アイントホーフェンには、大きいものだけでも10箇所以上、公園がある。
アイントホーフェンというのはオランダ第5の都市だ。
かつてフィリップスの城下町であったこの街は、何かの記事で“one of the most greenery city in the Netherlands”と紹介されるほど、あちこちに緑豊かな環境を有している。
ある程度都会でありながら、市内のどこに住んでいてもたいていは徒歩圏内になんだかの公園がある。
Eendjesvijver
そうそう、ここでいう「公園」は、日本人的には「緑地公園」に近いかもしれない。
(子どもが遊ぶ遊具が置かれている公園は、playgroundと呼ばれている気がする)
Genneper Parken
どの公園もそれぞれ味があって面白い。
そしてこれらの緑がまた、アイントホーフェンのモダンな建物ともよく調和している。
Kanaaldijk-Zuid
都市計画がちゃんとしてるというか。
2年間の海外生活の中で、ヨーロッパ以外の様々な地域に足をのばしたが、これほど画一的に整備された街並みが、国中どこでまでも続いているのはオランダぐらいかもしれない。
お隣のドイツだってベルギーだって、そういうところはちゃんとしていそうなものだが、電車や車で一歩国境を超えるとその差は歴然である。
今その瞬間にオランダに入ったことが車窓から見て取れるぐらい、景観整備への気合いの入り具合が断然違う。
(まあそのかわりクソ高い税金を取られているのも事実で、逆にあんな取られるのに目に見えて景観が美しくなかったら怒るわ。)
特に公園に関して言えば、建物に囲まれて日当たりが悪くて狭い、申し訳程度に作られた誰も遊んでない日本の公園とは大違いである。
Philips de Jongh park
こういうところも、日本に比べてオランダは子育てが大変しやすい国と評価されるゆえんなのだろう。
公園は何も子供たちだけのものではない。
Stadswandelpar
ベンチに腰掛け、しばらく愛を語り合うカップル。
好きな音楽をかけてダンスの練習にはげむ若者。
芝生でその白い肌を露わにして日向ぼっこをする女性。
手をつなぎながら一緒に散歩するほほえましい老夫婦。
ここは、万人に開かれた空間である。
これまでの人生で自分のライフスタイルの中に、「緑美しい公園を伴ったゆとりのある生活」というのがなかった分、オランダの環境にどうしても憧れてしまう。
Anne Frankplantsoen
そしてオランダ生活もラストスパートに差し掛かっている今、帰国後、これから自分は一体、どう生きるのかということを考えてしまう。
日本は都市部に緑が乏しい、日本はこんなにも働く環境がクソだ、日本は子どもに優しくない、オランダはこんなにも進んでいるのに!と、ないものねだりしたって仕方がないのである。
自分の本来の居場所は日本なのであって、ここではないのだから。
オランダがどうしてもよく見えてしまうのは、自分が外国人という立場だからだろう。
オランダ人だって、時に厳しい現実と向き合いながら、自分のため家族のため一生懸命にその地に腰を下ろして生きている。
同じ日本人でも、オランダ人と結婚してオランダで暮らしている人や、異国の地で仕事をするフリーランサーなども、その土地で根を下ろしてやっていく以上、決していいことばかりではない現実と向かい合っている。
そんな風に、地に足をつけて生活をしてるから、たまの休みでどこかに出かけたり、愛する家族と一緒に過ごしたりという“ささやかな幸せ”が、日常の中で一層輝くのだと父は言っていた。
私は、外国人というゲスト的立場だから、オランダがなんでもかんでもよく見えているだけだ。
それはわかっているけど、心のどこかではやっぱりまだ日本に帰りたくない気持ちがある。
これではまるで、ディズニーランドから帰りたくないこどもと同じだ。
自分に非日常を提供してくれる夢の国から、現実を突きつけられる世界に誰だって帰りたくはない。
祖国に帰れば嫌でも現実を見るもの。
私にとって日本に帰国するということは、夫の仕事で海外についていくからと、仕事を免除され楽チンだった専業主婦生活から、住む家も仕事も見つけて、子どももいないのでもう一度、社会人としてしっかりやっていかなければならないことを意味する。
自分の人生は自分しかハンドルを握ることができないのに、現実から逃げて自身と向き合わないやつは、「宝くじが当たった」とか「旅行三昧豪遊づくし」とか、誰がみてもわかりやすい“スペシャルな幸せ”を常に享受しないと満足できず、他人と比べては不満を言い、今ある幸せにも感謝ができないのだろう。
だから、帰りたくないと立ち止まっていてはまったく自分の成長につながらない。
何の苦労も知らずに歳を重ねた人間ほど、話していてつまらないものはない。
「この自らのトラブル多き人生」を受け入れ歩んできた、オランダで出会った私が心から尊敬できる人生の先輩たちはみな、「楽して生きてきた人間なんて、それがダメとは言わないけど、少なくとも魅力なんか感じない」と言う。
私は、そんな中身のない人間になんかなりたくない。
やっぱり、人として奥深く魅力的な人だと思ってもらいたい。
日本の環境しか知らなかった私に、オランダは生活を豊かにするたくさんのインスピレーションを与えてくれた。
若くして(いや、もう30だけどなw)こういう経験を積ませてもらったことにまずは感謝し、今度は自分がいるべき場所で泥臭くもなりながらも生きるのだ。
いつもすましてきれいになんか生きられない。
はあ・・・なんで自分が海外にいるタイミングでコロナなんて来てもうたんや・・・
しかし「この自らのトラブル多き人生」という運命に逆らってはいけない。