【400文字作文】愛と拘束と旋律

朝か……と思い、時計を見るとまだ四時四
十八分だった。ずいぶん夜明けが早くなった
ものだ。
ヤニと油でくすんだ窓を開けると鳥たちは
とっくに起きていて、新聞配達員が鳴らすバ
イクの音が遠くから聞こえてくる。
昨夜から、五線譜に描かれた複雑な音符た
ちを見ていた俺は、じんじんするまぶたを何
度も手の平で冷やしながら、それらの音に耳
をすませ、大袈裟に欠伸をした。
旋律・センリツ・戦慄・センリツ・前屈・
センリツ・偏屈・センリツ・センリツ……。
声に出さずに呟きながら、新聞配達員のバ
イクが走っては停まる音に耳を澄ましている
と遠くから、ペットの名前を呼ぶ老人の声が
聞こえてくる。
ペットの名を呼ぶ老人の声を聞いていると
その中に旋律を見つけた。
俺も歌うように、遠くにいる誰かの名を呼
びたくなった。