さてさて、ようやく吉永さんの最新作を見てきた。公開からすでに1ヶ月以上が経過しているが、なんとか間に合った。
感想はというと、ふーむ・・・。ま、私にとっては、吉永さんの最新作をスクリーンで見ましたと言うことで、それだけで満足するべきもの。あとはぐちぐち、作品そのものの感想(と言うか、もやもや)を書いておこう・・・。
普段映画は、もっぱら動画か、DVD。最近の映画がどれだけヒットしようと、話題になろうと、ほぼ興味がなくなった私は、見る映画も昔のものばかり。昔って言っても、20、30年どころじゃない、それこそ数十年前の映画を当たり前のように楽しんで何度も見る。自分が生まれてもいなかった時代の映画を当たり前のように見る。懐古趣味に近いものもあるだろう。映画館は好きだが、最近の映画を見るためにわざわざ行かない。もはや映画は、庶民の娯楽の域を出ようとしているかに思える。名画座のように2本立て1000円ちょっとで見れるならともかく、1本の映画も今や2000円以上払う必要あり。そんな高いお金払ってみるべき映画があるのだろうか・・・。昔の映画が大スクリーンで見れるなら別だが。
それが、なぜ映画館まで見に行ったかというと吉永さんが出ていらっしゃるということが、まずひとつ。私も、やっぱりこの唯一無二の国民的大スターが、好きなんですな・・・。
アイドル的人気を博して、日活の看板女優として歌手としても大活躍されて、映画スターとして毎年十数本もの映画に出ておられた映画黄金期の時代ならともかく、中年を過ぎて初老を過ぎてそして老年期を迎えても(吉永さんにこんな一般庶民と同じ年齢の区分は失礼だが)、1、2年に1本の割合で主演映画が公開されていることは、はっきり言って、他に例を見ない。
重ね重ね、吉永さんに年齢のことを言うのは似つかわしくないが、とにかくこれだけの長きにわたって、主演映画に出続けていらっしゃる女優さんなど、日本には他にいないのだ。
本作が記念すべき124本目という、驚異の数字を持つ方の最新映画。
私は、そのうちのせいぜい40本ぐらいしか見ていないが、ここ2、30年の映画はほぼ観ている。
あとは、佐藤浩市さんの芝居が見たいから。しかもこのお二方が夫婦役ってのも初めてだし興味深い。私が1年?いや2年ぶりに映画館に足を運んだのは、この二つの理由だけだな・・・。
でも、正直出かけてスクリーンで見るべき作品の出来だったろうか(笑)。DVDで十分よかったかもなと言うのが正直な感想。
C Gとかを多用していないのはいいが、なんかその、期待していた感動ってのがあんまり得られないまま。文部省選定映画って最後にクレジットで流れていたけど、老若男女楽しめる映画って、ここまで当たり障りなく、優等生的で冒険ができないもんなのかしら。ま、あと付けだし、文部省は別に関係ないけどさ。見終わった後の震える程の感動を期待した私が間違っていたと思うが、昔から私が映画館に映画を観にいくのは、それなりの感動を得るためだから。ただの暇つぶしで行ったことはほぼない。家で見る映画は暇つぶしの時も多々あるが(笑)。
余談だが、吉永さんの最近作で映画館で深く感動したのは、2019年の天海さんとのダブル主演の映画だったなー。タイトルが長くて忘れたけど(笑)。
ああいう突拍子もない設定の役柄の方が、吉永さんも天海さんもイキイキしている。主人公が余命宣告されると言う点で本作も共通する。
今作では、天海さんはあくまで助演なのであんまり美味しい役でもなかったが、天海さんのあの芝居でないと吉永さんとの長年の強い絆は出せなかっただろうと思う。あれだけ美しい方だけど、シーンによってかなり濁声になったり、声色を使い分けて、やっぱりうまいし、とにかく存在感があるのよね・・・。
佐藤さんもあくまで助演なのだが、もっとこの夫婦関係に焦点を絞ってもよかったのかなーとは思う。こんな物分かりのいいと言ったら失礼だが、優しくていつも協力的で優等生な旦那さん、いないね・・・。ま、奥さんの田部井さんが素晴らしいから、その旦那さんも素晴らしいのだろうが、なんか見ていてホッとする夫婦関係を描いていたのでもっとその関係性を突き詰めて欲しかったかなーなんて思う。
欲を言えば、、佐藤さんのすごすぎる才能がそこまで発揮されていなかったと思うのは私だけだろうか。ただそこにいるだけで滲み出る存在感があるのに。
10数年前に、やはり映画館で見た「草原の椅子」の佐藤さんのただそこにいるだけで、言葉を多く発せずとも滲み出る存在感に圧倒されたのだった。やはり、感動したことはいつまでも覚えているのだ。
何かが足りないというより、そもそも大味な映画。なんか、力加減が間違っているところがあり、なんかバランスが取れてないというか。いやバランスなんてどうでもいいのかもしれないが、なんかまとまりが欠けていると言うか。一貫して貫き通された人間ドラマがないというか。
うーん、そりゃ、吉永さんのスター映画を作ろうという意図は監督にはなかったのだろうから、吉永さんの出番が少なくても仕方ないのだが、それにしても若手の方の演技が皆退屈。感覚的には半分以上が若手の方に任せられている感じがする。脇が上手くないと、いや若手ならそこまで上手くなくとも、ある程度はよくないと、映画は死ぬのだ・・・。
それはともかく、いつもそうだが吉永さんはとにかく若々しすぎる。他の作品で老け役とかもやっている方だが、それでも美しいものは美しい。この映画でも、ほぼノーメイク的な感じで、眉も描いていないような入院中にベッドで横たわるアップのシーンも出てくるが、とにかくいつも美しい。顔立ちが美しい人、そして生き方が美しい人は、とにかくいつも美しいのだ。というか、サユリストはそれを知って絶対に観に行っていると思うので、いちいち賛美する必要もないのだが。
伝記映画ってのは、大体が退屈なのだが、本作も半生を描くと言う点ではざっくり言うと伝記もの。そこに東日本大震災で心に傷を負った人のエピソードも入れている。が、盛り込み過ぎている。
このシーン、このやりとり、そもそもいるだろうか?っていうシーンがたくさんあった。90分ぐらいでまとめていいのではないだろうかって思ってしまう。いちいちあの時のあの一言で、前に見たシーンを挿入しなくてもわかる。テレビならともかく、映画はテレビよりも集中して見ているし、CMもないのだから、いちいちご丁寧なことをしなくても、前に見たシーンやセリフは客は覚えているのだ。
盛り込み過ぎて、でも肝心なことを描くシーンが足りなくて、結局焦点があってないという感じは私はした。この映画、心底、何を言いたかったのだろうと考えてしまう。いや、そりゃ夢を追うことの大切さとか、ひとつのことに夢中になって、長年険しい道を歩んでいくことの困難さと素晴らしさ、美しさとか、女性の権利もまだまだ確保されていなかった時代に差別差別で苦しみながら、女性だけの登山隊を組んで不可能なことに真っ向から取り組んでいたとか、登山仲間が離れて行ってしまい、心に大きな傷を抱えたまま懸命に生きてきたうちに秘めた辛さとか、そりゃ、テーマはわかるし、言いたいことは全くわからないとは言わない。
でも今一つ、その熱意がスクリーンから伝わってこない。熱い何かが、手に汗握るものが伝わってこない。登山と言うものに取り組んだことがない人をも夢中にさせるものは別にない。ま、登山の素晴らしさを訴えるための映画ではないと思うがそれにしても大味で、なんだか2時間が長かった。特に最初の30、40分の描き方は現在と過去を行き来して退屈だ。スクリーンという大迫力の画面を目の前にして、今一つのめり込めなかった。
こんなにもロマンのあるタイトルがついているのに「てっぺんの向こうにあなたがいる」の、大切な「あなた」が、今ひとつよく見えてこない。そりゃ、長年連れ添った旦那さんであり、支えてきてくれた家族そのものであったり、登山仲間だったり、親友だったりそりゃ色んな大切な人などを指しているのだろうが、そのドラマチックなものが伝わってこなかったな・・・。