私の記事でも再三にわたり登場している「重心」という言葉。
今回は、その意味について、改めて考えてみたいと思います。
・重心はどこか
このような正四角形であれば、
その重心の位置は、
ちょうど中心になります。
教科書的には、「ただし、質量が均一に分布しているものとする」というような但し書きが必要なのでしょうが、
重心と言えば、このような「ど真ん中」という
イメージが強いのではないでしょうか。
では、以下のように、
四角形を分割してずらしてみた場合には、
どうでしょうか。
上の図の色分けのように、
別々のブロックの集合体として捉えなおした上で、それぞれの重心位置を特定します。
2つの四角形の大きさが同じなので、質量も同じだとすると、重心を直線に結んだ直線の真ん中が全体の重心にということになります。
並べ方を変えて、人間の立位の姿勢の
上半身下半身のようにタテに並べてみると、
こんな感じです。
こんな変則的な姿勢の場合は、
どうでしょうか?
重心のとり方はやはり一緒ですが、
重心位置は物体の外になりました。
姿勢によって、重心は常に身体の中にあるとは限らない、というのが、
乗馬時の姿勢やバランスを考える際に混乱や勘違いを起こしてしまう原因の一つなのだろうと考えられます。
では、こういう場合は、どのよう重心位置を
求めればいいのでしょうか?
緑色グループと青色グループの重心の位置を、先と同じ方法でそれぞれ特定し、
その重心どうしを直線で結んで中心をとれば、そこが全体の重心位置ということになります。
やり方がわかった上で改めて眺めてみると、「物体のバランス」というのが鮮明に見えてくるのではないでしょうか。
重心の位置を特定するには、
もう一つ、別の方法もあります。
下のように、「上の1個と、残りの3個」に見立てなおす。
緑1個と青3個で、全体合計は4個なので、質量の比率は1:3ということになります。
緑グループと青グループの重心をそれぞれ割り出し、結んだ直線を4等分して、
緑と青の質量比は1:3なので、その重心を結んだ直線も「1個と3個」になるようにすると、
割り出された重心の位置は、先ほどと同じになりました。
人の重心位置
ここまでの話を人体に当てはめてみると、
立位ではこんな感じになります。
(※数値の引用元【健常成人における上半身質量中心点と下半身質量中心点位置の検討】)
上半身の重心がみぞおち辺り、全体の重心が骨盤辺りというのは、感覚的になんとなく納得されるのではないかと思いますが、
乗馬の騎乗姿勢の場合、鐙に立った姿勢と着座姿勢で体重を支える基底部の位置が大きく変わり、さらに障害の前傾姿勢や競馬のモンキー姿勢では身体の外に重心がくることになりますから、
その時の姿勢や、馬の動きによる慣性力によって、一番バランスの安定する重心位置というのは常に変わってくるということを念頭に置いて
随伴の動作を行う必要があるのだろうと思います。