映画＜Straight No Chaser＞と＜セロニアス・モンクの世界＞の関係とは？

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雪と東京|記事一覧|＜Monk＞映画評！

2022年01月04日

映画＜Straight No Chaser＞と＜セロニアス・モンクの世界＞の関係とは？

テーマ：ジャズ

　14日に公開される映画、＜セロニアス・モンクの世界＞についてですが、モンクの映画といえば、クリントン・イーストウッドが製作総指揮を務めた＜Straight No Chaser（1988）＞が有名でしょう。

　これって日本でも公開されたのでしょうか？ちょっとわからないのですが、私が1990年にNYにいた頃には非常に話題になっていて、＜アメリカでモンクが再評価されるきっかけ＞となった映画でもありました。サントラCDもNYで購入しましたが、とても良い内容です。

　久しぶりにこの＜Straight No Chaser（1988）＞を見てみましたが、実は、これは、今回の2本の映像から、いくつかの場面をチョイスして、それに、モンクの息子やマネージャー、Charlie Rouseなどのインタビュー、また、Tommy Flanaganと（先月亡くなったばかりの）Barry Harrisのモンク曲ピアノデュオ、などの映像を足したものだったのです。

　つまり、＜Straight No Chaser＞の60％くらいは、今回の映画からの引用だったわけです。では今回の、1968年の映像はもともと誰がどんな目的で収録したものなのでしょうか。その辺は映画HPにもあまり書かれていなかったので、英語サイトを調べてみたところ・・・

　監督のマイケル・ブラックウッド、クリスチャン・ブラックウッドは兄弟で、西ドイツのテレビ局の依頼で、6ヶ月にわたってモンクに張り付いて取材をし、13時間のフィルムにしました。それは、ステージ上の貴重な演奏だけでなく、非常に珍しい、オフ・ステージでのモンクを捉えたもので、彼らはそれを1時間にまとめましたが、ドイツで1回テレビ放映されたまた、お蔵入りになっていたようです。

　それが発見されて、その中から抜粋・付け足し・再構築したものが、公開後大反響を呼んだ、映画＜Straight No Chaser＞だったわけです。

　今回の映画はその＜大元のフィルム＞なわけですね。ドイツのテレビで放映されてから20年もたってから、母国アメリカでこのフィルムが認識されたということです。

　You Tubeを見ていると、1950年代−1960年代のジャズマンのライブ・フィルムは、ヨーロッパや日本で撮影されているものが多いことに気づきます。当時は本国アメリカ以上に、ヨーロッパや日本で、ジャズへのリスペクトや人気が高かったのかもしれないですね。1963年のモンク日本公演の様子は、You tube にもいくつか映像があります。

　これは当時TBSで放送されたもののようです。地上波（当時はそれしかなかったわけですが）でセロニアス・モンクの演奏が放映されるなんて、日本は今より芸術を大事にする国だったのですね・・・。

　なお、今回の映画で曲タイトルなどがわからない・・・と先日書きましたが、映画会社の方によると、＜製作側の意向により純粋にモンクの演奏やありのままの姿を楽しむ作品ゆえ、テロップをこちらで独自に挿入することは避けている＞という理由だそうです。なるほどです！ちなみに、＜Straight No Chaser＞では、曲名が追加されていますが、こちらはこのフィルムの一部をもとに再構築しているものですから、当然ですね。

***

　1/14は、映画公開日かつ、渋谷公園通りに移った新生＜Body & Soul＞にて、豪華セクステットです。どうぞよろしくお願いいたします。渋谷で映画を見てから、いらしていただくのも良いかも！

《守屋純子セクステット》 BODY&SOUL