【400文字作文】下半身は地球を救う。 -9ページ目

【400文字作文】よこ顔

【400文字作文】下半身は地球を救う。-090511


 あらお父さん、箱庭みたい、可愛らしい。
と、妻は三人の子供達から送られてきたケー
キをテーブルにそっと置き、微笑んだ。
 妻は、ずれてしまったケーキの飾り付けを
指先で楽しそうに直した。その時の妻の表情
は、子供達が小さかった頃、くち元についた
汚れ拭うときと同じ顔をしていた。
 母の日に、子供達から手作りのケーキが届
くようになって三、四年になる。上の子が金
を出し、まん中の子が準備をし、いちばん下
の子がケーキをデコレーションしていると聞
いたとき、私は笑ってしまった。
 妻は子供達へ手紙を書くのだと、まだケー
キを食べてもいないのに便箋を出してきた。
 何かを、書いては破る妻に私は、電話でい
いじゃないか、と言ったが妻は、ゆっくり伝
えたいの、と言った。
 便箋に向かっている妻の、真剣な横顔を見
て私は、妻を好きになった時のことを思い出
していた。

【400文字作文】交じらない、混ざらない。〜傘の中にて〜

【400文字作文】下半身は地球を救う。-090509


 丸くて重い雨粒が傘を叩く音に、私は包ま
れながら、待っていた。
 ほんの二、三歩うしろに下がれば、大きな
建物から突き出す、大きな屋根の下で雨宿り
できるのだけど、その大きな屋根の下にいる
人間の表情を見ていると、その中に混じりた
くはなかった。みんなと違うことをして目立
ちたいわけじゃない。ただ、みんなと同じこ
とをして安心するのは違う。それだけは絶対
に違うと思っていた。
 大きな屋根の下にいる人間達の顔を見て、
私は子供の時に行った動物園を思い出した。
 似ている、と思った。けど、それが動物の
目か、それを眺める人の目に似ているのか、
思い出せなかった……。
 傘から、几帳面に落ちていく雨粒を見てい
ると、あの人が左の方からやってきて、私の
前を通りすぎ、右へと消えた。
 私はその人の背中を見て、左へと歩いた。 
 傘を回しながら。サヨナラと言いながら。

【動画で読む400文字作文】愛と拘束と旋律

【400文字作文】愛と拘束と旋律

【400文字作文】下半身は地球を救う。-090425



 朝か……と思い、時計を見るとまだ四時四
十八分だった。ずいぶん夜明けが早くなった
ものだ。
 ヤニと油でくすんだ窓を開けると鳥たちは
とっくに起きていて、新聞配達員が鳴らすバ
イクの音が遠くから聞こえてくる。
 昨夜から、五線譜に描かれた複雑な音符た
ちを見ていた俺は、じんじんするまぶたを何
度も手の平で冷やしながら、それらの音に耳
をすませ、大袈裟に欠伸をした。
 旋律・センリツ・戦慄・センリツ・前屈・
センリツ・偏屈・センリツ・センリツ……。
 声に出さずに呟きながら、新聞配達員のバ
イクが走っては停まる音に耳を澄ましている
と遠くから、ペットの名前を呼ぶ老人の声が
聞こえてくる。
 ペットの名を呼ぶ老人の声を聞いていると
その中に旋律を見つけた。
 俺も歌うように、遠くにいる誰かの名を呼
びたくなった。

【動画で読む400文字作文】 お・さんぽ