冬の寒さも治まり、
春の陽射しも眩しく感じる頃、
未だチンダルレは美しさも色褪せず
華麗に咲き誇る

「相変わらず綺麗な花…」

メヒが小さく洩らした言葉に、
さりげなく抱き寄せられる温かな腕

「そうだな」

微かな相槌と、ヨンの優しさに
哀しみが少しだけ軽くなる

今日はメヒの父母の命日だった





その日は朝からどんよりとした雲が空を覆い、
空を見上げていたメヒは、はぁ…とため息をついた

「何、そんなため息ついてるの?」
「だって、今日は雨月庵にチンダルレを見に行くって約束して…」
「あぁ、ギベクと?」
「そう。でも…」
「雨降っても見れるじゃない」
「だって…」
「ふふふ、折角なら可愛く見せたい…から?」
「ちょっ…お母さん!」

焦るメヒを他所に母はからからと笑った

ギベクは幼馴染みで、小さな頃からいつも一緒だ
優しい笑顔の男の子で、いつもメヒを癒してくれる
ギベクに淡い恋心を抱いていた

「これを持っていきなさい
 雨が降っても庵で食べれるでしょ?」

そう言って母はメヒの手に握り飯を持たす

「うん!ありがとう、お母さん!」

嬉しそうに笑うメヒに母はにっこりと笑った

「メヒ~!」

外からギベクの声がした
ギベクの声にメヒはどきどきしながら、
何度も身なりを整えると母に向き直る

「行ってきます、お母さん!!」
「ふふ、気をつけるのよ」

「はーい」



それがメヒが見た母の最後の姿だった

 

 

 

 

 

 

 

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