貧富の格差の拡大
ある米国の黒人弁護士の講演の通訳をしたことがあります。将来の経済動向に関する講演でしたが、その中で、貧富の差が広がっていることが一つの問題点として挙げられました。その後、一緒に食事をしながら、それを解決するための何か良いアイデアはあるのかと聞いたところ、自分には分からないとのことでした。そして、非常に大切な話をしてくれました。
ジョンソン大統領の貧困との戦いという政策は、本当に貧しかった黒人を助けたいと言う良い動機に基づいていたとは思うが、それが黒人の家族を破壊してしまったと言うのです。社会保障が充実するにつれ、黒人女性は、収入の少ない黒人男性と結婚するよりも、独身のまま子供産んで生活保護を受けた方が、生活が安定するようになったそうです。それまで絆が強いことで知られていた黒人家族が、この政策によって崩壊してしまい、今では、黒人の赤ちゃんの71%は独身女性が産んでいるという壊滅的状態になってしまいました。良かれと思ってやったことがこのような結果になってしまい、「政策がもたらす予想外の結果」の典型になったと言うのです。
現在、日本でも貧富の差は広がりつつあり、収入の少ない男性は結婚できない人が増えています。日本は恥の文化ですので、生活保護目的に子供を産む人はほとんどいないと思いますが、その代わりに少子化が進んでいます。結婚できない男性が増えていると言うことは、もちろん結婚できない女性も増えていると言うことで、首都圏では40歳の女性の3割が、結婚歴がなく、全国でも15%です。
若いころの私は、何にでも理想を求める傾向がありましたので、政治にもそれを求めていました。しかし、歳を取るにつれて、政府にはできることとできないことがあり、またそれを見分けることも至難の業だと思うようになりました。もちろん、あきらめろと言うわけではないのですが、政府にもできないことがあると言うことは、当然のことながら、理解しなければなりません。
ある面白い統計があります。あなたは幸せですかと言う質問と、それ以外の多くの質問をして、何が幸せの鍵であるかを探ろうとするものです。例えばの話ですが、幸せですと答えた人の大多数が結婚していたとすれば、結婚が幸せの鍵と言うことになり、大多数がお金持ちであれば、お金が幸せの鍵と言うことになります。つまり、幸せですと答えた人が、それ以外の質問で最も多く「はい」と答えたのはどの質問かを調べたのです。
その結果は、「あなたは自分の人生を自分で変えることができると思いますか」と言う質問でした。ちょっとピンとこないかもしれませんが、自分にはどうしようもないと思っている人は、努力もしないだろうし、満足できる人生を送ることもできないと言うわけです。国や他人任せの人生では、幸せにはなれないと言うことですね。「神は自ら助くる者を助く。」これは聖書の言葉ではありませんが、一理ありそうです。
父が十年以上も飲まないでとっておいたお酒
十数年前、次男がまだ中学生の頃、三男と一緒に夏休みを祖父母の実家で過ごしました。次男は、おじいちゃんからもらった一万円のお小遣いの中から数千円をはたいて、おじいちゃんにお酒を買ってあげました。おじいちゃんは感激して、何度か、あの時のお礼だと言って、次男にお小遣いをあげるよう、帰省した私にお金を渡してくれたことがありました。
そのおじいちゃん、つまり私の父は、今月の3日に心不全で亡くなりました。私たち家族は、お葬式と事後処理のために一週間あまり帰省したのですが、遺品を整理していたら、その時のお酒が出てきました。一滴も飲まないで、大切に取っておいたようです。よほど嬉しかったに違いありません。
しかし、残された家族の中で、お酒を飲む人はいません。誰かにあげてもいいのですが、父がそれほど大切にしていたお酒を上げてしまうのも心残りがありますので、さしあたって、そのまま家に置いておくことにしました。私は実用主義者で、電気製品などの必要な物や役に立つものを買ってあげるタイプなのですが、何か心に残るプレゼントをしてあげればよかったと、後悔しました。
次男がオバマ大統領と電話で話した
私の次男はハワイのチャリティー団体で働いています。団体の主な仕事はホームレス・シェルターです。シェルターにはホームレスの人のためのクリニックがあり、次男はそこで健康保険関連の仕事をしています。その関係で、オバマ政権による医療保険改革があった際、保険に入りたい人の世話をする資格を取りました。ハワイでその資格を取ったのは、次男が第一号でした。そのせいか、去年の年末、オバマ大統領がハワイで休暇を過ごしていたとき、大統領の取材で来ていたと思われるCNNのレポーターから電話があり、医療保険改革に関して取材したいと言う申し込みがありました。あいにく私たちはその時タイにボランティアとして行っていましたので、取材に応じることはできませんでした。
今月、大統領の政党である民主党が中間選挙で大敗して数日後、次男は、大統領との電話会議に出ることになりました。各州から彼と同じ仕事をしている人が代表で二人ずつ選ばれて、大統領と話をすることになったのです。会議の前日、もし意見を求められたらどんな話をしたらいいだろうねと二人で考えていました。
各州に、保険に加入するためのサイトが設けられたのですが、サイトを開いてもどうしていいか分からない人が、次男の取った資格を持っている人に電話して質問するのです。彼が働いている団体は、次男がその仕事をフルタイムでするという前提で、彼の給料を州から出してもらうことにしました。
ところが、実際に始めてみると、電話は1日に3回くらいしかかかって来ません。電話に出ていないときは、団体のほかの仕事をやっています。団体の仕事は、どうせ州の役に立っている仕事なので、全く無駄になっているわけではないのですが、次男のような場合は珍しく、ほとんどの人はこれをビジネスとしてやっています。州から自分の給料だけでなく、事務所の家賃や光熱費なども出してもらって、毎日数回電話に出るだけなのです。
もし大統領に発言する機会があれば、これは税金の無駄遣いだと言う話をしたらいいと言うことになったのですが、残念ながら、ほとんど大統領が一方的に話しただけで、自分の意見を述べる機会はなかったそうです。大統領がどんな話をしたのかと聞いても、それは守秘義務があるから言えないとのことでした。これまた残念。