出会い算の常識 | 受験算数はきょうもおもしろい

以前の記事の続きです。

 

近年ふえてきた速さが途中で変わる問題の場合、ふつうの出会い算の常識が一部通用しないことがあります。

たとえば次のような2つの問題では、この点に注意して、解き方を使い分けることが必要になります。

 

  速さが変わらないとき(智辯学園和歌山2020)

 

太郎くんはA地点から出発し分速160mで、次郎くんはB地点から出発し分速200mで、AB間を休むことなく往復します。2人が同時に出発するとき、2回目にすれ違うのは出発してから15分後です。太郎くんはA地点を出発してからB地点に着くまで何分何秒かかりますか。

 

まず2人が向かい合う方向に往復する出会い算では、1回目にすれ違うのを①分後とすると、2回目にすれ違うのは③分後という関係が一般になりたちます。

上の図から明らかなように、1回目に出会うときは2人合計でAB×1の距離を進んでおり、2回目に出会うときにはAB×3の距離を進んでいるためです。この出会い算の特長を利用します。

 

右矢印 本問では「2回目にすれ違うのは出発してから15分後」なので、1回目にすれ違うのは出発してから5分後

よってAB間の距離は(分速160m+分速200m)×5分=1800mとわかり、太郎くん(分速160m)が「A地点を出発してからB地点に着くまで」にかかる時間は

 1800÷160=11.25 より 11分15秒

 

 

  速さが変わるとき(慶應義塾湘南藤沢2022)

 

山の頂上にA町が、山のふもとにB町があり、2つの町は3240mはなれている。三田さんはA町を、藤沢さんはB町を同時に出発して、A町とB町の間を一往復した。
  三田さんの登る速さと下る速さの比は5:9
  藤沢さんの登る速さと下る速さの比は3:5
であり、登りも下りも藤沢さんの方が三田さんより毎分6m速いという。

⑴ 三田さんの下る速さは分速何mですか。

 

右矢印 「三田さんの登る速さと下る速さの比は5:9」より、三田さんの登る速さを分速⑤m、下る速さを分速⑨mとおく。

 

このとき「藤沢さんの登る速さと下る速さの比は3:5」より、藤沢さんの登る速さは分速⑥m、下る速さは分速⑩mとおける(登りも下りも①だけ三田さんより多くなるように比合わせした)。

 

登りも下りも藤沢さんの方が三田さんより毎分6m速い」から、①=分速6mより、「三田さんの下る速さ」⑨は 分速54m

 

⑵ 2人が同時に出発して、最初に出会うのは何分後ですか。

 

右矢印 小問⑴の結果より、2人の速さは 

   三田さん…登りは分速30m、下りは分速54m

   藤沢さん…登りは分速36m、下りは分速60m

とわかる。

そして三田さんは山の頂上にあるA町を、藤沢さんは山のふもとのB町を同時に出発するので、最初に出会うときの速さは三田さんが分速54m、藤沢さんが分速36m。そして「2つの町は3240mはなれている」から

  3240÷(54+36)=36分後

 

⑶ 2人が最初に出会ってから、2回目に出会うまでに何分かかりますか。

 

このような速さが変わる問題の場合、前問で使った出会い算の常識は通用しない(36×2=72分後とはならない)ことに注意して、地道に計算して答えを出す必要があります。

 

右矢印 三田さんは最初のA→Bの下りに60分(=3240÷54)かかり、藤沢さんは最初のB→Aの登りに90分(=3240÷36)かかる。

となると藤沢さんがA町を折り返すとき(90分後)には三田さんはすでにB→Aに向かって30分進んでいる。これは距離でいうと900m(=30×30)なので、残り2340mの出会い算を考えればよいことになる。

2人の速さは、B→A方向に進む三田さんが分速30m、A→B方向に進む藤沢さんが分速60mなので、

  2340÷(30+60)=26分

これは藤沢さんがA町を折り返したあとにかかる時間なので、藤沢さんがB→Aの登りに使った90分を足すと、藤沢さんは(2回目に出会うまでに)合計116分歩くことになる。

 

2人が最初に出会ったのが出発して36分後なので、「2人が最初に出会ってから、2回目に出会うまでに」かかった時間は116分-36分=80分 完了