アベンジャーズ／エンドゲーム

原題：Avengers: Endgame
監督：アンソニー・ルッソ／ジョー・ルッソ
ｷｬｽﾄ：ロバート・ダウニー・Jr／クリス・エヴァンス／マーク・ラファロ
配給：ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ
公開：2019年4月
時間：181分

【くた★むび】について

上映が終わって場内が明るくなっても，しばらく席を立てなかった。それは，充実感と寂しさと楽しさと哀しさの入り交じった，何とも言えない感情。ちょうど平成から令和へと移り変わる節目に，抗いようのない分岐を味わわされたのだ。それは“卒業”を見送る気持ちに似ているかもしれない。

11年前，最初に『アイアンマン』を観た時の感動と衝撃は今でも覚えている。単なる“ヒーローもの”の枠を超えたストーリーと映像の迫力や世界観はMCU作品への興味を膨らませ，次々と新作で現れるキャラの内面と物語に中毒化させられていった。緻密な設定と，人間の持つ様々な面を極端なほどに個性として植えつけられたヒーローたちは，アベンジャーズとしてまとまることで，さらに数十倍のパワーと感動を体現してくれたのだ。

同時に，誰もが持つ“ヒーローは永遠でハッピーエンド”という公式を，敢えて否定し“永遠なものなんかない”と教えてくれたのもこのシリーズ。特に『インフィニティ・ウォー』からこの『エンドゲーム』への流れは，唖然とするほどの喪失感まで描かれる。しかしそれさえもきちんと咀嚼しながら「お疲れ様」と言えるのは，これまでの作品で期待以上に魅了してくれたヒーローたちの姿を，しっかりと見届けてこられたからだと思う。

６つのインフィニティ・ストーン全てを手に入れた最強最悪の敵サノスによって残されたのが最初の『アベンジャーズ』の面々だったというのも，必然だと受け入れさせ，彼らの変化と最後の闘いを，１カットさえ見逃さないという想いで，３時間ずっと集中させてくれるのだから，やはりアベンジャーズは最高。この作品では，過去作からほぼ全てのキャストが総出演している。

監督は『インフィニティ・ウォー』に引き続き，ルッソ兄弟。個人的にはぜひ，MCU作品21作を全部見てから，この作品にどっぷり入ってほしい。歴史と進化とともに，過去シーンからの出典や人物が判ることで，面白味がさらに増すはず。

アベンジャーズのメンバーを含む全宇宙の生命は，最強を超える敵“サノス（ジョシュ・ブローリン）”によって半分が消し去られる。大切な家族や友人を目の前で失い，絶望とともに地球にとり残された35億の人々。一方，宇宙をあてもなく彷徨うアイアンマン（ロバート・ダウニー・Jr）とネビュラ（カレン・ギラン）は，ニック・フューリー（サミュエル・L・ジャクソン／吹替：竹中直人）が消失する直前に発信した救難信号によって駆けつけたキャプテン・マーベル（ブリー・ラーソン）によって，何とか救助される。やがて，地球での壮絶な戦いから生き残ったキャプテン・アメリカ（クリス・エヴァンス），ブラック・ウィドウ（スカーレット・ヨハンソン／吹替：米倉涼子），ハルク（マーク・ラファロ）と共に善後策を練るが，地球の受けた傷と喪失はあまりにも深かった。

５年後，量子の世界から抜け出すことに成功し，ようやく合流を果たしたアントマン（ポール・ラッド）の登場を契機に，再び集結したヒーローたちは，失った者たちを取り戻す方法を探り始める。ホークアイ（ジェレミー・レナー）やソー（クリス・ヘムズワース）を加え，残された人々と今ここにいない仲間たちのために，最強チーム“アベンジャーズ”の名にかけ，彼らは最後にして史上最大の逆襲《アベンジ》に挑むのだったが…。

書き尽くせないし，ネタバレしたくない展開の妙味と深さとスピード。とにかく観て感涙して，キャラに感謝してほしい。そして，『アベンジャーズ』が終わっても，その思いを受け継ぐヒーローたちを，見守り，応援していきたい。

MCU作品の次作として，フェイズ３の最後を飾る『スパイダーマン／ファー・フロム・ホーム』の日本公開が，世界最速となる来月28日に決定した。