてKさん宅に訪問に行きました。「今、何食べたいですか?」と聞くと、「何も食べたくない」。既に末期で、食欲がない状況でした。でも、しばらくすると、ぼそっと言いました。「丸亀うどんなら食べたい。温かいうどんが好きなの」

 

 私は、Kさんのところの訪問看護師に、ご自宅での「うどんパーティー」を提案、快諾してもらいました。すぐに、クリニック近くの丸亀製麺の店舗に行き、麺と汁を購入できないか尋ねました。しかし「テイクアウトはできません」とのことでした。諦めきれず、丸亀製麺の店舗を運営する会社の担当部署に電話をしました。すると対応した大下浩平さんは「ぜひ協力させてください」と快諾してくださり、スタッフをKさん宅に派遣してもらえることになったのです。

 

 翌10日に日程を調整、15日をうどんパーティーの日に決めました。ところが実施日の前日、Kさんは容体が急変、亡くなられました。

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 Kさんが楽しみにされていたうどんパーティーが実施できず、残念ではありましたが、大下さんは「会社として子どもへの食育などの社会貢献は行ってきたが、こうして最期のお食事としてお手伝いもできる、ということを知りました」と話してくださいました。

 

 この件以来、丸亀製麺では、終末期医療に関わる介護施設や病院、家族からの要望でできたてのうどんを提供する取り組みを始めたそうです。

 

 もう一つは、14年に名古屋市和菓子屋「尾張菓子きた川」に協力してもらった卵巣がん末期の女性Hさん(享年47)のケース。Hさんは茶道の先生だったので、訪問看護師とご家族とで「お茶会」をしようという話になりました。看護師から「ご本人が白あんの和菓子を希望されているけど、何がいい?」と聞かれました。私は懇意にしていた、きた川さんに相談し、「白あんなら、白小豆が上級ですよ」と教えてもらいました。そこで白小豆を使った和菓子を4種、作ってもらいました。

 

 Hさんがお亡くなりになった後も、ご家族や看護師さんはその時を振り返って「とても上等なお菓子で、優雅なお茶の時間を過ごせた」と喜んでもらえたようです。

 

 この二つのケースを通じ、お店や企業のような社会資源を活用することで、食の楽しみを広げていけることがわかりました。

 (構成・佐藤陽)=全7回

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 在宅栄養専門管理栄養士・安田和代さん 1964年岐阜県生まれ。摂食嚥下(えんげ)リハビリテーション栄養専門管理栄養士などの資格も。急性期病院、保健所、療養型病院勤務を経て同県岐南町の総合在宅医療クリニック勤務。

本日 朝日新聞 beより