世界広しといえど、「トラピスト・ビール」のような特殊なものはなかなかないだろう。

 

「トラピスト・ビール」とは、トラピスト会修道院で造られるビールのことをいう。

神聖な「修道院」という意外な場所でビールが製造されているということから、この手のビールは何かと人々の話題になる。

 

そんなトラピスト・ビールの名を冠するのは、世界でもたった7銘柄だけらしい。

そのうちの6つはベルギーに製造元(の修道院)があり、残りの一つはオランダのティルブルフ郊外にある。

 

「なんだ全部自宅(オランダEindhoven)から遠いな・・・」なんて思っていたのだが、ところがどっこい!

 

google map先生に聞く所によると、一番近い修道院なら行けることが判明。

しかも自転車で(←ここ重要!)。

 

我が家は車がないので、自宅から自転車で行ける範囲にある観光地は貴重な存在だ。

しかもセミロックダウン中だから、オープンエアで公共交通機関を使わないサイクリングはうってつけである。

田舎向いていくことが多いので、密にもならないから自転車はこの上なくコロナ禍に適したアクティビティだ(もちろんstay at homeがベストではあるが)。

 

これは・・・チャンス!!!!

 

早速自転車にまたがり、ペダルを漕ぎ出した。

天気予報も今日いっぱいまでは晴れてくれるという。

お天気も味方したところで、テンションが上がり勢いに乗った私はぐんぐん南に向けてfiets pad(フィッツパッド:自転車道)をひた走った。

 

今回の目的地は、Achel beer(アヘルビール)」ブランドでおなじみの「Achelse Kluis」というベルギーにある修道院。

オランダとベルギーのちょうど国境付近にある「Achelse Kluis」だが、ありがたいことに、このエリアだけ国境線がぐいっとオランダ側に押し寄せられているため、アイントホーフェンから真南に約1時間下るだけで国境までたどり着けてしまう。

 

あれ?あんたEindhovenに住んでるんだったら、地図で左斜め上すぐにあるティルブルフの修道院の方が近いんじゃないの?と思われた方、

 

ノンノン。

 

残念ながらそこへ行くにはもっとかかります!

こちらは自転車で1時間40分ぐらい(あくまで自転車換算する私w)。

まあ、ロードバイクなら行けなくはないけどな・・・

 

雑談はそれぐらいにして・・・

まずはアイントホーフェン郊外を走る「A2」高速の高架をくぐって森林の中を走る。

今日も木漏れ日がサイコー!

 

しばらく高速沿いの道を走って・・・

 

分かれ道にでた。

google先生は右に行けとおっしゃっているので、写真で見えている道を進もう。

乗馬の標識がおもしろいね。

 

ところがここを右折したのが運の尽き。

道はやがてアスファルトから凸凹むき出しのオフロードへと切り替わり、周囲の景色もどんどん森林の中に飲み込まれていく。

 

「本当にこの道で合ってるんかいな」「引き返した方がいいかな」とか思いながらガタガタの道に車輪を取られて転倒しまいと30分ほど格闘していた矢先、向こうの方で人影がびっくりするぐらいスイーっと移動していくのが見える。

 

自転車道や!!!

そうなのだ。私はこんな道なき道を進みたかった訳ではなく、ずっとあの自転車道に乗っかりたかったのだ。

 

ところが我がgoogleめは、どう見てもそこに道はないのに道無きルートを進ませようとする。

迷いに迷って本当に帰れなくなったらどうしていたのだろうか。

こんな樹海の中で(←もはや先ほど木漏れ日サイコーとか思ってた優しい緑ではない)

 

ちなみに、みなさんの中で私と同じようにこのルートにはまってしまわないように、正しいルートを以下に記した。

アイントホーフェンから行くには3通りの方法があるが、大きくバツをつけたルートだけは悪いことは言わない。行くな。

無い道指し示された挙句、森林の中を彷徨うことになるから。

(細かく言うと、グレヴェンスク通りからアイケンラーンに右折する道なんて存在しないっちゅうねん)

 

【補足】後からわかったことなのだが、あえてバッテンの道で行くことを選択するとしたら、googleめが指し示す高速道路沿いの道(グレヴェンスク通り)ではなく、高速挟んで反対側に正しい自転車道が存在するので、そちらを通りさえすれば上記のルートでも問題は無い。そしてこの自転車道へ行くには、先ほど乗馬のマークの標識がおもしろいと言っていた地点で、googleが指し示す右の道ではなく、左の道を進めば高速を渡って反対側の正しい自転車道に乗れるはず。

 

やっとの思いで自転車道に乗ったところで、さあ再スタート!!

なんて細く長く続く一本道だろう。

木の密度も少なく、不思議な気分。

 

と思ったら今度は本格的に森林区間に突入。

その中をひたすら南へ向けてぶっ貫く自転車道をさらに走ると・・・

自然保護区「Groote Heideだ!

 

森林地帯の中に突如として現れるだだっ広い湿地帯的空間。

季節によっては、こんな美しい風景を我々に見せてくれるらしい。

 

 

https://www.instagram.com/degrooteheide/「degrooteheide」instagram公式ページより

 

オランダにはこうした自然保護区がたくさんあり、このGroote Heideもその一つだ。

Eindhovenの南には、こんな広大で雄大な自然が広がっていたなんて・・・

 

【補足】Groote Heideに到達するのに時間がかかる上、それまでの道のりが同じ景色でやや単調なため、時間があればもっと手前にある「Viewpoint Egelven(住所:Unnamed Road, Valkenswaard)」にも立ち寄ってみてもいいかも。

 

さて、ここまでくれば噂の修道院はもう目と鼻の先!

さらに15分ほど進むと・・・

おおお!!!ついに国境地帯にぶち当たった!!!!

そして写真奥に見えているのが今回の目的地であるAchelse Kluisである。

残念ながらこの日は正門は閉ざされ、教会の中に入ることはできなかった。

売店ぐらい空いてるのでは?と、裏手へ回ってみると・・・

あったあった。前方に看板が立っているのが。

 

入り口付近では、同じようにサイクリングしてきたであろう年配の男性が、つい先ほど奥さんが中で買ってきたと思われるアイスクリームを食べて涼んでいた。

よし、私も樹海の中をさまよって余計に水分が失われて喉が渇いたので、あの売店でジュースでも買おう。

中はこんな感じでずらっと、例のトラピスト修道会で作られているのだろうビールが並んでいた。

オランダやベルギーのスーパーではよく見る銘柄もあるが、中には見たこともない珍しいビールも並んでおり、ビール好きにはたまらない空間だろう。

 

ビールのほか、手作りジャムや石鹸、ポストカード、あと修道院なのでキャンドルをはじめとする宗教関連グッズなど、意外にバラエティに富んだ商品も置いてあり、思わず興味津々で眺めた。

 

ちなみに、こんなブログを書いておいてなんだが、筆者はビールをはじめアルコール類は体質的に一切飲めない。

けど、サイクリングは目的地がどこだろうと純粋に楽しい(キリッ

 

ちなみに、この修道院で製造されているビールはこれだ。

スーパーでは見た記憶がないので、少しレア度高めかも。

https://www.instagram.com/itsabrewtifulworld/ 「itsabrewtifulworld」Instagram公式ページより

 

エネルギーチャージし終わったら、今度は元来た道と別のルートで帰ろう。

次に目指すのは、もう一つの自然保護公園「Groot Malpieven」だ。

湖がある景色が見れて、先ほどとはまた違った風景が楽しめるらしい。

 

出発進行!

まずはオランダ定番の牛の光景。

再び森林地帯へと突入し、細長い自転車道を北上すること20分・・・

はい、着きましたGroot Malpieven。

湖面が反射してキラキラとまばゆく光っている。

その上空すぐのところで綿雲が優しい表情を浮かべていた。

倒れたまま放置された樹木ですら、この一帯の自然な風景の一部だ。

オランダって先進国でありながらなんて野性味溢れる国なんだろう。

 

ちなみにこの近くには、「Aqua Mundo Center Parcs De Kempervennen」というウォーターパークがあり(アスレチックや屋内スキー場、イベントフェス会場も!)、毎年夏には多くのお客さんで賑わうのだろうが、今年はどうなることやら。。。

https://www.instagram.com/kempervennen/ 「kempervennen」instagram公式ページより

 

またしばらく自転車を走らせていると、Valkenswaard(ファルケンスワールト)という町に差し掛かった。

写真で見ると分かりにくいが、広場の両側には銀行やら飲食店やらたくさんのお店が軒を連ね、一目見てこの町がそこまで田舎町ではないということがわかる。

おそらくある程度の規模感はあるのだろう。

 

ファルケンスワールトの市街地を抜けたところに、ファルケンスワールトとEindhovenを最短15分で結ぶ「Fietspad Oude Spoorbaan」が走っているので、南向いて自転車走らせるなら、この自転車道はぜひ利用したい。

 

 

そしてこの自転車道を抜ければ、もう自分が住む町Eindhovenだ。

最後の見どころは、アイントホーフェン ハイテクキャンパス。

ここは、フィリップスやシマノなど、世界的に有名な企業の研究機関が集積する特殊なエリアである。

https://www.instagram.com/hightechcampus/ 「hightechcampus」instagram公式ページより

 

そしてここはこんな感じで、部外者でも普通に敷地内に入ることができるようになっている。

あ、この建物は!

我々自転車乗りには超有名な企業、世界の「SHIMANO」である。

 

この建物の1階には一般人向けの展示コーナーがあり、子連れ等に定期的にイベントを行っているらしい。

※詳しくは「地球の歩き方、オランダ/アイントホーフェン特派員ブログ ベッカーズ 絢嘉さん」のこちらの記事を参照。

 

 

ハイテクキャンパスから自宅へと走る道中、オランダのこの季節ならではの光景がみれた。

野鳥たちの楽園。

こんな風に、別にそんな田舎に行かなくても、普通の民家近くの水のあるスペースには決まってグワグワ言いながら日向ぼっこする鳥たちがいる。

なんだか微笑ましい照れ

 

おや?

一人のご年配らしき人がベンチに腰掛けている。

オランダではよく見かける光景だ。

彼は森を見つめて、何を考えているんだろうか。

 

そんなことを考えていると、湿った空気が肌にまとわりつくのを感じた。

すぐそこまで忍び寄る雨の気配を感じた私は、昼間の太陽の勢いもすっかりなくなり、空が雲で覆われてやや肌寒い中、急ぎ家までラストスパートをかけた。

 

 

<ちょこっと情報館>

サイクリングルートには乗ってこないが、Eindhoven右斜め下あたりに「Heeze(ヘーゼ)」という田舎町がある。

この町にはヘーゼ城があり、城というよりはお屋敷の感じが否めないが、ここはとても静かで穏やかで、緑と光に満ちた美しい空間だった。

 

 

時の流れが止まったよう・・・

 

また、このあたりにも自然保護区的な場所があり、やはりアイントホーフェン以南の森林地帯はだいたいこんな感じの風景が広がっているのだろう。

 

 

これまでアイントホーフェンから東へ、西へ、北へと遠方に足を伸ばしてきたが、南は他の方角とは明らかに異なる風景が広がっていて面白かった。

 

本帰国前に、2年も住んで、もう十分知ったつもりでいた地元の良さを再発見できた気分がした。