【400文字作文】交じらない、混ざらない。〜傘の中にて〜

丸くて重い雨粒が傘を叩く音に、私は包ま
れながら、待っていた。
ほんの二、三歩うしろに下がれば、大きな
建物から突き出す、大きな屋根の下で雨宿り
できるのだけど、その大きな屋根の下にいる
人間の表情を見ていると、その中に混じりた
くはなかった。みんなと違うことをして目立
ちたいわけじゃない。ただ、みんなと同じこ
とをして安心するのは違う。それだけは絶対
に違うと思っていた。
大きな屋根の下にいる人間達の顔を見て、
私は子供の時に行った動物園を思い出した。
似ている、と思った。けど、それが動物の
目か、それを眺める人の目に似ているのか、
思い出せなかった……。
傘から、几帳面に落ちていく雨粒を見てい
ると、あの人が左の方からやってきて、私の
前を通りすぎ、右へと消えた。
私はその人の背中を見て、左へと歩いた。
傘を回しながら。サヨナラと言いながら。