と考えていた。

 

フランスみたいに食文化やファッション系が強い国ではないし、案外思いつかない。

 

そこで、オランダにおける商品展開と日本の市場に出回っているものとを比較調査し(大げさ)、私が思う買って帰るべきものをご紹介しよう。

 

なお、日本で売られているものとしては、実際に日本にある実店舗に足を運んだわけではなく、全てネット通販で出てくる情報を元にしているため、少し正確性を欠く部分があるかもしれないが悪しからず。

 

●チーズボードとチーズスライサー

日本では、「カッティングボード」の商品名で売られており、近頃は百均でも見かけるようになった。

とはいえ、オランダのチーズボードは形や素材がバラエティーに富んでおり、せっかくなのでお気に入りのものを一つ買って帰ってもいいだろう。

 

ちなみに写真はオランダ人の友人からいただいたゴッホの美しい名画が刻まれたチーズボード、およびチーズスライサーである。

私は日本に帰ってもこれを見ては、このゴッホの描いたようなオランダの夏の青空を何度も思い出すのだろう。

やべ、一つ目ですでに泣けてきた、、、

 

●Miffy Corduroy

正味、このキャラクターに思い入れがない限りわざわざ買って帰らなあかんほどではないが、私はかわいいものが好きだし、オランダが誇るキャラクターなので買って帰る予定である。

一見、日本にも売っていそうな感じだが、これはオランダ限定のぬいぐるみらしい。価格は15ユーロ(1,800円)。

調べたところ、日本ではBUYMAで購入できるようだが、なんと5,950円もの高値で販売されていた。

 

他にも、オランダの民族衣装を着たミッフィー、デルフト焼きの模様がプリントされたワンピースを着たミッフィーなど、色々な種類があるのでお好きな方はチェックチェック!

駅ナカの本屋「AKO」やスキポール空港のミッフィーショップ、「Mama Loes」などのベビー用品店なんかで売られてるよ。

 

●縁高皿

フラットなんだけど、端っこだけがクイッと直角に近い角度で立ち上がっているこちらのデザイン。

「平皿」とか「エッジ」「高い」「皿」とか、色々なワードを入力しても出てこなかったので、結構検索に手こずったのだが調べた限り、一応日本語ではこの手の皿を「縁高皿(ふちだかざら)」と言うらしい。

しかし、「縁高皿」で検索をかけてみても、ニトリの食器に一種類だけ真っ白な縁高皿があったのと、波佐見焼のブランドから出ている一皿3,000円に近いもののみで、写真のような絶妙な色合いのものはなかった。

 

ヨーロッパではスタンダードなデザインで、HEMAやディレカミなんかですぐ手に入るのだが、なぜこんなに使い勝手のいい皿が日本では売られていないのかがわからない。

縁が少し立っているからこそ、煮物など液体の多い献立の多い和食でもいけるし、他にも、普通の丸いお皿に例えばマフィンなどの丸型の食品を置くと、丸いものに丸いものを置くので垢抜けないが、縁高皿だと同じ丸でもエッジの効いたデザインに助けられてしっくり来てくれるから食器としては優秀だし、もう少し日本でも流行ってもいいのに。。。と思ったら、日本の街のおしゃれなカフェとかで案外見かけたりして笑

 

写真は、ベルギーとオランダだけに店舗を構えるキッチン雑貨店、Dille & Kamille(ディレ&カミーレ)の「Reactive Glaze Plate stoneware」。

 

●ティーボックス

このデザインのティーボックスは、なぜか検索をかけても8,000円もする高級なものしか出てこない。

こちらでは5ユーロ未満でどこにでも売っている商品なのに・・・

言われてみれば日本人って、そんなに紅茶を自宅に何種類もストックしてへんもんな。

しかし私はフレーバーティーやハーブティーも含めていろんな紅茶が大好きなので、大事に持って帰るとしよう。

まさか近所の雑貨屋で400円ほどで購入したものを持って買えることになるとは思わなかったが笑

 

●ポーランド食器

image

これは言わずと知れた日本人に大人気のお土産である。

正確に言うと「ポーランド」食器なのでオランダのものではないのだが、ポーランド食器ブランドの一つである「Bunzlau Castle(ブンツラウカステル)」の流通にはオランダの会社が関わってるということで、「Bunzlau Castle」の一ブランドに限り、その会社のあるオランダのユトレヒト郊外にアウトレットも併設されているため、オランダでも手頃なお値段で購入できる。

日本で手に入れようと思うと、一体何倍のお値段がすることか!

 

●レシピ本

料理好きだからか、外国のレシピにも興味津々な筆者。

特に寒い国はスープ文化が発達しており、トラディショナルなものから多国籍なレシピまで、クックパッドには決して載っていないようなあっと驚くアイデアのレシピがズラリ。

オランダ語で書かれているが、そんなのGoogle翻訳のカメラ機能にかかれば一瞬で訳してくれるので大した問題はない。

食卓に異国のアイデアが詰まった一品をどうぞ。

 

●リチュアルズのコスメ

オランダ発、日本未上陸のコスメブランドといえばrituals(リチュアルズ)。

東洋のエキゾチックな香りのする上品なパッケージが印象的だが、我々はオランダの香りを漂わせたいので、同ブランドが展開する「Amsterdam Collection」なんかがいいかもしれない。

 

ちなみに、たまにメルカリなどで外国産コスメを出品している方がいるが、厳密にいうとあれは法律違反になるらしいので、旅行先で買い占めて日本帰って売りさばく行為は、たとえ儲かるとしてもやめようと思った筆者であった。

 

●スポーツグッズ全般

ヨガのウェアやダイビング用の防水バッグなど、日本では需要が少ないからか、お値段のはるものが多いスポーツ用品。

そんな高額商品たちも、スポーツ大国・オランダにかかればリーズナブルなお値段で購入可能。

デザインも豊富でアクティブな人には嬉しい。

 

●アレグラ・イブプロフェンなどの市販の医薬品

医薬品も見逃してはならない。

市販の花粉症薬で人気のあるアレグラだって、鎮痛剤のイブプロフェンだってオランダでは日本よりもお安く購入可能だ。

日本のものと比べて、各成分がどれほど多めに配合されているかはチェックした方がいいが、ものは同じなので全然使えると思っている。

筆者は長年、口唇ヘルペスを患っているが、この薬一つとってもオランダの方が安かった。

 

●トリュフマヨネーズ/ハニーマスタード/チーズ用ジャム/乾燥ハーブなど、日本ではもはや嗜好品に近い食べ物

ちょっと奥さん、日本ではトリュフマヨネーズ一つ3,000円だってよ。

アホか。こっちはスーパーで300円ぐらいやっちゅーねん。

日本の食材がこちらでは高級品のように、日本ではこちらの食材が高級品なのだ。

今一度、自分がいつも美味しいいうてこちらで食べてるものが、カルディや成城石井などでいくらで販売されているかチェックした方がいい。

高くても存在すればいいが、中にはトリュフマヨネーズのように、ネットではどこも在庫切れとかでマジで手に入らないものもある。

 

●スーツケース【NEW】

そうそう!コイツを忘れてた!!!

我が家はアメリカのブランドであるAmerican Touristerを愛用している。

American Touristerはサムソナイト傘下のブランドということで、高級スーツケース並みにヌルヌル動くのにお値段はリーズナブルなところが気に入っている。

同じ商品であっても、日本で買うよりも安く購入できるので、帰国してからスーツケースを買い替えようと思っているなら、悪いことは言わない。

ここで新しいのを買って古いスーツケースは捨てていけ。

このクオリティでこの大きさのスーツケースがアマゾンオランダでは1万前後で買えるなんて奇跡だぞ!

 

 

・・・こんな感じかなあ。

本当はチューリップの球根とか、肉類とか持って帰りたいんだけど、検疫でアウトだろうね。。。

あと子供がいたら、ベビー用品なんかも結構あるかもしれない。

インテリアまで考え出したら家具とか証明とか、もはや空間ごと移動させたくなるからキリないし笑

 

じゃあついでに、案外買わなくても良いものも・・・

 

オーガニックのアルガンオイル

うそやん、日本でアルガンオイル、しかもオーガニックいうたら高いで?

そう思ってたんですが、それも私が日本を去る2年も前の流通状況らしく、今ネットで検索すれば出てくるわ出てくるわ手頃な値段のオーガニックのアルガンオイルが。

オランダでもちゃんとしたものは30ユーロぐらいするから、これは案外買って帰らなくてもいいかも。

 

以上、私の拙い「オランダから本帰国の際に買って帰るべきもの」ブログでした!

 

 

<番外編>

友人から、オランダの子供は皆これを読んで育つぐらい有名な絵本をいただいた。

小さい頃に読んで、その子が親になったら今度は自分の子供に読み聞かせて、またその子が大きくなったら自分の子供や孫に読み聞かせて・・・

そんな時代を越えて愛され続ける一冊なのだろう。

 

カラフルな色づかいとmooiなタッチの絵に惹かれた。

2人の少年と少女がオランダの美しい四季を通して一年を過ごす様子を描いたもので、オランダらしい花や鳥や猫などの動物も生活の一部のように自然に描かれている。

きっと寂しくなった時はこれをみてはオランダで過ごした日々を思い出すんだろうなあ

みなさん、本当に本当にありがとおおおおおおお号泣

 

 

自転車を走らせると吹き抜ける心地よい風、新緑に包まれた自転車道を照らす木漏れ日。

6月、オランダ初夏のサイクリングシーズンのはじまりだ。

オランダという国は国土が(びっくりするぐらい)平坦で、国中、端から端にいたるまで自転車道が整備されており、日本のように<山越えコース><細い道で車と接触ヒヤリハット>みたいな過酷なこともなく、健脚であれば体力のない人でも安全かつ簡単に、遠くまで自転車で移動できるようになっている。

 

私の住む街・アイントホーフェンの市内中心部から、ものの自転車で15分も進めば運河の左右にはもうこんな田園地帯が広がる。

 

 

馬とか牛なんかがのんびりと草を食む光景なんかもオランダならでは。

 

道すがら、こんなおしゃれなデザインの橋がひょっこり現れた。

む?

せやせや、野鳥の季節でもあったな照れ

この時期、親鳥がひなを連れて歩く光景があちらこちらで見られる。

すくすく大きくなるんやで。

 

何もこの運河は、サイクリングを楽しむ人だけのものではない。

カヌーにいそしむ人や、

何が釣れるのか、釣りを楽しむ人なんかも。

皆、思い思いの楽しみ方があるようで。

 

川沿いの景色は美しいだけでなく、新たな発見もある。

走行中、運河の向こう側に、なにやら開発途中と思われる新興住宅地が見えてきた。

利便性の良いまちなかに住みたがるのはもっぱら外国人であり、オランダ人は郊外の落ち着いた場所に家を構えたがると聞いたことがあるので、きっとこの新興住宅地はオランダ人ばかりが住んでいるのだろう。

 

オランダは古い家をリフォームこそすれ、新しく立てるようなことはあまりして来なかったので、近年、急増する海外からの移住者による住宅需給が逼迫している。

私たちも当初こちらに来た際には、家探しに苦労したものだ。

 

なんでも税金を投入してハコモノを建てる日本も問題だが、オランダのように作らなさすぎるのも問題が大きい。

この国は、新たに家を建てるイメージなんてまるでなかったから、こういった一から新しい家が建つ様子が垣間見れるのは実に興味深い。

 

上の写真のように、トラディショナルな造りの屋根で伝統を受け継いでいるのかと思いきや、その下からは全面ガラス張りのモダンな壁が顔をのぞかせ、都市部では決して見ることのできない珍しいオランダの現代住宅を見ることができた。

 

田舎に行くほど、都市部やその近郊でよく見かける横並びの画一的な煉瓦造りの建築と違って、一棟一棟独立しており、家の外観デザインも多岐に飛んでいてそこもまた面白かった。


この日は、本来であれば平坦なオランダではとても珍しい丘陵地帯が、なんでもアイントホーフェン市とへルモンド市の間に存在することをgooglemap上で確認できたので、それを目当てに出かけたのだが、あまりにも車輪が快活に回るもんだから、気が付いたらヘルモンドまで来てしまっていたというわけだ。

オランダってマジ自転車でどこまでもいけてしまってこわい。

 

さて、せっかくなのでヘルモンドを街歩きしよう。

ヘルモンドはオランダ南部の小さな町だ。

 

街の端から端まですぐに歩けてしまうし、人々の感じものどかでアイントホーフェンより家賃も安いだろうから、幾分住みやすそうに見える。

白人比率が高く、アジア人は自分たち以外は見かけない。

 

お、かわいい小道があるな。

くぐってみると、、、

開けた通りに出たが、そのさらに向こうには、常軌を逸する外観の建物がこちらを見ているではないか。

近づいてみよう・・・

えー!!これって、ロッテルダムにあるキュービックハウスの親戚みたいやん!!

 

<a href="https://pixabay.com/ja/users/Engel62-22128/?utm_source=link-attribution&amp;utm_medium=referral&amp;utm_campaign=image&amp;utm_content=89501">Engel62</a>による<a href="https://pixabay.com/ja/?utm_source=link-attribution&amp;utm_medium=referral&amp;utm_campaign=image&amp;utm_content=89501">Pixabay</a>からの画像

 

そんなんがヘルモンドにもあるなんて聞いてないでわし。

住人らしき女性が玄関と思しきドアから出入りし、入り口には上着や傘など、生活感がうかがえた。

 

頭の整理が追いつかない間に、後ろを振り返ると・・・

はひ?丸くね??

すかさず友人が、「中国の福建土楼みたい」とつぶやく。

 

<a href="https://pixabay.com/ja/users/bigwore02-2835618/?utm_source=link-attribution&amp;utm_medium=referral&amp;utm_campaign=image&amp;utm_content=4159585">bigwore02</a>による<a href="https://pixabay.com/ja/?utm_source=link-attribution&amp;utm_medium=referral&amp;utm_campaign=image&amp;utm_content=4159585">Pixabay</a>からの画像

 

オランダ人が造ったら福建土楼もこうなるようだ。

後でわかったのだが、googlemapによるとこの建物は老人ホームらしい。

しかし中の造りはどうなってるんやろ。

 

にぎやかな中心街を歩いていたら運河にぶつかった。

こうやって見ていると、コロナなんかとは無縁そうな平和な光景だ。

 

レインボーカラーで着色されたポップな橋を渡ると、かわいらしい通りが見えたので足が赴くままにそちらに向かった。

 

私は観光ガイドブックに載るようなにぎやかな大通りも好きだが、少し外れたところにある小さな通りこそ、個性的な店やこだわりのものを置く店が多かったりして、歩いていて楽しい。

そしてそういった小さな通りたちは、古い造りの建物が並び、昔から存在する通りであることが多いので、軽くタイムスリップしたような感覚を覚えるし、そこで生きる人々の営みをも色濃く感じ取れる。

 

ところが、オランダのどこにでもあるこの「昔ながらの面影を今に伝えるストリート」が、我が町アイントホーフェンにはない(正確に言うと一カ所だけある「クライネ・ベルク通り」だ)

それゆえアイントホーフェンは、目にうつるものすべてが新しく、悪く言えばひどく退屈な街だ。

アイントホーフェンといえば、フィリップス社のロゴがわかりやすいビルと、「風の谷のナウシカ」に出てきそうな王蟲の成虫の形をした奇抜な建物がアイコニックなこの光景

 

したがって、私はヨーロッパに住んでるんだ!という刺激は一切ない。
仕方ない、第二次世界大戦でドイツ軍にメッタメタにされて何も残らなかった街なのだから。

 

これまで、オランダの様々な地方都市を見てきたが、2年もこの国に住んでもなお、私の目には新鮮にうつってしまう以下の写真のような光景こそ、きっとオランダのスタンダードな田舎町なのだろう。

 

フローニンゲン

フェンロー

マーストリヒト

ナールデン

デンボス

ベルヘンオプゾーム

そして、アイントホーフェン。

明らかに街の景観が他とは一線を画すると感じるのは私だけか。

良いか悪いかは別として。

 

私は、そんな異質な街であるアイントホーフェンばかりを取り上げ、「オランダってこんな街並みですぅ~」などと語っていた自分を恥じた。

我が町はまったくスタンダードではない。

 

なので、南オランダへの移住を考えている方や、南オランダに特化した情報が欲しいという方がこのブログを見てくださっていたりしますが、ごめんなさい。

結構、参考にならないと思いますこのブログ汗

 

だがしかし、あんな歴史を微塵も感じられないただ新しいだけの都市に、どうして世界中から高度外国人材がわんさか集まってくるのだろうか。

奥さんまで高学歴だからこっちが形見狭いのなんのって。

 

ちなみに私が思う限り、アイントホーフェンにはほかの都市にはある以下のものがない。

・昔ながらの面影を残す通り

・風車が回る光景

・人々の生活と結びついた運河

・チーズ工房やデルフト焼きなどの伝統産業

・レッドライトディストリクト(売春ストリート)

・有名な美術館や目立った観光地

・巨大貿易港

・海もなければ山もない

 

・・・なのに、なのに!この人気っぷりである。

なぜかというと、この街唯一にして、だがしかしそれだけで十分成り立つような、他の追随を許さぬほどに強いアピールポイントがあるからだ。

 

それは、この時代の宿命とも言えるIT産業をはじめとする最先端テクノロジーの世界有数の集積地からである。

 

そしてここで展開されているのはデザインの概念をも付加したITだと筆者は思っている。

ここでいう「デザイン」とは、日本人が考えるような外見をなんとかするカタカナの「デザイン」ではなく、functionをも含めた広義の意味の英語の「design」である。

 

実はアイントホーフェンには、その世界ではその名を知らないものはいないほど有名なデザインに特化した専門学校「アイントホーフェンデザインアカデミー」があるし、世界的に評価されている「ダッチデザイン」における最大の祭典「ダッチデザインウィーク」もこの地で開かれたりと、ITと融合したデザイン力の高さ(?)も優秀な人材を惹きつける要因になっているんじゃないかと勝手に思っている。

アイントホーフェンでも特におしゃれなストレイプS地区にある高架下にはこんな遊び心が

 

いまだにブログ以外はなんでも手書きで乗り切っているド文系の私には、ITの世界はともかく、このデザインの概念とやらも理解できないし、とりあえず言えることは、なんだかとても未来的なんやなということだ(頭悪い)。

 

21世紀の現代だからこそ、この街の価値を世界中に知らしめることができてるんやろうな。

 

IT以外の魅力的な要素が見当たらないくせに、こんなに突出した存在感を持つヨーロッパ、いや世界の都市なんてそうそうない。

日本でも、大阪・奈良・京都にまたがる「けいはんな学研都市」みたいに、様々な企業や研究機関が集積する似たような場所があるが、だからといってここまで国際色豊かではない。

さあ、話をサイクリングに、もっと言うと途中で中断されたヘルモントの街歩きまで戻そう。

ヘルモントにはお城もあった。

オランダのお城は、ちょっと金持ちなやつがお城っぽいとこに住みたかったんだぐらいの控えめな外観のものが多い。

周辺の景色を妨げず、周囲の建物とも調和しやすいからこれはこれでいい。

 

さて、簡単にヘルモンドを見終わったところで、本来の目的地である丘陵地帯「Dak van Brabant」へ向かおう。

今度は見逃さないように慎重に笑

 

再び運河沿いを走っていると、標識がかろうじて立っている横に、整備されていないうっそうと茂った小道が森の中へと続いているを見つけた。

丘へと続く入り口はここやったんやな。

 

これも後から思ったことなのだが、ヨーロッパではうかつに茂みに近づくのはよくない。

マダニに噛まれて感染症を引きおこすことがあるからだ。

 

これでリアルに人が死んでいるので、本当は別のルートを模索するべきであったが、今の所はなにごともなくすんでいるのでよしとしよう。

 

うっそうとした林を抜けると、おお!

目の前には開けた砂利道が広がっているではないか。

 

先ほどまで上を覆っていた緑が一切なくなった今、頭上に輝く太陽が容赦なく自分を照りつける。

ロックダウンで運動不足の体に鞭を打つようにして、ひたすら砂利道を自転車片手に上っていくと、やっと視界が開ける頂上があらわれた。

う~ん、360度なにもないっ!!

 

山谷の地形が当たり前の日本人にとって、特に三方を山で囲まれし京都で生まれ育った私には30年間生きてきてもいまだに受け入れがたい光景である。

 

私は、すぐ横に見えている高圧電線がのびゆく方向を目で追った。

するとその先に、特に高い建物が集合した場所があるのが見て取れた。

我が町・アイントホーフェンである。

オランダG5の一つに数えられるアイントホーフェンは、南部最大の都市なだけあって、こうやって遠くから見ると群を抜いて高層ビルの数が多い。

 

それにくらべ他の町で、この丘陵地帯から確認できる高い建物と言えばところどころポツンと立っている教会ぐらいである。

教会は何世紀もそこに鎮座してきたわけだから、昔の旅商人なんかは皆、遠くにそびえる教会を目印に目的の町を目指したのだろう。

高い建物がなかった時代、この光景を見たら教会の重要性が容易に想像できた。

 

遠くの雄大な光景から、近くの風景にピントを合わすと今度は植物たちが目に入った。

オランダではおそらく精一杯の「高山植物たち」である笑

 

標高30mにも満たなそうな頂上で誰にも見られることなく美しく咲いていた。

 

さて、写真で見ても分かる通り、この明るさだがこの時の時刻は18時である。

日没が22時ごろにもなる、もうすぐ夏至を迎えるオランダ。

まだまだ外は明るいだろうが、そろそろ帰らなくては。

 

高いところのないオランダでは珍しいこの光景をしっかりと目に焼き付けたあと、私は再び、車輪が地面と触れるたびにジャリっと擦れる音のする坂道をくだった。

 

 

<本日の一枚>

アイントホーフェン中心にあるクラウス広場が一変。

ただただコンクリートだった空き地が、緑広がる憩いの空間になっていた。

アイントホーフェンには、大きいものだけでも10箇所以上、公園がある。


Philips van Lenneppark

 

アイントホーフェンというのはオランダ第5の都市だ。

かつてフィリップスの城下町であったこの街は、何かの記事で“one of the most greenery city in the Netherlands”と紹介されるほど、あちこちに緑豊かな環境を有している。

 

ある程度都会でありながら、市内のどこに住んでいてもたいていは徒歩圏内になんだかの公園がある。

Eendjesvijver

 

そうそう、ここでいう「公園」は、日本人的には「緑地公園」に近いかもしれない。

(子どもが遊ぶ遊具が置かれている公園は、playgroundと呼ばれている気がする)

Genneper Parken

 

どの公園もそれぞれ味があって面白い。

そしてこれらの緑がまた、アイントホーフェンのモダンな建物ともよく調和している。

Kanaaldijk-Zuid
 

都市計画がちゃんとしてるというか。

2年間の海外生活の中で、ヨーロッパ以外の様々な地域に足をのばしたが、これほど画一的に整備された街並みが、国中どこでまでも続いているのはオランダぐらいかもしれない。

お隣のドイツだってベルギーだって、そういうところはちゃんとしていそうなものだが、電車や車で一歩国境を超えるとその差は歴然である。

今その瞬間にオランダに入ったことが車窓から見て取れるぐらい、景観整備への気合いの入り具合が断然違う。

(まあそのかわりクソ高い税金を取られているのも事実で、逆にあんな取られるのに目に見えて景観が美しくなかったら怒るわ。)

 

特に公園に関して言えば、建物に囲まれて日当たりが悪くて狭い、申し訳程度に作られた誰も遊んでない日本の公園とは大違いである。

Philips de Jongh park

 

こういうところも、日本に比べてオランダは子育てが大変しやすい国と評価されるゆえんなのだろう。

公園は何も子供たちだけのものではない。

Stadswandelpar

 

ベンチに腰掛け、しばらく愛を語り合うカップル。

好きな音楽をかけてダンスの練習にはげむ若者。

芝生でその白い肌を露わにして日向ぼっこをする女性。

手をつなぎながら一緒に散歩するほほえましい老夫婦。

 

ここは、万人に開かれた空間である。

これまでの人生で自分のライフスタイルの中に、「緑美しい公園を伴ったゆとりのある生活」というのがなかった分、オランダの環境にどうしても憧れてしまう。

Anne Frankplantsoen

 

そしてオランダ生活もラストスパートに差し掛かっている今、帰国後、これから自分は一体、どう生きるのかということを考えてしまう。

 

日本は都市部に緑が乏しい、日本はこんなにも働く環境がクソだ、日本は子どもに優しくない、オランダはこんなにも進んでいるのに!と、ないものねだりしたって仕方がないのである。

自分の本来の居場所は日本なのであって、ここではないのだから。
 

オランダがどうしてもよく見えてしまうのは、自分が外国人という立場だからだろう。

 

オランダ人だって、時に厳しい現実と向き合いながら、自分のため家族のため一生懸命にその地に腰を下ろして生きている。

同じ日本人でも、オランダ人と結婚してオランダで暮らしている人や、異国の地で仕事をするフリーランサーなども、その土地で根を下ろしてやっていく以上、決していいことばかりではない現実と向かい合っている。

 

そんな風に、地に足をつけて生活をしてるから、たまの休みでどこかに出かけたり、愛する家族と一緒に過ごしたりという“ささやかな幸せ”が、日常の中で一層輝くのだと父は言っていた。

 

私は、外国人というゲスト的立場だから、オランダがなんでもかんでもよく見えているだけだ。

それはわかっているけど、心のどこかではやっぱりまだ日本に帰りたくない気持ちがある。

 

これではまるで、ディズニーランドから帰りたくないこどもと同じだ。

自分に非日常を提供してくれる夢の国から、現実を突きつけられる世界に誰だって帰りたくはない。

祖国に帰れば嫌でも現実を見るもの。

 

私にとって日本に帰国するということは、夫の仕事で海外についていくからと、仕事を免除され楽チンだった専業主婦生活から、住む家も仕事も見つけて、子どももいないのでもう一度、社会人としてしっかりやっていかなければならないことを意味する。

 

自分の人生は自分しかハンドルを握ることができないのに、現実から逃げて自身と向き合わないやつは、「宝くじが当たった」とか「旅行三昧豪遊づくし」とか、誰がみてもわかりやすい“スペシャルな幸せ”を常に享受しないと満足できず、他人と比べては不満を言い、今ある幸せにも感謝ができないのだろう。

 

だから、帰りたくないと立ち止まっていてはまったく自分の成長につながらない。

何の苦労も知らずに歳を重ねた人間ほど、話していてつまらないものはない。

 

「この自らのトラブル多き人生」を受け入れ歩んできた、オランダで出会った私が心から尊敬できる人生の先輩たちはみな、「楽して生きてきた人間なんて、それがダメとは言わないけど、少なくとも魅力なんか感じない」と言う。

 

私は、そんな中身のない人間になんかなりたくない。

やっぱり、人として奥深く魅力的な人だと思ってもらいたい。

 

日本の環境しか知らなかった私に、オランダは生活を豊かにするたくさんのインスピレーションを与えてくれた。

若くして(いや、もう30だけどなw)こういう経験を積ませてもらったことにまずは感謝し、今度は自分がいるべき場所で泥臭くもなりながらも生きるのだ。

いつもすましてきれいになんか生きられない。

 

はあ・・・なんで自分が海外にいるタイミングでコロナなんて来てもうたんや・・・

しかし「この自らのトラブル多き人生」という運命に逆らってはいけない。