デ・ニーロとトラボルタ共演。まずそれだけで、私のようなオールドファンは食いつく。しかも初共演。
そういうわけで、内容を全く調べておらず、タイトルからして派手な殺戮系B 級アクションものかなと思っていた。この二大スターが出ているから見るのであって、そうじゃなかったら、おそらく見向きもしないようなジャンルの映画だった。
トラボルタの最近の映画はほとんど見ていなかったが、デニーロ映画は2010年代の映画もよく見ていた私は、何よりもあのデニーロが出てるしということでDVDを手に取り、こんな重い題材の映画だったかと面食らった。
結論、この映画、私は手放しで褒めたい・・・。
1992年勃発のボスニア紛争のことが扱われた映画だとは。民族浄化という名のもと当然のことながら、女性子供も含む民間人が犠牲になり、虐殺も起こった。アメリカとNATOも介入、結局20万人も犠牲者が出て、第二次世界大戦後でヨーロッパ史上最悪の戦争と言われているが、実際にどういった戦争だったのか全然知らなかった。映画でこの戦争を題材にしているということもあまりないのではないだろうか。それを映画ならではの息つく間もない展開と、2大スター共演の人間ドラマで見せてくれる。派手なアクションシーンもあるし、不死身の二人の戦いというか、互いに拷問しあったり、まさしく目には目を歯には歯の血まみれの戦い。基本的には戦争の悍ましさと人間の浅はかさというものを、めちゃくちゃ真っ向から扱っている。この映画は決してB級ではない。すごい真面目な映画なのだ。一つ一つのセリフがとにかく重いし、地獄の戦争を体験してしまった二人の男の贖罪、背負っているものの重さ、そしてこれからも消えない罪の重さがのしかかってくる。
戦争という名の人殺し。なぜこんな馬鹿げたことを・・・ということを人類は飽きもせず繰り返してきたのだなと見終わった後改めて考えさせられる。そりゃそれぞれに大義名分が掲げられるものの、劇中のセリフにあるように、「結局1000年遡ったって紛争の原因なんてわかりゃしない」のが戦争。なんとかして戦争を始めるときには正当な理由で言いくるめようとするが、人殺しに正義なんてあるわけないのだ。虐殺を指導した幹部を殺せば終わるなんて生やさしいものではない。
「俺たちは人殺しだ。同類だ」の、これも劇中の終盤で出てくるセリフだが、改めて戦争の生々しく、悍ましい面を見せつける。
グロテスクなシーンとか、拷問シーン、戦争の生々しさを語る残酷なセリフも多数あるがそれは全て必要なシーンである。
この1ヶ月ほど、昔の映画を20本ぐらい見ていたが、実のところ、あまり心奪われる作品もなくただ本数をこなすだけで退屈していただけに、本作は、個人的に100本に1本の確率でしか出会えない、特別な一本に入れる。こんなすごい骨太な映画、爆発的にヒットしなかったのは今のご時世致し方ないけど、なんらかの賞か何かをもらってもいいと思うが・・・。
最近のアクションものによくある派手なCGとかにも頼らず、アパラチア山脈という、大自然の中を舞台に、まさに生きながら伝説の2大スターが出ずっぱりで己の肉体一つで渡り合うっていうのがなんとも素晴らしい。せっかくの共演何だからもうこの二人だけを見つめていられれば良いのだ。脚本も無駄がなく、本当に素晴らしい構成だ。
だが、この雄大なる大自然を背景として、理由はどうあれ、二人の男が互いに傷つけ、傷つけられ、殺戮しあおうとしているというのがなんとも不釣り合いでやはり悍ましい。
戦争が残した爪痕は永遠に消えない。そして戦争という地獄の場に遭遇した人間にとって、戦争が終わりということはない。一人は、その事実を忘れまいと生きてきた。もう一人は、あまりの痛みに耐えきれず、忘れられるわけもないのに、無理に過去のこととして今を生きようとしてきた。対照的な生き方の二人が出会ってしまい、戦いの火蓋が切られる・・・。
あまりにも重いものを背負った男二人、戦友として再会したのには深い訳があった。やがてたった二人だけの戦争=殺し合いが始まっていく・・・。
正直あーもうだめか!、あー、そうかやっぱりそうだよなと思ったらまさかのどんでん返しがあったりして最強に見せ方がうまい。ようやくあーついに終わりかって思ってもまだ二人は不死身、え、まだあれで生きてるのか・・・って思うシーンが数回あった。この二人、百戦錬磨の元兵士と元軍人、そう簡単にはくたばらない、死ななないんだと思ったり。なんせ極限状態で生き延びる術を知っているから。まるで若者レベルの体力の持ち主というか、不死身。
最後まで、めちゃくちゃハラハラドキドキさせて、心臓に悪かったぐらい。目を背けたくなるような過激で生々しいシーンも多いが、何もかも、めちゃくちゃ上手く演出されていてあーこういう映画見たかったんだよなって思った。
デニーロもトラボルタも、貫禄といい、やっぱりすごいわってつくづく思う。存在感が違う。デニーロの芝居は昔も今も大好きが、トラボルタのことは若いアイドルスター的な頃と、『パルプ・フィクション』しか知らず、今はこういう重厚な芝居をするスターってことを知らなかった。こりゃ、また作品を一つ一つ集めて追っかけないとダメだ。
テーマがテーマなだけに、そしてあまりにも激渋なスターが主役故に、今時の若い人は見る機会がまずなさそうな映画だが、見た方がいいと心から言いたい。確かに、映像はもとより、セリフもまあまあ過激なものがあるのだが、それもこれも戦争というものの残酷な側面を捉えるための過激さであると思った。
これ、上半期No.1だな。すでに2回鑑賞。
デニーロファンとして言わせて貰えば、やはりデニーロが主役級で出る映画はやっぱりすごいのだ。この数年ですでに50本ぐらいデニーロの映画を見てきたが、ほんの脇役で出ている映画は別にして、やっぱりこのスターの存在感は半端じゃないものがある。正直、伝説の名優デニーロの無駄遣いじゃないかっていう映画もあるにはあった(笑)。