「炎の画家」と呼ばれるゴッホ。
私が知ってる限り、彼の人生はそりゃもう規格外もいいところで、変人っぷりを表すエピソードを挙げだすと枚挙にいとまがない。
どの仕事も続かず転々としたり、
27歳という遅い画家デビューを飾ったり、
娼婦と恋仲になってしまった際には弟テオに説得されたり、
弟テオに依存しまくった挙句、彼に妻子ができたとき激しく嫉妬したり、
画家仲間で共同生活を送っていたゴーギャンとの交友関係の破綻がきっかけで自らの耳を切り落としたり、
精神病院に出たり入ったり、
ピストル自殺する直前の70日間、一日一作品という驚異のペースで絵を描き続けたり、
死後になって人気が出て注目され、その独特の色づかいから色覚異常だったんじゃないかとも語られたり、、、
そんな割とキクレイジーでキチガイじみた波乱万丈な人生を歩み続けた日本でもお馴染みのゴッホだが、意外にも彼のオランダ時代を知っている日本人は少ない。
「ひまわり」とか「アルルの跳ね橋」とかフランスで描いた絵のほうが有名なので仕方がないが。
そんな「炎の画家」ゆかりの地であるNuenen(ヌエネン/ニューネン)という田舎町は、筆者の住む南オランダのアイントホーフェン市に近いということで、せっかくなので、本帰国を迎える前に彼の足跡をたどってみようではないか。
調べてみるとどうやら「Van Gogh cycling route」という全長51kmのサイクリングルートが存在するらしい。
私は自転車に乗って早速、家の近くを流れるアイントホーフェンス運河を出発した。
なんていい天気なんだろう。
はじめに出迎えてくれたのは黄色のお花畑。
綺麗だなあ。。。
黄や赤の原色が、緑の中でしっかりと存在感をだしている。
早速、1つ目のスポット「Collse watermolen」に到着。
住所:Collseweg 47a, Nuenen
別の角度からも見てみよう。
ゴッホもこんな光に満ちた穏やかな場所だったら筆も進んだやろうなあ。。。
さて、ここからさらに、どこまでも広がる田園風景を横目にしてNuenenの中心目指して北上していこう。
お?
踏切を越えて少し進んだ所に、お花の直売所的な場所が。
私を見てと言わんばかりのカラフルでかわいらしい姿に思わずパシャ。
再びハンドルを握って漕ぎ出したかと思えば・・・
ありゃりゃ、行き止まりの標識が。
でもgoogle先生はこのまま進めと言っているので正直すぎて損するぐらいバカ正直者の私は進んでみると・・・
あ!2つ目「Van Gogh - Roosegaarde Cycle Path」が見えたっ!
住所:Eisenhowerlaan, Eindhoven
ここはゴッホの足跡を辿るサイクリングルートの中でも特におすすめだ。
昼間はいたって普通の道に見えるがが、日が暮れるとこんなに幻想的な光景が浮かび上がる。
https://pbs.twimg.com/media/B2bkdV7CYAAmxXl?format=jpg&name=mediumより
これは、ゴッホの「星月夜」をイメージして造られたらしい。
道に敷き詰められた蓄光できる特殊な石が、昼間の間に貯めた太陽の光で発光する仕掛けだ。
なんとしゃれててロマンチックな小道だこと。
2つ目にほど近い、3つ目のポイントは「De Watermolen van Opwetten」。
住所:Opwettenseweg 203, 5674 AC Nuenen
ここでも、一つ目のような小川のせせらぎの中で回転する水車の風景が見れる。
平和だなあ。
裏に回ると、建物自体は古く年季が入っており、当時の様子をそのまま今に伝えていた。
現在はレストランとして営業しているようだ(コロナ禍なので、事前予約者のみの営業だった)。
オランダでは道すがら、よくこんな角度のゴミ箱が見れるが、ゲーム感覚で走りながらゴミを放り込めていい。
ポイ捨ての多いヨーロッパで、むしろゴミをゴミ箱にちゃんと捨てたくさせるのが狙いか。
つくづく、理にかなった遊び心の多い国である。
そうこうしてるとNuenenの中心通りにさしかかってきた。
左側にはオランダでお馴染みのスーパー「アルバート・ハイン(AH)」が見えたかと思えば、その真反対には同じカラーで着色された家の窓枠が目に入った。
人様の家を写真におさめるのは気が引けたので、googleストリートビューから拝借
・・・そんなにAHに対抗せんでええんやで(いや、むしろビッグファンなのか)
街角に建てらたこの銅像もゴッホなんかな・・・?
さて、このサイクリングルートのメインスポットであるNuenenにある中央広場公園的なところに到着!
ここには有名な2体の銅像が立っているとのことだが、はてさてどこかな・・・あ、あった!!
5つ目は、「じゃがいもを食べる人々(Aardappeleters Beeld)」。
住所:Park 65, 5671 GC Nuenen
この作品ね。見たことがある人も多いはず。
もっと近づいてみよう。
じゃがいもだけじゃなくて、葉っぱも食べてはった・・・
昔の農村の食生活なんてもんは、こんなもんよな。
じゃがいもが主食。それも茹でただけの。
6つ目「Statue Vincent van Gogh」。
住所:Kloosterstraat, 5671 GA Nuenen
やっとご本人登場。
ぐぬぬ・・・逆光でお顔が見えませぬ・・・
とりあえず、お会いできて光栄です。
7つ目「Stichting Van Gogh Village Nuenen」。
住所:Berg 29, 5671 CA Nuenen
ここは観光案内所になっていて、普段は多くの観光客が訪れるのだろうが、残念ながらコロナで閉館中だった。
おそらくこの建物の中がちょっとしたミュージアムになっているはず。
それにしてもNuenenは他の町と比べて、街中に緑が多い感じがする。
町の中心でさえ、緑のトンネルで覆われているような。
そしてその美しい景色の中に佇む建物は全体的にレトロなものが多く、歴史伝統保存地区的な印象を受けた。
あと、個人的に気になったのはここ「Het Kostershuisje」。
住所:Berg 40, 5671 CC Nuenen
特に説明書きらしきものはなかったが、中はこうなっていた。
宿泊施設?ゴッホさんイケイケやんけ。
勝手に入ってよかったんやろうか・・・謎だ。
さて、8つ目は「Van Goghkerkje」という町の外れにあるミニサイズのかわいい教会。
住所:Papenvoort 2a, 5671 CR Nuenen
この小さく平和な町を象徴するかのように、この教会もまた小さく平和的な印象をたたえていた。
教会よりさらに進んだところには、公的施設だとは想像もつかないような外観のNuenen市役所があった。
さらに市役所の裏手には、こんな美しい池のある公園が広がっている。
プランにはなかったが、思わず寄り道してしまった。
遠くの橋の上を、先ほど教会前ですれ違った老夫婦がゆっくりと、手を繋いで散歩している姿が見えた。
私には程遠い未来・・・
気を取り直して前へ進もう。
加速しようとギアを一段あげた矢先、左手に見えたのが9つ目のスポット「Begemann Fabriek (The Begemann Factory)」。
住所:Berg 65, 5671 CB Nuenen
うっかり通り過ごすところだった。
で、ここはなんやねんというツッコミは無しでお願いします(調べ不足)
完全に町を抜け切ったところで、見えてきたのがこの風車。
「De Roosdonck, Nuenen」
住所:Gerwenseweg 2, 5674 SG Nuenen
アイントホーフェン周辺には、オランダらしく風車の回る風景なんてないものだと思っていたので少し感動。
青い空には風車が映えますなあ。
※ちなみに、ゴッホサイクリングルートからは少し外れるが、リースハウト(Lieshout)という町の外れにも「Vogelenzang」という風車があるので、体力が余っていたらぜひそちらにも足をお運びください。
風車の手前をカーブを描くように道なりに進むと、10番目が見えてきた。
ん?家?
住所:5674 SE Nuenen
もちろん、ただの家ではない。
これは、先ほどの「じゃがいもを食べる人々」のモデルになった家「The Potato Eaters (Groot Family cottage)」で、ゴッホはまさしくこのお宅で絵を描いたらしい。
まだ住んでいる人がいるのかな?
そろそろ終盤にさしかかってきた。
Nuenenの北に、Gerwen(ゲルウェン)という町があり、11番目のスポットがあるらしい。
町を通りかかると、よほどアジア人が珍しいのか、昼間から酒を飲んで上機嫌なおっさんらが「ハロ!ハロ!」と続けざまに声をかけてくる。
これがある程度都市部なら「ニーハオ」になるので、ここはよほど田舎とみた。
オランダはかなり白人社会が崩壊しているが、田舎町はまだまだジモッティのコミュニティが強い。
そんなことを考えながら軽快に自転車を走らせていると「Sint Clemenskerk, Gerwen」が見えてきた。
住所:5674 RC Gerwen
先ほどのNuenenの教会と比べて、こちらのは町の大きさに如何せん不釣り合いなぐらい大きく感じる。
さあ、あとはひたすら森林の中を走る自転車道を北上し、
ウィルへルミナ運河(Wilhelmina Kanaal)に突き当たれば運河沿いを西へ一直線に走るのみ!
運河では空気で膨らました簡易ボートでゆったりする人々や、犬の散歩をする人、川沿いでテントをはってキャンプをする人、隊列を組んで颯爽と走り抜けていくロードバイカーたちをよく見かけた。
そんな安らぎの時間が流れる運河沿いの見所といえば、やはり運河を往来する運搬船と運搬船を通すための跳ね橋である。
見よ、この堂々たる姿。
遠くから眺めると牧歌的な風景に溶け込んでこじんまりしてるのにね。
左手に広がる田園地帯には、草を食む牛や馬たちの姿も時折見かける。
さて、この旅最後の見どころ「Hefbrug Son」。
住所:Kanaalstraat 5691, 5691 NC Son
ここにかかる橋は跳ね橋タイプではなく、もう一段階画期的だ。
こうやって路面全体が昇降するのだから。
おお〜
珍しくもなんともないジモッティたちが橋の信号待ちをする中で、私一人だけワクワクしていたがな。
一回通行止になると、再び元の通行可能状態まで戻るのに時間がかかるため、気がつけば周りは多くの通行待ちの人々や車でごった返していた。
当然、通行可能のサインであるバーが上に開いた瞬間、周囲が皆、勢いよく向こう岸目掛けて駆けていく。
そんな慌ただしい往来の中で私一人、ゆっくり橋を渡った。
小型船舶を所有し、穏やかな川沿いにたつ日当たりの良さそうなマンションに暮らす。
これもまた、遠い(というか一生訪れなさそうな)未来・・・
時計を見たらもう5時半を回っている。
いけない。帰って夕食の支度をしなければ。
青空と緑とゴッホの世界に浸かったいいサイクリングだった。
私は再びペダルに足を乗せ、自分が暮らすアイントホーフェンへと戻った。
★ゴッホサイクリングルートマップはこちら(9ページ目)を参照♩
見ていただいたらわかるのだが、「ゴッホのサイクリングルート」なるものは、今ご紹介してきたNuenen周辺だけではなく、なんとデンボスやティルブルク、果てはブレダまでが射程範囲の広大なサイクリングルートである。
もはやノードブラバント州を全制覇する勢いで紹介されているので、完全走破したい方はくれぐれも計画的に!(なんか消費者金融のCMみたい・・・)