【400文字作文】下半身は地球を救う。 -11ページ目

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【400文字作文】 Another, mother

【400文字作文】下半身は地球を救う。-090328


 誕生日に母が譲ってくれたイタリア製のバ
ッグに、そのメモは隠れていた。
 シバタという男の名前と電話番号が書かれ
たこのメモは何度も開かれ、閉じられ、しわ
くちゃで今にも破れそうで、その紙のもろさ
としぶとさが、シバタという男そのもののよ
うで、私はシバタを可哀想だと思った。 
 母が、このバッグをお父さんに買って貰っ
たのは二十八才の時だったのよ。と私に話し
てくれたのは、私が大学生の時だった。じゃ
あ私が二十八才になったら頂戴ね。と母に言
ったことを母は覚えていてくれた。私が何気
なく言ったことを母はよく覚えている……。
 ねぇ。と台所にいた母に声を掛けた。母は
いつものように微笑みながら、ん?と応え、
なによ。と言った。
 母に何も言えなかった私は部屋に戻り、く
しゃくしゃになっているメモを、ゆっくり開
いた。シバタという男の名前が私の手の汗で
滲んで、消えそうになっていた。

【動画で読む400文字作文】彼のつまさき 彼女のかかと

【400文字作文】彼のつまさき 彼女のかかと

【400文字作文】下半身は地球を救う。-090314



 五十人も入れば身動きができなくなりそう
な小さい箱だが、その日の客は二十人程度で
ライブは全く盛り上がっていなかった。
 客を煽ろうと、声を張り上げていたヴォー
カルが、ぽたぽたと垂らす汗だけが印象に残っ
ている。
 彼らにとっても客にとっても残酷だったラ
イブは終わり、フロアでは何も見ていなかっ
たかのように、客や演奏を終えたバンドマン
が笑いながら酒を飲んでいる。 
 その雰囲気に苛立ちながらステージの方を
見ると、安物の画用紙みたいな緞帳とステー
ジのすき間から、黒いパンプスと茶色いスニ
ーカーが見えた。
 だろ・うん・てるよ、と低い声がして、だっ
て・でしょう・くて・もぉ、と甘えるような
女の声が聞こえてきた。
 茶色いスニーカーが黒いパンプスに近づく
と、黒いパンプスのかかとが少し、浮いた。
 二人の靴も、キスをしているようだった。


【400文字作文】ど根性ダイコンの憂鬱

【400文字作文】下半身は地球を救う。-090311



 私は、ただのダイコンです。ですが「ど根
性ダイコン」と呼ばれて何年か経ちます。
 偶然、脆いアスファルトの隙間に産まれた
だけなんです。
 なのにヒトは私を珍しそうに眺め、写真を
撮り、勝手に物語を作るんです。
 私みたいなただのダイコンに手を合わせ、
涙を流す老女も入れ歯、私という材料で金を
儲け、女のふくらはぎのような、美しいキュ
ーリを買った奴もいるようです。
 繰り返します。私はただのダイコンです。
 特別な能力も無ければ、子孫を残すために
有利な土すらそばに有りません。
 畑で産まれ育つ大多数のダイコンより、ち
ょっと不利な環境と条件に産まれただけなん
です。なのに何故ヒトは私を笑い、涙し、忘
れるのか。
 あ、そういえば先日、乞食が私を見て、舌
なめずりをしてくれました。
 旨味が出るほど、嬉しかったです。