飄風は夜を終えず[玖]
「何をしている?」「………魚釣り友だちと……遊べなくなったから」少女はムン・チフを見る事もなくそう言ったその目はずっと水面を見つめている魚釣りというが、釣り竿等持っておらず、手にあるのは少女が持つには些か不似合いな"鞭"だだが、そばには魚籠が置いてあり、ちらりと中を見ると何匹かの魚が入っていたもしや…それで捕っているのか?、と少女の視線を辿る日の光が水面に反射してきらきらと煌めいているムン・チフの目に、時折、魚が浮上し、潜っていくのが見えたすると、そばに立つ少女から気が発せられるそれは内功であったなんと…驚いて少女を見ると、少女が手にしていた鞭が宙を舞う水面に浮かんでいた影に鞭が絡みつくと、それを一気に引き寄せたびちゃっ、びちびちっ大人の掌程の魚が勢いよく跳ね上がる「ほぉ…」この大きさの魚を、よくぞ捕えたものだ泳いでいる、しかも何処へ動くか予測出来ないものをその目で捕らえ、鞭という水面ではかなりの力を要せねば使いこなせぬものを易易と使いこなす生まれ持つ動体視力と、いち早く獲物捕らえる目の良さだが、それだけではない此処まで行き着くには相当な修練が必要だそれを、こんな名も知れぬ村の幼い少女が出来る技ではない「そなた…何処でその技を身につけた?」「何処でって、此処で 叔父さんに教わったの」少女は、地面でもがく魚を魚籠に放り投げると、砂で汚れた手を水で雪ぐ「叔父…….そなたの叔父の名前を聞いても良いか?」その言葉に少女は漸くムンチフの方へ視線を向け、目を大きく見開いた不躾な事を口にするこの村のものじゃない男しかもあまりにも威圧感のある風貌に少女は怪訝な顔をして首を傾げるだが、その男は頼む、と頭下げた為、渋々な顔をして頷いた「………トンウン」↓励みになります。ポチっと一押し宜しくお願い致します。