p・rhyth・m~映画を語る~

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原題:Disclosure Day
監督:スティーヴン・スピルバーグ
キャスト:エミリー・ブラント/ジョシュ・オコナー/コリン・ファース
配給:ユニバーサル・ピクチャーズ/東宝東和
公開:2026年10月
時間:145分




全米から4ヶ月遅れで日本に到着した『フェイブルマンズ』から3年ぶりとなるスピルバーグ監督新作。そのタイトルは『ディスクロージャー・デイ』。直訳すると「開示の日,情報公開の日」を意味するこの言葉。開示され描かれるテーマは「もし地球外生命体(エイリアン)の存在や政府の隠蔽・情報統制に関する真実が,ついに全人類に開示(ディスクロージャー)されたら何が起きるのか?」という,『未知との遭遇』『E.T.』などで地球外生命体と人間との関係性をSF的アプローチで映像化してきたスピルバーグ監督の思いの詰まった作品として話題を集めている1本だ。脚本はデヴィッド・コープ,音楽はジョン・ウィリアムズ。スピルバーグ監督と共に時代を築いてきた名匠たちが揃う。

2026年,世界は第三次世界大戦の瀬戸際に立たされていた。サイバーセキュリティ専門家のダニエル(ジョシュ・オコナー)は,アメリカ政府の秘密組織であるウォーデックス社(Wardex Corporation)から,地球外生命体の技術と,“アーカイブ”と呼ばれるロズウェル事件まで遡る人類と異星人との接触に関する様々な証拠を詳細に記したファイルを盗み出していた。事態に気づいたウォーデックス社のCEOスキャンロン(コリン・ファース)に追い詰められたダニエルは,その地球外デバイスを武器に彼を威嚇して逃走し,恋人のジェーン(イヴ・ヒューソン)と共に,彼女がかつて身を置いていた修道院へと身を隠す。

同じ頃,カンザスシティでNBCテレビの気象予報士マーガレット(エミリー・ブラント)が仕事の準備をしていると,1羽の野鳥(カーディナル)が家に飛び込んでくる。この出来事をきっかけに,彼女は他人の思考を直感的に読み取ったり,学んだことのない言語を話したりするように。そして,生放送の天気予報中,彼女は突然,未知の言語を話し始め,それは瞬く間に拡散される。それを見た途端に,地球外の言語として内容を理解してしまうダニエル。やがて,そんな2人は出会い,地球外生命体に関する事実を公表しようと奔走することになるのだったが…。

「いったい何を見せられてしまったんだろう」と終演後に唖然として席を動けないでいると,劇場を去る“映画通”を気取った20代男性数人の声が響く。「壮大なB級映画だったな」と。「“壮大な”って形容詞が付いたらソレはB級じゃないやろ!」ってツッコミの言葉を飲み込む。

何を期待するかによって,大きく評価の分かれる作品かもしれない。単純にエイリアンものやアクション作品なら,野心ある若手監督に撮らせたらきっとインパクトに溢れ,アドレナリン噴出のストレス発散ものを提供してくれることだろう。でも,半世紀に渡って映画界を牽引してきたスピルバーグ監督だからこそ作品化できた映画的アイディアの結実と,キャリアの集大成としての要素が,とんでもなく高度に凝縮された最高傑作だと思える。

脚本・音楽との堅固なタッグによって描き出される,世界情勢と知る権利の天秤。それを巡る立場や宗教観にまで踏み込む解釈と展開。国際紛争の止まぬ世界ではあるが,“神”という絶対的な存在を信仰することで倫理観を維持している現代社会。しかし,そこに“神”をも超えるような存在が現れたとしたら,人類は,世界は,何を拠り所にすればよいのか?

一応“娯楽大作”という形を成しているが,これはスピルバーグ監督の芸術とメッセージ性を押し出した作品。この広い宇宙だから,地球外生命体だって存在していても全く不思議じゃないし,エクスペリエンサーだって隣に居るかもしれない。その時にどう向き合えるのか? スピルバーグ監督による問いかけは,映画を愛し,映画を通して様々な世界を経験してきた私たちに究極の覚悟を疑似体験させる。この作品をSFってひと言で終わらせるには,現在の世界情勢は緊迫しているし,宇宙は永遠なほどの未知に満ちているのだから。


映画クタ評:★★★★★


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■地上波OA情報■

10/9㈮ 21:00~ 日テレ系列
『インサイド・ヘッド』(2015年)

10/10㈯ 21:00~ フジ系列
『室井慎次 生き続ける者』(2024年)

10/16㈮ 21:00~ 日テレ系列
『インサイド・ヘッド2』(2024年)

10/23㈮ 21:00~ 日テレ系列
『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)

10/30㈮ 21:00~ 日テレ系列
『ゴジラ−1.0』(2023年)




監督:久野遥子/山下敦弘
キャスト:森山未來/五藤希愛/青木崇高
配給:TOHO NEXT
公開:2024年7月
時間:94分




今夜紹介するのは,いましろたかしの漫画を,アニメのみならずイラストレーター,漫画家などマルチに活躍する気鋭のクリエイター久野遥子と,『1秒先の彼』『カラオケ行こ!』の山下敦弘が共同で監督を務めアニメ映画化した日仏合作のファミリー・ファンタジー『化け猫あんずちゃん』。声の出演をする俳優が演技する実写映像をガイドに動きや表情を抽出してアニメーションにする“ロトスコープ手法”が採用されおり,セリフも撮影時に収録された音声がそのまま使用されている。カンヌ国際映画祭では監督週間正式上映作品に,また,アヌシー国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門ノミネートを果たした1本だ。

雷の鳴る豪雨の中,南伊豆・池照町の一角にある草成寺の住職(鈴木慶一)は段ボールの中で鳴いている子猫を見つける。その子猫は“あんず”と名付けられ,大切に育てられた。ところがおかしなことに10年経っても20年経っても,あんずは死ななかった。そして30年経った頃,どうしたことか人間の言葉を話し,人間のように暮らす“化け猫”になっていたのだ。現在37歳のあんず(森山未來)の仕事は按摩のアルバイトで,移動手段は原付。飼い主であるおしょーさんの養子となり,寺の仕事を気まぐれにこなしつつ普通に町の人々に溶け込み,日常生活を送っていた。

ある日,親子ゲンカの末,長い間行方知れずだったおしょーさんの息子・哲也(青木崇高)が11歳の娘かりん(五藤希愛)を連れて帰ってくる。だが,再びおしょーさんとケンカをして,かりんを置いて去ってしまう。哲也が別れ際に言った「母さんの命日に戻ってくるから」という言葉を信じて待ち続けるかりんだったが,哲也は一向に帰って来ない。母親の墓に手を合わせたいというささやかな望みさえ叶わないかりんは,あんずに「母さんに会わせて」と懇願。このたった1つの願いから,地獄までをも巻き込んだ土俵際の逃走劇が始まることになるのだったが…。

知らないと見逃してしまいがちだが,“ロトスコープ手法”により生まれる妙に生々しいキャラクターのしぐさや空気感。実写とアニメの中間のような不思議な感触が全編を包み込む。どこか気だるげでテキトーで,ドライだけど憎めないあんずちゃんの絶妙なキャラもクセになる。

そこに,田舎だからこそ,日本だからこそありかもなキャラが続々登場。丁寧な美術で描かれたリアルな風景と,カエルちゃんたち妖怪や,地獄展開までも,気がつくと自然に溶け合って,心地よさで満たしてくれるファンタジックでエモーショナルな秀作だ。


映画クタ評:★★★★☆


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原題:Wicked: For Good
監督:ジョン・M・チュウ
キャスト:シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ/ジョナサン・ベイリー
配給:ユニバーサル・ピクチャーズ/東宝東和
公開:2026年3月
時間:137分




今夜紹介するのは,大ヒット・ブロードウェイ・ミュージカルを映画化し世界的に社会現象まで巻き起こした前編『ウィキッド/ふたりの魔女』の続編・完結編となる『ウィキッド/永遠の約束』。監督は引き続きジョン・M・チュウ。

『Wicked』ってタイトルの深さに感嘆させられた前編。本来「邪悪な,意地悪な」の意味で,「西の悪い魔女(Wicked Witch of the West)」に由来するこのタイトルは,“悪い”と決めつけたものの中の“善”を,そして“善い”とされるものに隠れる“悪”をあぶり出し,肌の色や種による偏見までをも投げかける。

そしてこの後半の副題は劇中歌のタイトルでもある『For Good』。「きっぱりと,永久に,二度と元には戻らないほど完全に」という意味と,「良い方向へ(より善い変化)」というダブルミーニングを持つこの言葉を,邦題では「永遠の約束」としている。作品のテーマである“Wicked(悪)”と“Good(善)”の意味合いがすべて絶妙にブレンドされた,端的なのにとても多重的で美しいタイトルだ。

魔法と幻想の国オズ。その隠された真実を知り,オズの魔法使い(ジェフ・ゴールドブラム)に逆らい,友情を築いてきたグリンダ(アリアナ・グランデ)と袂を分かつ道を選んだエルファバ(シンシア・エリヴォ/吹替:高畑充希)。そうして,“悪い魔女”として悪名を着せられ民衆の敵となるが,言葉を奪われた動物たちの自由のための戦いを続けるエルファバ。一方,“善い魔女”となったグリンダは希望の象徴として名声と人気を得るが,エルファバとの決別が彼女の心に暗い影を落としていた。和解しようとするが,2人の溝は一層深まっていく。さらに,突如現れた“カンザスから来た少女”によって,オズの国は大きく揺れ動く。世界の雲行きが怪しくなる中,エルファバとグリンダは自分たち自身と世界を永遠に変えるため,再び向き合うことになるのだったが…。

“カンザスから来た少女”とはモリブル(ミシェル・ヨー)が引き起こした竜巻によって,愛犬のトトと一緒に家ごとオズの国に運ばれて来た少女ドロシー・ゲイル(ベサニー・ヴィーヴァー)。ご存知の通りオリジナル『オズの魔法使い』の主人公だ。もちろんこの『ウィキッド』では,グリンダとエルファバに焦点が当たるよう,極力顔は隠されている。

ちなみに『Wicked』の言葉は,日常英語では「(スゴい意味での)やばい,最高!」というポジティブな意味で使われることもある。友情と切なさと完成された脚本を,さらに多層的なニュアンスで広げ,見る者の心に沁みてくる秀作。

ただ,前作でも言ったようにこの作品,ミュージカルじゃなきゃダメだったのだろうか? 純粋に物語として見てみたかったと,個人的にはやはり思ってしまった。


映画クタ評:★★★★☆


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◆シリーズ一覧◆

『ウィキッド/ふたりの魔女』(2025年)