その頃、
船着き場に数名の余所者が降り立った

質素な色の外套を羽織ったその集団は
笠を被っているもの
外套を目深に被るもの
各々、皆一様ではあるが、顔を極力隠してはいるものの、
醸し出す雰囲気がどことなく只者ではない

彼等は、ゆっくりと辺りを見渡しながら口々に話し始めた

「長閑で良い処ですね」
「だなぁ」
「こんなところで余生を過ごしたいもんだ」
「余生って…あんた、まだそんな事言う歳でもないでしょ」
「そうだがなぁ…」
「失礼、皆様  私、一寸休みたいのですが…」
「「却下」」
「はぁ……駄目ですか
実は長旅で眠れなかったのですよ
あの船、凄い揺れるし、寝床は狭いし、
変な爺さんは煩いし、船の上は汚いし…」
「おい、少し黙ってられないのか」
「うぅ………だって、あの船が」
「黙れ」
「…」

口々に言い合っているが、常人の目や耳には
言い合いをしている様には見えず、声も微かに吐息が聞こえる程度だ
並の人間ではない事は分かる

「それにしても、こんな小さな村にも悪さをする様な輩がいるのかね?」
「一見すると穏やかだが… そういう処程、碌な状況ではない」
「成る程ね」

そんな喧騒の中で、唯一何も声を発しないふたり
その集団の先頭を歩く痩身の男がもうひとりの男へ目を向けた
大きな体躯に威厳のある風貌
特に異質な纏ったこの男に声を掛けた

「隊長、如何しますか?トンウンの処へ行かれますか?」
「………そうだな」

"隊長"と呼ばれた男は、
聞いてるか聞いていないか分からない目をして
すっと浅瀬の方へと目をやった

「……先に行っててくれ」
「はい」

皆が頭を下げると、静かに町の中へと入っていった

後にひとり残った男

赤月隊ムン・チフはゆっくりと浅瀬の方へと歩いて行く

時折、心地良い風が吹きその度にさらさらと波が揺れる音と木々の囀る音が耳に届く
そんな穏やかな音色を聞きながら、ムン・チフは件の浅瀬へと辿り着いた

其処には鞭を持ったまま、
水面の先を見つめ静かに佇む少女がいた

「何をしている?」

ムン・チフは少女に向かって問い掛けた

 

 

 

↓励みになります。

ポチっと一押し宜しくお願い致します。

にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ