【400文字作文】下半身は地球を救う。 -12ページ目

【動画で読む400文字作文】恋もシゴトのうち 〜エコノミーシートにて〜

【400文字作文】恋もシゴトのうち 〜エコノミーシートにて〜

【400文字作文】下半身は地球を救う。-090310


 飛行機が当然のように離陸しても、前に座
る中年男性が当然のようにシートを倒してき
ても、私の緊張は解けなかった。
 日本を出ると私は日本人であり続けなけれ
ばいけない。そのことを思い出すと緊張する
し、憂鬱だった。自分が日本人であることを
忘れていられるのは、日本という国にいる時
だけなのだ。
 私が任された仕事は、子供のオツカイのよ
うな仕事だ。ただ子供が行くには距離が遠す
ぎるし、時間がかかりすぎる。私の私生活が
忙しくないこと、恋人がいないことも選ばれ
た理由かもしれない。と、私の心は飛行機の
高度とは反比例し、落ちていく……。
 足を組みかえるついでに、前に座る中年男
性のシートの背中を膝蹴りしながら、私は声
に出さずにつぶやいた。こんな仕事……と、
やらない者は、どんな仕事もできない、と。 
 そして「仕事」を「恋」に置き換えて、さ
らに私は落ち込んだ……。


【動画で読む400文字作文】セレナーデ

【400文字作文】 セレナーデ


 来る者を拒まない私は、去る者を追うため
に、夜の中央高速を走っている。この道から
見下ろす街の明かりは、ベルベットに埋もれ
た硝子玉のようだ。 
 車の中は風を切る音だけに包まれている。
 この状況にふさわしい音楽を自分で選ぶの
は醜いことだと解っていたから、音楽は聴か
なかった。音楽に意味を持たせてしまうとそ
れは、演劇になってしまう。今の私を演劇化
してしまうのは、すごく危険な気がした。
ここには、席を立つ観客も、拍手を鳴らす観
客もいないのだから……。
 真っ暗な車内では、オレンジ色に光るスピ
ードメーターだけが動き、フロントガラスに
は、道路の白線だけが映し出されている。
 その白線をなぞるように、ゆっくりとハン
ドルを撫でる。
 私は、もう一度街の明かりを見ようと助手
席の窓を見たけど、もう街は見えなかった。
 少し欠けた、月しか見えなかった。


【400文字作文】下半身は地球を救う。

【動画で読む400文字作文】三月の忘れユキ