【400文字作文】 セレナーデ | 【400文字作文】下半身は地球を救う。

【400文字作文】 セレナーデ


 来る者を拒まない私は、去る者を追うため
に、夜の中央高速を走っている。この道から
見下ろす街の明かりは、ベルベットに埋もれ
た硝子玉のようだ。 
 車の中は風を切る音だけに包まれている。
 この状況にふさわしい音楽を自分で選ぶの
は醜いことだと解っていたから、音楽は聴か
なかった。音楽に意味を持たせてしまうとそ
れは、演劇になってしまう。今の私を演劇化
してしまうのは、すごく危険な気がした。
ここには、席を立つ観客も、拍手を鳴らす観
客もいないのだから……。
 真っ暗な車内では、オレンジ色に光るスピ
ードメーターだけが動き、フロントガラスに
は、道路の白線だけが映し出されている。
 その白線をなぞるように、ゆっくりとハン
ドルを撫でる。
 私は、もう一度街の明かりを見ようと助手
席の窓を見たけど、もう街は見えなかった。
 少し欠けた、月しか見えなかった。


【400文字作文】下半身は地球を救う。