私の住むオランダ南部最大の都市Eindhoven(アイントホーフェン)は、少し古いが2014年に「best cycling city in the Netherlands」に選ばれた実績を持つほど、自転車で快適に移動できるような環境にある。

 

アイントホーフェンを取り囲む環状道路(我々はリングと呼ぶ)の外側を一歩出ると、そこはサイクリング天国だ。

高速道路ならぬ「高速自転車道」のようなものが町と町を結ぶように整備され、自転車さえあれば簡単にアイントホーフェンの中心地からたちまち周辺の町にアクセスできるようになっている。

 

私はこれまで、そんな快適な自転車道にのって周辺の町に行った様子をこのブログでまとめてきた。

<北>

<東>

<北東~北>

 

南東

 

 

本帰国のため、オランダサイクリング記事最終回となるここでは、まだご紹介していなかった西側をクローズアップしていきたいと思う。


これは、アイントホーフェンのリングのすぐ外に広がる新興開発地域「Meerhoven(メールホーフェン)」から、オランダ国内第2の規模を誇るアイントホーフェン空港を越え、運河沿いの小さな町「Oirschot(オイルスコート)」を目指す、往復で2時間弱のスモールトリップである。

今、車のオイルコートみたいな名前だなと思ったアナタ。安心しろ、私もだ。

 

まずは最初の通過地点である世界でも珍しい立体交差点ならぬ立体自転車専用交差点・・・というかヨーロッパなので、自転車専用ラウンドアバウト交差点である「Hovenring」へと向かおう。

※ラウンドアバウト交差点・・・信号機のない環状タイプの交差点のこと。ヨーロッパではこのタイプがメジャーだ。パリの凱旋門の周りだってそうだよね。

 

よし、見えてきた!なだらかな傾斜をのぼって・・・

おお!近くで見るHovenring!!

真下には車の往来が見える!快適快適~

 

ホーベンリングは世界のユニークな自転車レーンとして、日本でも取り上げられていた。

ご興味ある方はこちらをどうぞ。

 

 

近未来の建築を見せられたところで、次の目的地である「3D printed house」へ。

こちらもまた、ずいぶんと近未来的な建築とみた。

「3dprinthouse」Instagram公式ページより

 

最近注目されている立体物をそのままコピーする「3Dプリント技術」で、なんと家まで作ってしまおうという大胆な取り組みである。

アイントホーフェン工科大学との共同プロジェクトらしく、世界初のこの試みに、世界中がにわかに注目している話題の建物である。

 

どんなでっかい印刷機(?)なんやろうか、耐久性や耐震性は一体どうなっているんだろうか、地震多くて湿気の多い日本じゃ無理じゃね?とか色々頭をよぎらんでもないが、実にユニークな取り組みではある。

普通に建てるよりも格段に速く完成するため、有事の際の仮設住宅やシェルターとしての役割も期待できるらしい。

 

公式HPによると、3D printed houseはメールホーフェンのBosrijk(ボスライク)というところにあるらしい。

ちなみに、ボスライクとgooglemapで検索しても出てこないようになっている。

まだ名前もつかない空き地を整備して建てるのだそうだ。

 

行きたいのに場所がわからないので困った私は、公式ホームページの文言を隅から隅までみていると、「スリッフェルト通り、ボスファザント通り、ボスイユ通りの隅に位置し、全体が木々に囲まれているため、風景の中の「緑の部屋」です」とあるではないか。

 

しめた。googlemapの航空写真で場所が特定できるぞ。

ここだ!

さらに拡大。

確かに緑に囲まれてた。

さてはて今はどうなっているのやら、期待を膨らませ現地へ行ってみると・・・

何もなくね??

残念!!まだ空き地を整備してる段階でしたっ!!!

あと数年以上はここにいるだろう日本の方、ぜひワタクシめに完成写真をお送りいただければ幸いです・・・

 

それにしても、今日は雲が多いが、その合間から顔を出す空はものすごく青い。

 

気を取り直してさらに進むと、

だだっ広い平原に現れたこの建物。

近くまで行ったら行きかう人々の年齢層がぐっと上がったところを見ると、老人ホームかな。

 

オランダ人は自分がボケてるボケてない、まだ一人で生活できるできないは気にせず、ある程度歳を取ったら潔く老人ホームへ入居し、持ち家は売却するのが一般的と聞いた(そして現在、買ったときよりも高値で家が売れるので彼らはウハウハだ)。

 

そしていつもはマンションには住みたがらないオランダ人なのに、老人ホームばかりはたいていマンションタイプになっているので、ここもそうなのかなと勝手に判断。

こんな凝ったテラスがあるならむしろ私が入居したいわ。

目の前にはこんな小川のせせらぎもあるし。

その向こうに見える柵付きの牧場には、

牛もいるし(いや、そこはそんなにうらやましくはないよな)

隣のこれまた広大な広場では、近所の子供たちが凧揚げしたりして遊んでいる光景が見えた。

こんな広大な空きスペースと新興住宅ばかりが立ち並ぶメールホーフェンでの目的地その3、

この地になぜかぽつんと一カ所だけ盛り上がったこの丘に登る(標高目寸約15m、それでも山のないオランダでは貴重な高い場所)。

わーい!たかーい!空が近ーい!!

せっかくなので私たちは少しの間、持ってきたお菓子などを広げてピクニックをした。

 

腹ごしらえが済んだ後、4つ目の目的地であるアイントホーフェン空港横にあるオランダ空軍の「アイントホーフェン軍用基地」に行ってみることに(これは完全に私の趣味)

実はアイントホーフェンは第二次世界大戦時、ここが創業の地であるフィリップス社で作られた爆弾や兵器をこの空港から全国に調達していたことから、昔から軍事的にも重要な拠点だったと聞いたことがある。

 

つい最近でも、コロナウイルスで他国に取り残された民を乗せて、この空港にチャーター機が降り立ったというニュースを見たことがある。

あれは確かダイヤモンドプリンセス号から救助された人じゃなかったかな。しかしこれはうろ覚えである。

 

軍用敷地内には大きく羽を広げた太陽光パネルがずらりと並んでいた。

一体どれだけの電気をまかなえるのだろうか。

フェンス越しだが、全部で3機見える。

マニアの方ならヨーロッパの戦闘機・輸送機・救難機も遠くから識別できちゃうのだろうが、私には日本の曲芸飛行部隊で有名なブルーインパルスや惜しまれながらも昨年退役したF4ぐらいしかわからない。

 

さてと、遠くからりりしい姿を拝んだところで、さらなる目的地へと向かおう。

アイントホーフェンから北西にのびる自転車道は、はっきりいって快適じゃない。

舗装道路とは思えないほど、表面はタイヤと相性の悪い細かな凹凸でできており、ガタガタと振動が全身に伝わってくる。

 

と、急に左手の森林からけたたましいエンジン音がきこえてくるではないか。

誰やねん、こんなところで暴走族やってるやつは・・・って、んん???

レース場だ!!今日は何かの大会が開かれてるらしい。

さらに目を凝らして見ていると・・・

モトクロスだ!!

さっきから聞こえる轟音の正体はこれだったのかあ~

私はロードレーサーまでしか手をつけたことがないが、きっとバイクはバイクで夢があるんだろうなあ。

 

さらに北西の町を目指してペダルを回転させること15分。

着きました!運河沿いにたたずむオイルスコートに!

 

市内中心部へ行く道すがら、素敵なお店との出会いが。

私の好きなポーランド食器ブランドの巨大ティーポットが!!

ということは・・・・

おおおおお!!

かわいいのがたくさん並んでいるではないか!!!!

なんと!!!ここもかわいいもので溢れている!!

店内にはオランダのものと思われる見たこともないブランド食器の数々と、紅茶・コーヒー関連グッズがずらり。

 

私も紅茶好きの友人に倣って、干しイチゴの入ったいい香りのするストロベリーティーを買って帰ることにした。

ここの紅茶は日本ではあまり見かけないトロピカルフルーツやハーブ系など珍しいものが多く、茶葉のブレンドセンスが光っている。

 

さて、市内中心部へときた。

この町のシンボル「Saint Peter's Basilica」だ。

立派でとてもマジェスティックな教会だったので、ぜひとも中も拝見したかったが、残念ながらこの日は中に入ることはできなかった。

 

それにしても・・・

 

 

360°どこを見渡してもかわいい町だ。

市内中心部はレトロな建物が多く、第二次世界大戦で何もかも破壊されて歴史的建造物が残らなかったアイントホーフェンとは違って、ここは田舎だから戦火を免れたのだろう。

 

その中でも私はレトロな絵が描かれた昔ながらのアイス売りの手押し車が店頭に置かれていたこちらのお店に目がとまった。

ナッツやドライフルーツが埋め込まれた素敵なチョコレートや様々なフレーバーのアイスクリーム。

豊かなホームインテリアを演出するのに必要な美しい雑貨たち。

思わず私は、見ているだけでスイートな気分に。

 

おや?

先ほどの教会みたいに、オランダではよくあるレンガブロック造りのトラディショナルな建物とは違って、こちらは異国情緒漂う不思議な外観をしている。

 

Googleによると、こちらは「Hof van Solms」という会議場らしい。

こちらもコロナ禍を意識してか、グーグルストリートビューを使えば中も見れるようになっていた。

怪しい紫色の照明が気になったが、確かにパーティー会場といった感じだった。

 

会議場から、さらに美しい木立の歩道を進んでみたら・・・

地ビールの醸造所「Brouwerij Vandeoirsprong」が見えてきた!

 

2015年にできた比較的新しい醸造所らしいが、ビールが飲めない私は、店員の目をかいくぐってトイレだけこっそり借りたのは内緒な。

 

さて、時計を確認したらそろそろ帰らなければならない時刻になっている。

最後、オイルスコートを離れる前に、この町にある一風変わった建築を2つご紹介しよう。

 

まずはこれ。

閑静な住宅街の中に突如として現れた椅子。

これ、どれぐらいのサイズ感かというと・・・

これぐらい。

いくら世界第三位の平均身長をもつオランダ人でも、このサイズはでかいやろうが。

作品名もそのまま「De Grote Stoel(The Big Chair)」。

 

お次は、実用的だが遊び心のきいたいかにもダッチデザインなこちらの橋。

 

ぐーるぐーるとトルネードしているが、なぜこんな形をしているかというと・・・

自転車が負担なく走れる角度で設計されているから。

つくづく、自転車乗りに優しい国である。

上からは、穏やかな運河が見えた。

雲の切れ間から差し込む太陽の光によって水面に映し出される光の波が、雲の動きに合わせて急速にこちらに移動してくるのがわかる。

今日は雲の動きがとても速い。

 

さてと、行きとは違って帰りはウィルヘルミナ運河沿いの快適なフィッツパッド(自転車専用道)を走って、アイントホーフェンまで帰ろうか。

 

 

 

<本日の一枚と言わず二枚>

じゃん。

とんかつと2色のスタンポット(TONKATSU met twee kleur stamppot)。

 

スタンポットとは、じゃがいもに人参やケールなどを一緒にマッシュしたオランダの冬の伝統食である。

じゃがいもを潰しただけの質素な農村料理と日本人は馬鹿にするけれど、後から紹介する彼の手にかかれば、イモい(=田舎臭い)スタンポットだってこのとおり。

 

・・・まるでおしゃれカフェで出てくるOLランチやんけ。

 

この日は忙しく、サイクリングの後は友人宅へ。

なんでもオランダ人の友人カップルが、本帰国に際するお別れ会ということで、私たち夫婦を食事会に招待してくれたのだ。

 

まさかオランダ人に日本で食べるのと変わらぬクオリティのとんかつをごちそうになるとは思わなかった。

いつ食べてもこの旦那さんが作る料理はうまい。

この日のテーマは、「日蘭フュージョン料理」ということで、スープ・メイン・デザートの3コースメニューを用意してくれた。

写真のデザートは、乳製品大国オランダらしく、乳製品が使われた国民食のデザートvla(フラー)に、抹茶の粉末を加えたちょっぴりオトナの一品。

 

食べるのに夢中になって写真を撮り忘れたが、とんかつの前には「バターナッツカボチャのスープ」が出てきて、これなんか隠し味にお味噌を使っているとのことで、実にまろやかで日本人の好む複雑な味わいに仕上がっていた。

オランダのカボチャスープらしく、時折ジンジャーのさわやかな風味とリンゴやナシを使っていると思われるフルーティーさも感じる。

お味噌がこんなにもオランダのカボチャスープと相性がいいとは知らず、びっくりした。

 

このカップルは日本が大好きなとても素敵な人たちで、もう開催されなくなって久しいが、オランダ唯一の日本語会話ミートアップを通して知り合って以来、交友関係が続いている。

 

「ねえ、日本はいつになったら私たちの入国を受け入れてくれるの?」

 

毎年、仕事やプライベートで日本を頻繁に訪れる彼らだが、一体、彼らの言うように、日本が外国人観光客を受け入れるのはいつになるのだろうか。