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英題:Our Little Sister
監督:是枝裕和
キャスト:綾瀬はるか/長澤まさみ/夏帆
配給:東宝/ギャガ
公開:2015年6月
時間:126分




4日に発表された日本アカデミー賞で堂々の4冠。国内外を問わず高評価を受けた作品だが,どうも信用できなかったり,是枝作品って重いんじゃ?っていう先入観から,1月に入手したソフトをようやく見たのは2月中旬。でもその日以来,個人的にはこの受賞を確信していた作品。

原作は人気少女漫画家・吉田秋生の同名コミックス。漫画を読んだ是枝監督が映画化を希望し,自ら脚本も書いた。この監督,これまで12本の作品を世に出しているが,脚本を自分で書かなかったのはデビュー作の『幻の光』(1995年・シネカノン)だけだったりする。

鎌倉の古い家に暮らす幸(綾瀬はるか),佳乃(長澤まさみ),千佳(夏帆)の香田三姉妹。父は不倫の末に15年前に家を出て行き,その後,母・都(大竹しのぶ)も再婚してしまい,今この家に住むのは3人だけ。ある日,その父の訃報が3人のもとに届く。父の不倫相手も既に他界しており,今は3人目の結婚相手と山形で暮らしていた。葬儀に参加した三姉妹は,そこで腹違いの妹すず(広瀬すず)と出会う。父が亡くなった今,中学生のすずにとって山形で身寄りと呼べるのは血のつながりのない義母だけ。気丈に振る舞うすずだったが,肩身の狭い思いをしているのははた目にも明らか。すずの今後を心配した幸は,別れ際に「鎌倉で一緒に暮らさない?」と提案する。

こうして鎌倉へとやって来たすずだったが,最初は自分の母が幸たちの父を奪ったことへの負い目を拭えずにいた。それでも,異母姉たちと毎日の食卓を囲み,日常を重ねていく中で,少しずつ凝り固まった心が解きほぐされていく。また,入部した地元のサッカーチームでも仲間に恵まれ,中学生らしい元気さも取り戻していく…。

以前『万能鑑定士Q』の紹介で「綾瀬はるかは,どんな役柄を演じても“綾瀬はるか”にしか見えない」と書いた。認知度はあるのに,見る者に役柄として入ってこない女優だった。それが,この作品で「抜け出した!」と感じさせた。この映画の中に居る綾瀬はるかは“香田幸”で,見ているうちに,すずまで含めた4姉妹の顔立ちさえ似ていると思えてくる。血縁のない女優たちが,血縁のあるリアルさを匂わせる。それぞれに異なるキャラなのに,繋がっている物語が描かれる。女優としての成長が,穏やかなストーリーの中で精神的に成長する幸の姿を鮮やかに映し出していく。

決して派手な演出や大きな事件もあるわけではないのに,2時間まったく飽きさせないのは,4姉妹それぞれの抱える“特別でない”悩みと,4姉妹だからこそできるその昇華が,鎌倉の四季折々の美しい風景とともに綴られ,見る者の心に沁みてくるからだ。これが1クールのホーム・ドラマだと,きっと飽きてしまう。映画だからこそ伝わる雰囲気がある。『そして父になる』(2013年・ギャガ)とは,ひと味違う是枝監督の世界観に改めて感服した。

共演は他に,加瀬亮,鈴木亮平,樹木希林,リリー・フランキー,風吹ジュン,堤真一,など。


映画クタ評:★★★★★


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