放射性同位体の半減期 | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事に関連する話です。

 

一般入試のなかで、時事にからめて、放射性同位体の半減期に関する次のような適性検査型問題が出された例もあります。

 

2021年7月、「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されることが決定しました。このニュースについて、先生と生徒が次のような会話をしています。この会話を読んで、あとの問いに答えなさい。(田園調布2022午後)

 

生徒:社会の授業で、縄文時代は今から約1万3000年前から約2300年前までのことだと習いました。もっと調べてみようと思い図書館で本を探してみると、このような年表を見つけました。

それにしても、土の中から出てきた土器が、縄文時代に使われていたものだと、どのようにしてわかるのですか。
先生:それはね、まだ小学校では勉強していないものだけれど、¹⁴C (シー14)という炭素の一種を利用して年代を測定しているのですよ。
生徒:炭素は理科の授業で聞いたことがありますが、「炭素の一種」とはなんですか。
先生:炭素にはいくつかの種類があり、ほとんどは¹²C (シー12)と呼ばれる物質です。それとは別に¹⁴Cという物質もあります。この¹⁴Cは炭素の「放射性同位体」と呼ばれ、¹²Cと比ベると非常にわずかしか存在していません。空気中に含まれる¹⁴Cの数/¹²Cの数(¹⁴Cの数と¹²Cの数の比)の値と、生きている動物や植物に含まれる¹⁴Cの数/¹²Cの数の値は2つとも同じで、何年たっても変わりません。しかし、動物や植物が死んでしまうと、そこに含まれる¹⁴Cは少しずつ別の物質へと変わっていき、残っている¹⁴Cの数は5730年後には半分に、さらに5730年たっとまたその半分に、…というように減少していきます。そのため、発見された土器に付着していた穀物や植物の繊維などに含まれる¹⁴Cの数/¹²Cの数の値が、現在の空気中の¹⁴Cの数/¹²Cの数の値の½であれば縄文時代の[ア]、¼であれば[イ]の土器であると推定することができるのです。

 

⑴ [ア]、[イ]にあてはまる適切な言葉を下の(A)〜(F)から選び、記号で答えなさい。 
(A)草創期   (B)早期   (C)前期
(D)中期   (E)後期   (F)晩期

 

右矢印残っている¹⁴Cの数は5730年後には半分に、さらに5730年たっとまたその半分に、…というように減少」するから、ア「現在の空気中の¹⁴Cの数/¹²Cの数の値の½であれば」5730年前、イ「¼であれば」11460年前となる。

  [ア](C)、[イ](A)

 

下線部について、次の問いに答えなさい。
① 2万2920年前に枯れた木の木片に含まれる¹⁴Cの数は、枯れる前の何分の1になっているか答えなさい。

 

右矢印 2万2920年÷5730年=4より ½×½×½×½=16分の1

 

② 橫軸を生物が死んでからの時間、縦軸をその生物に含まれる¹⁴Cの数としたとき、¹⁴Cの数が減少する様子を表したグラフとしてもっとも適切なものを下の(a)〜(d)から選び、記号で答えなさい。

 

右矢印 時間とともに半分、半分…になっていく(が永久にゼロにはならない)から(c)

 

⑶ 死んだ生物に含まれる¹⁴Cの数が、生きていたときの1%未満となるのは、死んでから何年後から何年後の間と考えられますか。もっとも適切なものを次の(あ)〜(お)から選び、記号で答えなさい。
(あ) 2万7000年後から3万4000年後
(い) 3万4000年後から4万1000年後
(う) 4万1000年後から4万8000年後
(え) 4万8000年後から5万5000年後
(お) 5万5000年後から6万2000年後

 

右矢印1%未満」となるのは①½→②¼→③⅛→④¹⁄₁₆→⑤¹⁄₃₂→⑥¹⁄₆₄→⑦¹⁄₁₂₈より半減期が6回から7回くる間

よって、5730×6=34380、5730×7=40110より、もっとも適切なものは (い)3万4000年後から4万1000年後

 

生徒:すごいですね。炭素以外の物質でも測定できるのですか。
先生:年代測定に利用される放射性同位体としては、¹⁴Cの他にも⁴⁰K(カリウム40)や²³⁸U(ウラン238)などがあります。ただし、これらは土器などの年代の測定には向いていません。
生徒:なぜですか。
先生:¹⁴Cや⁴⁰Kや²³⁸Uの放射性同位体の数が½に減少するのにかかる時間は「半減期」と呼ばれ、これは物質ごとに決まっています。先ほど考えたように¹⁴Cの半減期は5730年でしたが、これは比較的短い方です。一方、⁴⁰Kの半減期は約[ウ]億[エ]万年、²³⁸Uの半減期は約44億7000万年です。そのため、これらの物質は火山の噴火、地層のたい積、いん石の落下など、もっと昔のできごとを調べるのに利用されています。

 

⑷ 3.2ミリグラムの⁴⁰Kが0.1ミリグラムに減少するまでに64億年かかります。このことを用いて、[ウ]、[エ]にあてはまる数を求めなさい。

 

右矢印 「3.2ミリグラムの⁴⁰Kが0.1ミリグラムに減少する」には①½→②¼→③⅛→④¹⁄₁₆→⑤¹⁄₃₂と半減期が5回くる必要がある。

よって、64億年÷5=12億8000万年より [ウ]12、[エ]8000 完了