緑茶は時間が経つと味が変わるので、水筒には温かいほうじ茶。

 

 心より愛と感謝を込めて

 

大阪教育大付属平野中学の4人=大阪市平野区、同校提供

 水筒に入れた緑茶が、実はフタの内側にはびこりやすいカビの繁殖を抑えている――。そんな研究成果が学術誌で紹介された。研究したのは大阪市内の中学生4人。専門家から手ほどきを受け、麦茶やほうじ茶にはない緑茶の効能を解き明かした。

 

 大阪教育大付属平野中学校(大阪市平野区)の3年生、古閑愛望(こがまなみ)さん、小林貴咲(きさき)さん、村田鈴(すず)さん、湯川歩美(あゆみ)さんの4人。「水筒に見られるカビの現状」と題した論文が、有害生物対策などの専門誌「環境管理技術」の最新号に掲載された。

 

 興味を持った主題に取り組む「総合的な学習」の授業で4人は、身近な品物につくカビを調べた。まず、カビの研究で知られる大阪市立自然史博物館外来研究員の浜田信夫さんのもとに通いサンプルの採取方法や培養技術などの基礎を習った。

 

 その後実際に身近にある8品目で調べてみた。このうちスマートフォンのカバー、水筒のフタ、折りたたみ傘の柄でカビが見つかった。4人は、特にカビが多い水筒のフタに対象を絞って調べてみることに。校内に協力を呼びかけ、水筒計43本を調べた。飲み物の種類や氷の有無、洗う頻度なども合わせて聞いた。

 

 43本のうち24本のフタからカビが見つかり、フタの内側を拭き取った綿棒に付着したカビの胞子数は、1千個以下が7本、1千~1万個が7本、1万~10万個が6本、10万個以上が4本。最多は31万2千個だった。

 

 普段おもにほうじ茶を入れている水筒は胞子数が平均3681個、麦茶は同1863個。一方、水では同228個、緑茶では同112個で、緑茶の水筒のフタのカビは麦茶やほうじ茶の10分の1以下だった。

 

 調査ではほかにもデータが集まった。魔法瓶の「フタ一体」型は平均2000個、同じく「フタが外れる」型は同1136個だった。毎日洗う水筒は平均1103個だったが、週2回以下の洗浄でも1384個と、あまり差はなかった。

 

 4人は、緑茶に多い抗菌性のカテキンがカビの繁殖を抑えているのではないかと考察する。ゴムパッキンなどが多く形の複雑な型ほどカビは増えやすく、健康被害の心配はないレベルながら、フタの部分は水洗いだけではなくアルコールの付いたティッシュで拭いた方がよいと結論づけた。「以前はただ汚いという印象だったけれど、詳しく調べてみて生物としての興味深さを感じました」と、湯川さんは語った。

 

 論文執筆を手伝った浜田さんは「方法を身につけ、調べる点を明らかにしながら研究を進めたことで、専門誌に通用する内容に仕上がり、感心した」と話す。(編集委員・永井靖二)

本日 朝日新聞 朝刊 より