こんばんは。 ジュニパパです。

 

今回は、家づくりの過程で考えさせられたことの中から一つ、外観デザインと建蔽率の関係について綴りたいと思います。

建築やデザインに詳しい人には当たり前のことでつまらない内容かもしれませんが、私の妻のように、平面図からではパース図をイメージし難い人には少し参考になるかもしれませんので、お付き合いください。

 

私達は、家づくりにおいて、外観デザインがとても重要と考えています。

優先順位としては1位か2位くらいに挙げてもいいかもしれません。

もちろん、他にも色々と考えなければならないことは沢山あって、実質的に重要なことは、融資が受けられるのかとか、の方がもっと重要かもしれません。

でも、やっぱり、カッコイイ家でなければ、住む気にならないと思いますし、大きなお金を出してまで建てても意味がないとも思います。

 

そこで、どうしたら格好のいい家が建てられるのか、ということについて考えました。

ここで、格好がいいというのはあくまでも私の言い方であって、人によっては、素敵な家とか、可愛い家とか、スタイリッシュな家とかでも同じ意味です。

 

私達が考える格好のいい家とは、抽象的な言い方をすれば、のっぺりしていなくて、シンプルだけど変化があり、重厚感のある外観デザイン、みたいな感じです。

かなり分り難いと思いますので、もう少し言い換えると、凹凸があって、彫りが深くて、異素材を組み合わせているけどうるさくないデザイン、とでも言いましょうか。

もっと分からなくなったかもしれませんね。

 

要は、住宅展示場にあるモデルハウスや、ハウスメーカーのカタログやホームページに載っているコンセプトモデルのような家です。

これらのモデルハウスは、大体、外壁に大きな凹凸があって、バルコニーが広かったり両方の袖壁があったり、軒や庇が大きく張り出していたり、兎に角、無駄と言える程、自由に設計されています。外壁全体に自然石のタイルが張られていたり、贅沢の極みと言えるような家になっています。

 

例えば、こんな感じです。軒が大きく張り出していて、格好いいですね。

 ※パナホームのホームページから拝借しました m(_ _ )m

 

しかしながら、同じホームページやカタログの実例集のページに行くと、少し様子が違います。

お客さんが実際に建てた家の多くは、そんなに凹凸や陰影もなく、軒も深くなく、石張りやタイル張りの壁もあまり多くありません。

 

例えば、こんなイメージです。

  

 ※左はミサワホーム、右は住友不動産のHPより勝手に拝借しました スミマセン m(_ _ )m

 

これは、実際に家を建てる時に、外観にはそんなにコストを掛けられないという事情もあろうかとは思いますが、もう少し、建築基準法的な面から考えたいと思います。

 

家を建てる時に関係する法規制の中で、建築基準法上の規定に、原則として敷地面積の一定割合を上回る建築面積(所謂、建坪)の建物を建ててはいけないというものがあり、それが「建蔽率(けんぺいりつ)」と呼ばれるものであることは皆さんご存知かと思います。

例えば、敷地面積100坪で建蔽率60%なら、建坪は60坪までOKとなります。

建築面積とは、簡単に言えば、建物を真上から見た時に、敷地に投影される面積ですね。

 

建蔽率自体は、地域ごとに指定されており、都市計画において定められています(建築基準法上は、用途地域毎の上限を定めています)。

 

皆さんは家を建てる時に、限られた敷地の中に出来ればギリギリまで家を建てたいと思いませんか。

つまり、建蔽率の上限までを使い切りたいということです。

広大な敷地であれば、そんなことを考える必要はないと思いますが、大体の場合、都心なら20坪とか30坪とか、校外なら40~60坪位の敷地なので、そこに建蔽率目一杯の家を建てようとするのではないかと思います。

 

先程、建築面積とは、建物を真上から見た時に、敷地に投影される面積と言いましたが、厳密には違います。

建築面積に入らない部分があるのです。

それは、壁から張り出したバルコニーや庇(他にはアパートの外片廊下も)は、原則として軒等の先端から1m以内の部分は建築面積には入らず、1m超後退した部分の面積が参入されるということになります。

そして、原則として、という言い方をしたのがミソなのですが、バルコニーや庇が両袖壁や柱に囲まれている場合は、原則として全て建築面積に含めることになるのです。

再度、原則としてといったのは、両袖壁があったとしても、高い開放性がある場合には、また先端から1m以内の部分は含まれないことになるのです。複雑ですね。

髙い開放性とは、両袖壁の間が4m以上とか、天井高2.1m以上とかです。

3方向が壁で囲まれている場合は、全て建築面積に入ります。

 

以上を図面で示すと以下のようになります。紫色の斜線が建築面積に入る部分です。

まず、両袖に壁や柱がない場合です。

次は、両袖に壁や柱がある場合です。

次は、単純に3方向を壁に囲まれている場合等です。

そして最後は、階数が2階以上のベランダの場合です。

 

※以上は、遠山英雄都市建築設計事務所さんのホームページから勝手に拝借しました ありがとうございます m(_ _ )m

 

何でこの話をしたかといいますと、これが外観デザインにかなり影響するからなのです。

 

モデルハウス等は建蔽率のことを考えずに設計するので、まずはデザイン重視で設計されています。

より格好よくするためには、袖壁をつけたり、壁で囲んだり、軒や庇を大きく張り出したりして、陰影が付くように彫りを深くして凹凸をつけるのが王道なのです。

家全体に大きな動きを造る訳です。

 

次の二つの建物の外観を比較してください。どちらも賃貸住宅です。

 

※左は住友不動産、右は旭化成のHPから拝借しました。 悪意はありませんので、ご容赦ください m(_ _ )m

 

好みの問題もあるとは思いますが、私は右の方が単純にカッコイイと思います。

規模感もかなり違うので、比較するのは酷かもしれませんが、右の方がゆとりのある設計がされているように見えます。

左は、おそらくですが、2階のバルコニーを除いた建物本体だけで目一杯の建蔽率を使い果たしていると思われます。だからバルコニーの下に柱や袖壁をつけることはできず、張り出した形にになっている訳です。バルコニー下の両袖に柱や両袖壁があると、建築面積に含まれてしまい、建蔽率をオーバーしてしまうからです。

一方、右は1階も2階も、ベランダの両袖に壁があり屋根もあります。この場合、ベランダ全体の面積も建築面積に入ってしまう訳ですが、敷地に余裕があるから建蔽率を気にすることなくできることなのだと思います。この方が格好よくて重厚感も増しますし、プライバシー保護にもなるので、集合住宅では有効なデザインですね。

因みに、バルコニーとベランダの違いは、一般的に、バルコニーは屋根がないもの、ベランダは屋根があるものをいうそうです。

 

余談ですが、建蔽率には家本体以外のものも含まれる場合があります。

例えば、屋根付きのカーポートです。 例えば、こういうやつです。

  ※ 三協アルミさんのHPから拝借しました m(_ _ )m

 

これも建蔽率の算定上、建築面積に含まれる部分があります。部分があるというのは、緩和措置があるということです。以下の条件を満たす場合には、柱から1mまでの部分は建築面積に含めないというものです(自治体によって違いがあるそうです)。

  ①  外壁のない部分が連続して4メートル以上であること
  ②  柱の間隔が2メートル以上であること
  ③  天井の高さが2.1メートル以上であること
  ④  地階を除く階数が1であること

 

しかしながら、家本体に建蔽率ギリギリの建築面積を使ってしまっている場合は、このようなカーポートは建築計画上に入れることはできません。

なので、家が完成して暫くたってから設置する場合が多いのですね。

 

同じように、集合住宅でよく見掛けるサイクルポートも同じことがいえます。

サイクルポートはカーポートに比べれば小さいですが、片側支柱タイプの屋根だと建築面積に算入される面積が発生してしまいます。なので、中支柱タイプの屋根のものにすると、軒の奥行が支柱から両サイド1m程度になるので、ほとんど建築面積に入れなくても済む可能性が高くなるそうです。こんな感じですね。

 

 ※ 四国化成さんのHPから拝借しました m(_ _ )m

 

話が少し逸れましたが、今度は同一の計画地で、設計の違いによる比較をしてみます。

以下の2つの平面図は、今回の計画でDハウスから提案されたプランです。

 

左が初期段階のラフなプラン、右が最終プランです。

 

 

図面の作成の仕方も違うので単純に比較はできませんが、明らかに左はのっぺりした長方形で、右は壁面に凹凸があり変化に富んでいます。

左はバルコニーを描いていませんが、柱とか袖壁のない張り出しタイプがつく想定です。その分、室内面積は大きくなっています。

一方、右はベランダに袖壁や屋根に囲まれており、各戸が独立しているので、プライバシーの確保もバッチリされています。その分、室内の面積は左のプランよりも小さくなっています。

同じ会社でも、これだけ違うプランが出てきます。

どちらがいいかと言われれば、私は絶対に右を選びます。

(なお、左の図面はかなり適当につくったのか、3階には3戸しかないのに、玄関が4つ描かれています。こんな図面をよく客に渡したなと、逆に感心します。)

 

そして外観です。

左の平面図に対応するパースはありませんが、右のパースはこれになります。

 

如何にもDハウス的な外観ですが、凹凸や陰影があって、まあまあ嫌いではありません。

左の平面図だったら、どんな外観になっていたのだろうと思うと・・・。

 

ハウスメーカーのモデルハウスやカタログのコンセプトモデルは、もっと彫りが深く、無駄と思える位に軒や袖壁を大きく造ったりします。

 

例えば、こんな感じです。

 

※どちらも積水ハウスのホームページから拝借しました m(_ _ )m

 

どちらも積水ハウスのカタログのコンセプトモデルですが、袖壁と軒が外壁の位置より大きく飛び出していますね。

実際にこのような家を建てられる人は、なかなかいないと思います。

建てられないというのは、敷地にそれだけの余裕がないからです。

もちろん、このような実質的には無駄と思える壁に多額のコストを掛けられないということもありますが、そこに面積を使う位なら、もっと広いリビングやもう一部屋欲しいと思うのが普通の感覚でしょう。

だから、実際に街中に建っている家には、モデルハウスのようなデザインのものは少ないのだと思います。

田園調布とか芦屋は別格で、モデルハウスなんかよりもっと洗練されたデザインの家が建ち並んでますけどね。

 

私は常々、このように実際には到底建てられないようなモデルハウスをなぜ建てるのか、幻想にすぎないようなものを造るくらいなら、もっと現実に沿うようなものを工夫してカッコよく建てて勝負して欲しいと思うのです。

もう少し現実味のある、本当の意味で参考になるデザインで造って欲しいのです。

 

皆さん、モデルハウスをイメージしても、同じような外観デザインのものを建てるのは至難の業です(内装・設備系も同じように、真似が難しい位に豪華ですけどね)。

これをイメージしてはいけません。

確かにカッコイイけど、モデルハウスは嘘つきと同じです。

「こんなの絶対建てられへんがな!」(どこの人?)、と心の中で叫びながら、モデルハウスを後にする今日この頃でした。

 

では、また。