私の住むオランダ南部最大の都市Eindhoven(アイントホーフェン)は、少し古いが2014年に「best cycling city in the Netherlands」に選ばれた実績を持つほど、自転車で快適に移動できるような環境にある。

 

アイントホーフェンを取り囲む環状道路(我々はリングと呼ぶ)の外側を一歩出ると、そこはサイクリング天国だ。

高速道路ならぬ「高速自転車道」のようなものが町と町を結ぶように整備され、自転車さえあれば簡単にアイントホーフェンの中心地からたちまち周辺の町にアクセスできるようになっている。

 

私はこれまで、そんな快適な自転車道にのって周辺の町に行った様子をこのブログでまとめてきた。

<北>

<東>

<北東~北>

 

南東

 

 

本帰国のため、オランダサイクリング記事最終回となるここでは、まだご紹介していなかった西側をクローズアップしていきたいと思う。


これは、アイントホーフェンのリングのすぐ外に広がる新興開発地域「Meerhoven(メールホーフェン)」から、オランダ国内第2の規模を誇るアイントホーフェン空港を越え、運河沿いの小さな町「Oirschot(オイルスコート)」を目指す、往復で2時間弱のスモールトリップである。

今、車のオイルコートみたいな名前だなと思ったアナタ。安心しろ、私もだ。

 

まずは最初の通過地点である世界でも珍しい立体交差点ならぬ立体自転車専用交差点・・・というかヨーロッパなので、自転車専用ラウンドアバウト交差点である「Hovenring」へと向かおう。

※ラウンドアバウト交差点・・・信号機のない環状タイプの交差点のこと。ヨーロッパではこのタイプがメジャーだ。パリの凱旋門の周りだってそうだよね。

 

よし、見えてきた!なだらかな傾斜をのぼって・・・

おお!近くで見るHovenring!!

真下には車の往来が見える!快適快適~

 

ホーベンリングは世界のユニークな自転車レーンとして、日本でも取り上げられていた。

ご興味ある方はこちらをどうぞ。

 

 

近未来の建築を見せられたところで、次の目的地である「3D printed house」へ。

こちらもまた、ずいぶんと近未来的な建築とみた。

「3dprinthouse」Instagram公式ページより

 

最近注目されている立体物をそのままコピーする「3Dプリント技術」で、なんと家まで作ってしまおうという大胆な取り組みである。

アイントホーフェン工科大学との共同プロジェクトらしく、世界初のこの試みに、世界中がにわかに注目している話題の建物である。

 

どんなでっかい印刷機(?)なんやろうか、耐久性や耐震性は一体どうなっているんだろうか、地震多くて湿気の多い日本じゃ無理じゃね?とか色々頭をよぎらんでもないが、実にユニークな取り組みではある。

普通に建てるよりも格段に速く完成するため、有事の際の仮設住宅やシェルターとしての役割も期待できるらしい。

 

公式HPによると、3D printed houseはメールホーフェンのBosrijk(ボスライク)というところにあるらしい。

ちなみに、ボスライクとgooglemapで検索しても出てこないようになっている。

まだ名前もつかない空き地を整備して建てるのだそうだ。

 

行きたいのに場所がわからないので困った私は、公式ホームページの文言を隅から隅までみていると、「スリッフェルト通り、ボスファザント通り、ボスイユ通りの隅に位置し、全体が木々に囲まれているため、風景の中の「緑の部屋」です」とあるではないか。

 

しめた。googlemapの航空写真で場所が特定できるぞ。

ここだ!

さらに拡大。

確かに緑に囲まれてた。

さてはて今はどうなっているのやら、期待を膨らませ現地へ行ってみると・・・

何もなくね??

残念!!まだ空き地を整備してる段階でしたっ!!!

あと数年以上はここにいるだろう日本の方、ぜひワタクシめに完成写真をお送りいただければ幸いです・・・

 

それにしても、今日は雲が多いが、その合間から顔を出す空はものすごく青い。

 

気を取り直してさらに進むと、

だだっ広い平原に現れたこの建物。

近くまで行ったら行きかう人々の年齢層がぐっと上がったところを見ると、老人ホームかな。

 

オランダ人は自分がボケてるボケてない、まだ一人で生活できるできないは気にせず、ある程度歳を取ったら潔く老人ホームへ入居し、持ち家は売却するのが一般的と聞いた(そして現在、買ったときよりも高値で家が売れるので彼らはウハウハだ)。

 

そしていつもはマンションには住みたがらないオランダ人なのに、老人ホームばかりはたいていマンションタイプになっているので、ここもそうなのかなと勝手に判断。

こんな凝ったテラスがあるならむしろ私が入居したいわ。

目の前にはこんな小川のせせらぎもあるし。

その向こうに見える柵付きの牧場には、

牛もいるし(いや、そこはそんなにうらやましくはないよな)

隣のこれまた広大な広場では、近所の子供たちが凧揚げしたりして遊んでいる光景が見えた。

こんな広大な空きスペースと新興住宅ばかりが立ち並ぶメールホーフェンでの目的地その3、

この地になぜかぽつんと一カ所だけ盛り上がったこの丘に登る(標高目寸約15m、それでも山のないオランダでは貴重な高い場所)。

わーい!たかーい!空が近ーい!!

せっかくなので私たちは少しの間、持ってきたお菓子などを広げてピクニックをした。

 

腹ごしらえが済んだ後、4つ目の目的地であるアイントホーフェン空港横にあるオランダ空軍の「アイントホーフェン軍用基地」に行ってみることに(これは完全に私の趣味)

実はアイントホーフェンは第二次世界大戦時、ここが創業の地であるフィリップス社で作られた爆弾や兵器をこの空港から全国に調達していたことから、昔から軍事的にも重要な拠点だったと聞いたことがある。

 

つい最近でも、コロナウイルスで他国に取り残された民を乗せて、この空港にチャーター機が降り立ったというニュースを見たことがある。

あれは確かダイヤモンドプリンセス号から救助された人じゃなかったかな。しかしこれはうろ覚えである。

 

軍用敷地内には大きく羽を広げた太陽光パネルがずらりと並んでいた。

一体どれだけの電気をまかなえるのだろうか。

フェンス越しだが、全部で3機見える。

マニアの方ならヨーロッパの戦闘機・輸送機・救難機も遠くから識別できちゃうのだろうが、私には日本の曲芸飛行部隊で有名なブルーインパルスや惜しまれながらも昨年退役したF4ぐらいしかわからない。

 

さてと、遠くからりりしい姿を拝んだところで、さらなる目的地へと向かおう。

アイントホーフェンから北西にのびる自転車道は、はっきりいって快適じゃない。

舗装道路とは思えないほど、表面はタイヤと相性の悪い細かな凹凸でできており、ガタガタと振動が全身に伝わってくる。

 

と、急に左手の森林からけたたましいエンジン音がきこえてくるではないか。

誰やねん、こんなところで暴走族やってるやつは・・・って、んん???

レース場だ!!今日は何かの大会が開かれてるらしい。

さらに目を凝らして見ていると・・・

モトクロスだ!!

さっきから聞こえる轟音の正体はこれだったのかあ~

私はロードレーサーまでしか手をつけたことがないが、きっとバイクはバイクで夢があるんだろうなあ。

 

さらに北西の町を目指してペダルを回転させること15分。

着きました!運河沿いにたたずむオイルスコートに!

 

市内中心部へ行く道すがら、素敵なお店との出会いが。

私の好きなポーランド食器ブランドの巨大ティーポットが!!

ということは・・・・

おおおおお!!

かわいいのがたくさん並んでいるではないか!!!!

なんと!!!ここもかわいいもので溢れている!!

店内にはオランダのものと思われる見たこともないブランド食器の数々と、紅茶・コーヒー関連グッズがずらり。

 

私も紅茶好きの友人に倣って、干しイチゴの入ったいい香りのするストロベリーティーを買って帰ることにした。

ここの紅茶は日本ではあまり見かけないトロピカルフルーツやハーブ系など珍しいものが多く、茶葉のブレンドセンスが光っている。

 

さて、市内中心部へときた。

この町のシンボル「Saint Peter's Basilica」だ。

立派でとてもマジェスティックな教会だったので、ぜひとも中も拝見したかったが、残念ながらこの日は中に入ることはできなかった。

 

それにしても・・・

 

 

360°どこを見渡してもかわいい町だ。

市内中心部はレトロな建物が多く、第二次世界大戦で何もかも破壊されて歴史的建造物が残らなかったアイントホーフェンとは違って、ここは田舎だから戦火を免れたのだろう。

 

その中でも私はレトロな絵が描かれた昔ながらのアイス売りの手押し車が店頭に置かれていたこちらのお店に目がとまった。

ナッツやドライフルーツが埋め込まれた素敵なチョコレートや様々なフレーバーのアイスクリーム。

豊かなホームインテリアを演出するのに必要な美しい雑貨たち。

思わず私は、見ているだけでスイートな気分に。

 

おや?

先ほどの教会みたいに、オランダではよくあるレンガブロック造りのトラディショナルな建物とは違って、こちらは異国情緒漂う不思議な外観をしている。

 

Googleによると、こちらは「Hof van Solms」という会議場らしい。

こちらもコロナ禍を意識してか、グーグルストリートビューを使えば中も見れるようになっていた。

怪しい紫色の照明が気になったが、確かにパーティー会場といった感じだった。

 

会議場から、さらに美しい木立の歩道を進んでみたら・・・

地ビールの醸造所「Brouwerij Vandeoirsprong」が見えてきた!

 

2015年にできた比較的新しい醸造所らしいが、ビールが飲めない私は、店員の目をかいくぐってトイレだけこっそり借りたのは内緒な。

 

さて、時計を確認したらそろそろ帰らなければならない時刻になっている。

最後、オイルスコートを離れる前に、この町にある一風変わった建築を2つご紹介しよう。

 

まずはこれ。

閑静な住宅街の中に突如として現れた椅子。

これ、どれぐらいのサイズ感かというと・・・

これぐらい。

いくら世界第三位の平均身長をもつオランダ人でも、このサイズはでかいやろうが。

作品名もそのまま「De Grote Stoel(The Big Chair)」。

 

お次は、実用的だが遊び心のきいたいかにもダッチデザインなこちらの橋。

 

ぐーるぐーるとトルネードしているが、なぜこんな形をしているかというと・・・

自転車が負担なく走れる角度で設計されているから。

つくづく、自転車乗りに優しい国である。

上からは、穏やかな運河が見えた。

雲の切れ間から差し込む太陽の光によって水面に映し出される光の波が、雲の動きに合わせて急速にこちらに移動してくるのがわかる。

今日は雲の動きがとても速い。

 

さてと、行きとは違って帰りはウィルヘルミナ運河沿いの快適なフィッツパッド(自転車専用道)を走って、アイントホーフェンまで帰ろうか。

 

 

 

<本日の一枚と言わず二枚>

じゃん。

とんかつと2色のスタンポット(TONKATSU met twee kleur stamppot)。

 

スタンポットとは、じゃがいもに人参やケールなどを一緒にマッシュしたオランダの冬の伝統食である。

じゃがいもを潰しただけの質素な農村料理と日本人は馬鹿にするけれど、後から紹介する彼の手にかかれば、イモい(=田舎臭い)スタンポットだってこのとおり。

 

・・・まるでおしゃれカフェで出てくるOLランチやんけ。

 

この日は忙しく、サイクリングの後は友人宅へ。

なんでもオランダ人の友人カップルが、本帰国に際するお別れ会ということで、私たち夫婦を食事会に招待してくれたのだ。

 

まさかオランダ人に日本で食べるのと変わらぬクオリティのとんかつをごちそうになるとは思わなかった。

いつ食べてもこの旦那さんが作る料理はうまい。

この日のテーマは、「日蘭フュージョン料理」ということで、スープ・メイン・デザートの3コースメニューを用意してくれた。

写真のデザートは、乳製品大国オランダらしく、乳製品が使われた国民食のデザートvla(フラー)に、抹茶の粉末を加えたちょっぴりオトナの一品。

 

食べるのに夢中になって写真を撮り忘れたが、とんかつの前には「バターナッツカボチャのスープ」が出てきて、これなんか隠し味にお味噌を使っているとのことで、実にまろやかで日本人の好む複雑な味わいに仕上がっていた。

オランダのカボチャスープらしく、時折ジンジャーのさわやかな風味とリンゴやナシを使っていると思われるフルーティーさも感じる。

お味噌がこんなにもオランダのカボチャスープと相性がいいとは知らず、びっくりした。

 

このカップルは日本が大好きなとても素敵な人たちで、もう開催されなくなって久しいが、オランダ唯一の日本語会話ミートアップを通して知り合って以来、交友関係が続いている。

 

「ねえ、日本はいつになったら私たちの入国を受け入れてくれるの?」

 

毎年、仕事やプライベートで日本を頻繁に訪れる彼らだが、一体、彼らの言うように、日本が外国人観光客を受け入れるのはいつになるのだろうか。

 

 

 

 

世界広しといえど、「トラピスト・ビール」のような特殊なものはなかなかないだろう。

 

「トラピスト・ビール」とは、トラピスト会修道院で造られるビールのことをいう。

神聖な「修道院」という意外な場所でビールが製造されているということから、この手のビールは何かと人々の話題になる。

 

そんなトラピスト・ビールの名を冠するのは、世界でもたった7銘柄だけらしい。

そのうちの6つはベルギーに製造元(の修道院)があり、残りの一つはオランダのティルブルフ郊外にある。

 

「なんだ全部自宅(オランダEindhoven)から遠いな・・・」なんて思っていたのだが、ところがどっこい!

 

google map先生に聞く所によると、一番近い修道院なら行けることが判明。

しかも自転車で(←ここ重要!)。

 

我が家は車がないので、自宅から自転車で行ける範囲にある観光地は貴重な存在だ。

しかもセミロックダウン中だから、オープンエアで公共交通機関を使わないサイクリングはうってつけである。

田舎向いていくことが多いので、密にもならないから自転車はこの上なくコロナ禍に適したアクティビティだ(もちろんstay at homeがベストではあるが)。

 

これは・・・チャンス!!!!

 

早速自転車にまたがり、ペダルを漕ぎ出した。

天気予報も今日いっぱいまでは晴れてくれるという。

お天気も味方したところで、テンションが上がり勢いに乗った私はぐんぐん南に向けてfiets pad(フィッツパッド:自転車道)をひた走った。

 

今回の目的地は、Achel beer(アヘルビール)」ブランドでおなじみの「Achelse Kluis」というベルギーにある修道院。

オランダとベルギーのちょうど国境付近にある「Achelse Kluis」だが、ありがたいことに、このエリアだけ国境線がぐいっとオランダ側に押し寄せられているため、アイントホーフェンから真南に約1時間下るだけで国境までたどり着けてしまう。

 

あれ?あんたEindhovenに住んでるんだったら、地図で左斜め上すぐにあるティルブルフの修道院の方が近いんじゃないの?と思われた方、

 

ノンノン。

 

残念ながらそこへ行くにはもっとかかります!

こちらは自転車で1時間40分ぐらい(あくまで自転車換算する私w)。

まあ、ロードバイクなら行けなくはないけどな・・・

 

雑談はそれぐらいにして・・・

まずはアイントホーフェン郊外を走る「A2」高速の高架をくぐって森林の中を走る。

今日も木漏れ日がサイコー!

 

しばらく高速沿いの道を走って・・・

 

分かれ道にでた。

google先生は右に行けとおっしゃっているので、写真で見えている道を進もう。

乗馬の標識がおもしろいね。

 

ところがここを右折したのが運の尽き。

道はやがてアスファルトから凸凹むき出しのオフロードへと切り替わり、周囲の景色もどんどん森林の中に飲み込まれていく。

 

「本当にこの道で合ってるんかいな」「引き返した方がいいかな」とか思いながらガタガタの道に車輪を取られて転倒しまいと30分ほど格闘していた矢先、向こうの方で人影がびっくりするぐらいスイーっと移動していくのが見える。

 

自転車道や!!!

そうなのだ。私はこんな道なき道を進みたかった訳ではなく、ずっとあの自転車道に乗っかりたかったのだ。

 

ところが我がgoogleめは、どう見てもそこに道はないのに道無きルートを進ませようとする。

迷いに迷って本当に帰れなくなったらどうしていたのだろうか。

こんな樹海の中で(←もはや先ほど木漏れ日サイコーとか思ってた優しい緑ではない)

 

ちなみに、みなさんの中で私と同じようにこのルートにはまってしまわないように、正しいルートを以下に記した。

アイントホーフェンから行くには3通りの方法があるが、大きくバツをつけたルートだけは悪いことは言わない。行くな。

無い道指し示された挙句、森林の中を彷徨うことになるから。

(細かく言うと、グレヴェンスク通りからアイケンラーンに右折する道なんて存在しないっちゅうねん)

 

【補足】後からわかったことなのだが、あえてバッテンの道で行くことを選択するとしたら、googleめが指し示す高速道路沿いの道(グレヴェンスク通り)ではなく、高速挟んで反対側に正しい自転車道が存在するので、そちらを通りさえすれば上記のルートでも問題は無い。そしてこの自転車道へ行くには、先ほど乗馬のマークの標識がおもしろいと言っていた地点で、googleが指し示す右の道ではなく、左の道を進めば高速を渡って反対側の正しい自転車道に乗れるはず。

 

やっとの思いで自転車道に乗ったところで、さあ再スタート!!

なんて細く長く続く一本道だろう。

木の密度も少なく、不思議な気分。

 

と思ったら今度は本格的に森林区間に突入。

その中をひたすら南へ向けてぶっ貫く自転車道をさらに走ると・・・

自然保護区「Groote Heideだ!

 

森林地帯の中に突如として現れるだだっ広い湿地帯的空間。

季節によっては、こんな美しい風景を我々に見せてくれるらしい。

 

 

https://www.instagram.com/degrooteheide/「degrooteheide」instagram公式ページより

 

オランダにはこうした自然保護区がたくさんあり、このGroote Heideもその一つだ。

Eindhovenの南には、こんな広大で雄大な自然が広がっていたなんて・・・

 

【補足】Groote Heideに到達するのに時間がかかる上、それまでの道のりが同じ景色でやや単調なため、時間があればもっと手前にある「Viewpoint Egelven(住所:Unnamed Road, Valkenswaard)」にも立ち寄ってみてもいいかも。

 

さて、ここまでくれば噂の修道院はもう目と鼻の先!

さらに15分ほど進むと・・・

おおお!!!ついに国境地帯にぶち当たった!!!!

そして写真奥に見えているのが今回の目的地であるAchelse Kluisである。

残念ながらこの日は正門は閉ざされ、教会の中に入ることはできなかった。

売店ぐらい空いてるのでは?と、裏手へ回ってみると・・・

あったあった。前方に看板が立っているのが。

 

入り口付近では、同じようにサイクリングしてきたであろう年配の男性が、つい先ほど奥さんが中で買ってきたと思われるアイスクリームを食べて涼んでいた。

よし、私も樹海の中をさまよって余計に水分が失われて喉が渇いたので、あの売店でジュースでも買おう。

中はこんな感じでずらっと、例のトラピスト修道会で作られているのだろうビールが並んでいた。

オランダやベルギーのスーパーではよく見る銘柄もあるが、中には見たこともない珍しいビールも並んでおり、ビール好きにはたまらない空間だろう。

 

ビールのほか、手作りジャムや石鹸、ポストカード、あと修道院なのでキャンドルをはじめとする宗教関連グッズなど、意外にバラエティに富んだ商品も置いてあり、思わず興味津々で眺めた。

 

ちなみに、こんなブログを書いておいてなんだが、筆者はビールをはじめアルコール類は体質的に一切飲めない。

けど、サイクリングは目的地がどこだろうと純粋に楽しい(キリッ

 

ちなみに、この修道院で製造されているビールはこれだ。

スーパーでは見た記憶がないので、少しレア度高めかも。

https://www.instagram.com/itsabrewtifulworld/ 「itsabrewtifulworld」Instagram公式ページより

 

エネルギーチャージし終わったら、今度は元来た道と別のルートで帰ろう。

次に目指すのは、もう一つの自然保護公園「Groot Malpieven」だ。

湖がある景色が見れて、先ほどとはまた違った風景が楽しめるらしい。

 

出発進行!

まずはオランダ定番の牛の光景。

再び森林地帯へと突入し、細長い自転車道を北上すること20分・・・

はい、着きましたGroot Malpieven。

湖面が反射してキラキラとまばゆく光っている。

その上空すぐのところで綿雲が優しい表情を浮かべていた。

倒れたまま放置された樹木ですら、この一帯の自然な風景の一部だ。

オランダって先進国でありながらなんて野性味溢れる国なんだろう。

 

ちなみにこの近くには、「Aqua Mundo Center Parcs De Kempervennen」というウォーターパークがあり(アスレチックや屋内スキー場、イベントフェス会場も!)、毎年夏には多くのお客さんで賑わうのだろうが、今年はどうなることやら。。。

https://www.instagram.com/kempervennen/ 「kempervennen」instagram公式ページより

 

またしばらく自転車を走らせていると、Valkenswaard(ファルケンスワールト)という町に差し掛かった。

写真で見ると分かりにくいが、広場の両側には銀行やら飲食店やらたくさんのお店が軒を連ね、一目見てこの町がそこまで田舎町ではないということがわかる。

おそらくある程度の規模感はあるのだろう。

 

ファルケンスワールトの市街地を抜けたところに、ファルケンスワールトとEindhovenを最短15分で結ぶ「Fietspad Oude Spoorbaan」が走っているので、南向いて自転車走らせるなら、この自転車道はぜひ利用したい。

 

 

そしてこの自転車道を抜ければ、もう自分が住む町Eindhovenだ。

最後の見どころは、アイントホーフェン ハイテクキャンパス。

ここは、フィリップスやシマノなど、世界的に有名な企業の研究機関が集積する特殊なエリアである。

https://www.instagram.com/hightechcampus/ 「hightechcampus」instagram公式ページより

 

そしてここはこんな感じで、部外者でも普通に敷地内に入ることができるようになっている。

あ、この建物は!

我々自転車乗りには超有名な企業、世界の「SHIMANO」である。

 

この建物の1階には一般人向けの展示コーナーがあり、子連れ等に定期的にイベントを行っているらしい。

※詳しくは「地球の歩き方、オランダ/アイントホーフェン特派員ブログ ベッカーズ 絢嘉さん」のこちらの記事を参照。

 

 

ハイテクキャンパスから自宅へと走る道中、オランダのこの季節ならではの光景がみれた。

野鳥たちの楽園。

こんな風に、別にそんな田舎に行かなくても、普通の民家近くの水のあるスペースには決まってグワグワ言いながら日向ぼっこする鳥たちがいる。

なんだか微笑ましい照れ

 

おや?

一人のご年配らしき人がベンチに腰掛けている。

オランダではよく見かける光景だ。

彼は森を見つめて、何を考えているんだろうか。

 

そんなことを考えていると、湿った空気が肌にまとわりつくのを感じた。

すぐそこまで忍び寄る雨の気配を感じた私は、昼間の太陽の勢いもすっかりなくなり、空が雲で覆われてやや肌寒い中、急ぎ家までラストスパートをかけた。

 

 

<ちょこっと情報館>

サイクリングルートには乗ってこないが、Eindhoven右斜め下あたりに「Heeze(ヘーゼ)」という田舎町がある。

この町にはヘーゼ城があり、城というよりはお屋敷の感じが否めないが、ここはとても静かで穏やかで、緑と光に満ちた美しい空間だった。

 

 

時の流れが止まったよう・・・

 

また、このあたりにも自然保護区的な場所があり、やはりアイントホーフェン以南の森林地帯はだいたいこんな感じの風景が広がっているのだろう。

 

 

これまでアイントホーフェンから東へ、西へ、北へと遠方に足を伸ばしてきたが、南は他の方角とは明らかに異なる風景が広がっていて面白かった。

 

本帰国前に、2年も住んで、もう十分知ったつもりでいた地元の良さを再発見できた気分がした。

 

 

 

「炎の画家」と呼ばれるゴッホ。

 

私が知ってる限り、彼の人生はそりゃもう規格外もいいところで、変人っぷりを表すエピソードを挙げだすと枚挙にいとまがない。

 

どの仕事も続かず転々としたり、

27歳という遅い画家デビューを飾ったり、

娼婦と恋仲になってしまった際には弟テオに説得されたり、

弟テオに依存しまくった挙句、彼に妻子ができたとき激しく嫉妬したり、

画家仲間で共同生活を送っていたゴーギャンとの交友関係の破綻がきっかけで自らの耳を切り落としたり、

精神病院に出たり入ったり、

ピストル自殺する直前の70日間、一日一作品という驚異のペースで絵を描き続けたり、

死後になって人気が出て注目され、その独特の色づかいから色覚異常だったんじゃないかとも語られたり、、、

 

そんな割とキクレイジーでキチガイじみた波乱万丈な人生を歩み続けた日本でもお馴染みのゴッホだが、意外にも彼のオランダ時代を知っている日本人は少ない。

 

「ひまわり」とか「アルルの跳ね橋」とかフランスで描いた絵のほうが有名なので仕方がないが。


そんな「炎の画家」ゆかりの地であるNuenen(ヌエネン/ニューネン)という田舎町は、筆者の住む南オランダのアイントホーフェン市に近いということで、せっかくなので、本帰国を迎える前に彼の足跡をたどってみようではないか。

調べてみるとどうやら「Van Gogh cycling route」という全長51kmのサイクリングルートが存在するらしい。

 

私は自転車に乗って早速、家の近くを流れるアイントホーフェンス運河を出発した。

なんていい天気なんだろう。

 

はじめに出迎えてくれたのは黄色のお花畑。

綺麗だなあ。。。

黄や赤の原色が、緑の中でしっかりと存在感をだしている。

 

早速、1つ目のスポット「Collse watermolen」に到着。

住所:Collseweg 47a, Nuenen

 

別の角度からも見てみよう。

 

 

 

ゴッホもこんな光に満ちた穏やかな場所だったら筆も進んだやろうなあ。。。

 

さて、ここからさらに、どこまでも広がる田園風景を横目にしてNuenenの中心目指して北上していこう。

お?

踏切を越えて少し進んだ所に、お花の直売所的な場所が。

私を見てと言わんばかりのカラフルでかわいらしい姿に思わずパシャ。

 

再びハンドルを握って漕ぎ出したかと思えば・・・

ありゃりゃ、行き止まりの標識が。

 

でもgoogle先生はこのまま進めと言っているので正直すぎて損するぐらいバカ正直者の私は進んでみると・・・

 

あ!2つ目「Van Gogh - Roosegaarde Cycle Path」が見えたっ!

住所:Eisenhowerlaan, Eindhoven

 

ここはゴッホの足跡を辿るサイクリングルートの中でも特におすすめだ。

昼間はいたって普通の道に見えるがが、日が暮れるとこんなに幻想的な光景が浮かび上がる。

https://pbs.twimg.com/media/B2bkdV7CYAAmxXl?format=jpg&name=mediumより


これは、ゴッホの「星月夜」をイメージして造られたらしい。

道に敷き詰められた蓄光できる特殊な石が、昼間の間に貯めた太陽の光で発光する仕掛けだ。

なんとしゃれててロマンチックな小道だこと。

 

2つ目にほど近い、3つ目のポイントは「De Watermolen van Opwetten」。

住所:Opwettenseweg 203, 5674 AC Nuenen

 

ここでも、一つ目のような小川のせせらぎの中で回転する水車の風景が見れる。

平和だなあ。

 

裏に回ると、建物自体は古く年季が入っており、当時の様子をそのまま今に伝えていた。

現在はレストランとして営業しているようだ(コロナ禍なので、事前予約者のみの営業だった)。

 

オランダでは道すがら、よくこんな角度のゴミ箱が見れるが、ゲーム感覚で走りながらゴミを放り込めていい。

ポイ捨ての多いヨーロッパで、むしろゴミをゴミ箱にちゃんと捨てたくさせるのが狙いか。

つくづく、理にかなった遊び心の多い国である。

 

そうこうしてるとNuenenの中心通りにさしかかってきた。

 

左側にはオランダでお馴染みのスーパー「アルバート・ハイン(AH)」が見えたかと思えば、その真反対には同じカラーで着色された家の窓枠が目に入った。

人様の家を写真におさめるのは気が引けたので、googleストリートビューから拝借

・・・そんなにAHに対抗せんでええんやで(いや、むしろビッグファンなのか)

 

街角に建てらたこの銅像もゴッホなんかな・・・?

 

さて、このサイクリングルートのメインスポットであるNuenenにある中央広場公園的なところに到着!

ここには有名な2体の銅像が立っているとのことだが、はてさてどこかな・・・あ、あった!!

 

5つ目は、「じゃがいもを食べる人々(Aardappeleters Beeld)」。

住所:Park 65, 5671 GC Nuenen

 

この作品ね。見たことがある人も多いはず。

もっと近づいてみよう。

じゃがいもだけじゃなくて、葉っぱも食べてはった・・・

昔の農村の食生活なんてもんは、こんなもんよな。

じゃがいもが主食。それも茹でただけの。

 

6つ目「Statue Vincent van Gogh」。

住所:Kloosterstraat, 5671 GA Nuenen

 

やっとご本人登場。

ぐぬぬ・・・逆光でお顔が見えませぬ・・・

とりあえず、お会いできて光栄です。

 

7つ目「Stichting Van Gogh Village Nuenen」。

住所:Berg 29, 5671 CA Nuenen

 

ここは観光案内所になっていて、普段は多くの観光客が訪れるのだろうが、残念ながらコロナで閉館中だった。

おそらくこの建物の中がちょっとしたミュージアムになっているはず。

 

それにしてもNuenenは他の町と比べて、街中に緑が多い感じがする。

町の中心でさえ、緑のトンネルで覆われているような。

そしてその美しい景色の中に佇む建物は全体的にレトロなものが多く、歴史伝統保存地区的な印象を受けた。

 

あと、個人的に気になったのはここ「Het Kostershuisje」。

住所:Berg 40, 5671 CC Nuenen

 

特に説明書きらしきものはなかったが、中はこうなっていた。

宿泊施設?ゴッホさんイケイケやんけ。

勝手に入ってよかったんやろうか・・・謎だ。

 

さて、8つ目は「Van Goghkerkje」という町の外れにあるミニサイズのかわいい教会。

住所:Papenvoort 2a, 5671 CR Nuenen

 

この小さく平和な町を象徴するかのように、この教会もまた小さく平和的な印象をたたえていた。

 

教会よりさらに進んだところには、公的施設だとは想像もつかないような外観のNuenen市役所があった。

さらに市役所の裏手には、こんな美しい池のある公園が広がっている。

プランにはなかったが、思わず寄り道してしまった。

 

遠くの橋の上を、先ほど教会前ですれ違った老夫婦がゆっくりと、手を繋いで散歩している姿が見えた。

私には程遠い未来・・・

 

気を取り直して前へ進もう。

加速しようとギアを一段あげた矢先、左手に見えたのが9つ目のスポット「Begemann Fabriek (The Begemann Factory)」。

住所:Berg 65, 5671 CB Nuenen

 

うっかり通り過ごすところだった。

で、ここはなんやねんというツッコミは無しでお願いします(調べ不足)

 

完全に町を抜け切ったところで、見えてきたのがこの風車。

De Roosdonck, Nuenen

住所:Gerwenseweg 2, 5674 SG Nuenen

 

アイントホーフェン周辺には、オランダらしく風車の回る風景なんてないものだと思っていたので少し感動。

青い空には風車が映えますなあ。

 

※ちなみに、ゴッホサイクリングルートからは少し外れるが、リースハウト(Lieshout)という町の外れにも「Vogelenzang」という風車があるので、体力が余っていたらぜひそちらにも足をお運びください。

 

風車の手前をカーブを描くように道なりに進むと、10番目が見えてきた。

ん?家?

住所:5674 SE Nuenen

 

もちろん、ただの家ではない。

これは、先ほどの「じゃがいもを食べる人々」のモデルになった家「The Potato Eaters (Groot Family cottage)」で、ゴッホはまさしくこのお宅で絵を描いたらしい。

まだ住んでいる人がいるのかな?

 

そろそろ終盤にさしかかってきた。

Nuenenの北に、Gerwen(ゲルウェン)という町があり、11番目のスポットがあるらしい。

 

町を通りかかると、よほどアジア人が珍しいのか、昼間から酒を飲んで上機嫌なおっさんらが「ハロ!ハロ!」と続けざまに声をかけてくる。

これがある程度都市部なら「ニーハオ」になるので、ここはよほど田舎とみた。

オランダはかなり白人社会が崩壊しているが、田舎町はまだまだジモッティのコミュニティが強い。

 

そんなことを考えながら軽快に自転車を走らせていると「Sint Clemenskerk, Gerwen」が見えてきた。

住所:5674 RC Gerwen

 

先ほどのNuenenの教会と比べて、こちらのは町の大きさに如何せん不釣り合いなぐらい大きく感じる。

 

さあ、あとはひたすら森林の中を走る自転車道を北上し、

ウィルへルミナ運河(Wilhelmina Kanaal)に突き当たれば運河沿いを西へ一直線に走るのみ!

運河では空気で膨らました簡易ボートでゆったりする人々や、犬の散歩をする人、川沿いでテントをはってキャンプをする人、隊列を組んで颯爽と走り抜けていくロードバイカーたちをよく見かけた。

そんな安らぎの時間が流れる運河沿いの見所といえば、やはり運河を往来する運搬船と運搬船を通すための跳ね橋である。

 

見よ、この堂々たる姿。

遠くから眺めると牧歌的な風景に溶け込んでこじんまりしてるのにね。

 

 

左手に広がる田園地帯には、草を食む牛や馬たちの姿も時折見かける。

さて、この旅最後の見どころ「Hefbrug Son」。

住所:Kanaalstraat 5691, 5691 NC Son

 

ここにかかる橋は跳ね橋タイプではなく、もう一段階画期的だ。

こうやって路面全体が昇降するのだから。

 

おお〜

珍しくもなんともないジモッティたちが橋の信号待ちをする中で、私一人だけワクワクしていたがな。

 

一回通行止になると、再び元の通行可能状態まで戻るのに時間がかかるため、気がつけば周りは多くの通行待ちの人々や車でごった返していた。

 

当然、通行可能のサインであるバーが上に開いた瞬間、周囲が皆、勢いよく向こう岸目掛けて駆けていく。

そんな慌ただしい往来の中で私一人、ゆっくり橋を渡った。

 

 

小型船舶を所有し、穏やかな川沿いにたつ日当たりの良さそうなマンションに暮らす。

これもまた、遠い(というか一生訪れなさそうな)未来・・・

 

時計を見たらもう5時半を回っている。

いけない。帰って夕食の支度をしなければ。

 

青空と緑とゴッホの世界に浸かったいいサイクリングだった。

私は再びペダルに足を乗せ、自分が暮らすアイントホーフェンへと戻った。

 

 

★ゴッホサイクリングルートマップはこちら(9ページ目)を参照♩

https://www.visitbrabant.com/uploads/media/577a15bf3b49c/vangoghbrabant-fiets-365x190mm-2016-v2eng.pdf

見ていただいたらわかるのだが、「ゴッホのサイクリングルート」なるものは、今ご紹介してきたNuenen周辺だけではなく、なんとデンボスやティルブルク、果てはブレダまでが射程範囲の広大なサイクリングルートである。

もはやノードブラバント州を全制覇する勢いで紹介されているので、完全走破したい方はくれぐれも計画的に!(なんか消費者金融のCMみたい・・・)