馬術稽古研究会

馬術稽古研究会

従来の競技馬術にとらわれない、オルタナティブな乗馬の楽しみ方として、身体の動きそのものに着目した「馬術の稽古法」を研究しています。

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  ここ数年、メディア等で注目を集めているワードに、

「体幹を鍛える」

というのがあります。


  ダイエット目的、あるいは競技パフォーマンスの向上など、それぞれの目的のために、大腰筋や腹横筋と言った体幹の「インナーマッスル」を鍛えることを目的としたトレーニング方法などがよく取り挙げられています。

  しかし、
そうして特定の筋肉に負荷をかけて強くしようとすることで、
結果的に「鍛える」という目的とは逆効果になってしまい、かえって身体を傷めてしまうようなこともあるようです。


  そう聞いて、「?」となった方も多いかと思いますので、まずは筋肉のしくみについて、少し考えてみましょう。


  筋肉には、「収縮する」という働きがあります。

  生理学的にいうと、脳から神経を通して伝える信号によって、筋肉を収縮させているわけですが、

  この時に脳から出る信号には、筋肉を「収縮させる」作用しかなく、

逆に積極的に筋肉を「緩める」「伸ばす」ような指令というのは出ないのだそうです。



  乗馬のレッスンでも、「力を抜いて」「リラックスして」とアドバイスされても力の抜き方がわからない、というように言われる方がよくいらっしゃいますが、

それもそのはずで、無意識のうちに緊張して全身の筋肉を収縮させたような状態になっているところから、脳の指令によってこれを緩める、というのは難しいわけです。


 
人間が馬に乗って、蹴ったり叩いたりして馬を緊張させることは比較的簡単に出来ても、
逆に緊張している状態からリラックスさせることはなかなか難しい、というのと似ているかもしれません。
  




  次に、身体を動かすときの筋肉の働き方について考えてみたいと思います。

  人間が動作を行う際には、一つの筋肉だけでなく、別の筋肉が同時に協働、あるいは拮抗するようにして働くことで、負荷を分散したり、動きを制御しやすくしたりしています。

  簡単に言えば、何かの動作を行う際には、その動きに必要な筋肉どうしが協力して働く、ということです。

  例えば、股関節を屈曲させる場合、腹直筋やその内部の大腰筋、脚の大腿直筋というような筋肉が協調して働きます。

  この時、一つの筋肉の力が弱ければ、もう片方の筋肉がより働く、という相互補助的な関係になっています。

  しかし、過度なトレーニングなどによって、どちらかの筋肉の力だけが強くなりすぎると、いつも強い方の筋肉だけを使って動いているうちに、もう一方の筋肉の方はさらに弱くなっていきます。

  これが、「鍛えることで逆に弱くなる」ということの意味です。



  このような点から、使いたい筋肉を働かせるためには、以下のような条件があることがわかってくると思います。

・その筋肉自体の緊張をほぐして、働きやすくする
・補助関係にある別の筋肉の過活動を抑える


例えば、股関節の屈曲運動においては、

大腰筋を緩めてやること

もしくは、

大腿四頭筋の過度な緊張をとること

のどちらか、または両方をする事で、
大腰筋が働きやすい状態になる、ということです。

  体幹を鍛える、ということの本当の意味は、

特定の筋肉に負荷をかけて強くする、というようなことだけではなく、あえて優位になっている強い筋肉を「使いすぎない」「鍛えすぎない」という選択肢も持ってあげることで、
大腰筋や横隔膜に代表されるような体幹の「インナーマッスル」を自然に使えるようになる、ということなのだろうと思います。

  


・馬の「体幹トレーニング」

  乗馬の調教で、大勒や折り返し手綱、サイドレインといった道具を用いて、馬の首を深く屈曲させたような姿勢で運動させている場面を見たことがあるのではないかと思います。


  そうした姿勢で、口から泡を出して汗びっしょりで運動する馬の様子を見ると、いかにも苦しそうで、無理矢理力尽くで首を「へし折られている」ようにも見えるために、

ただ見栄えを良くしたり、人間が楽をするために動物に窮屈な姿勢を無理強いしている、というようにも言われたりするわけですが、

(中にはそういうこともあるかとは思いますが)全てがそういうわけでもないのだろうと思います。


  あのように深く首を曲げた形を保つためには、相当な力が要るはずだ、と思われがちですが、


道具が「壁」として作用することで、馬が手綱に対して抵抗することを諦め、そのために使うような筋肉群の余計な緊張を緩めさせることが出来、

また馬が自分で首を曲げるための筋力も必要なくなることから、
馬自身は存外リラックスしていたりする場合もあるのです。



  そのようにして、パフォーマンスに必要な、姿勢やバランスを保つための筋肉群だけを優位に働かせながら、
全身を協調させて動くような身体の使い方を錬り、「鍛えて」いくことが、
様々な馬具を用いて馬を屈曲させた形を作ることの本来の目的だったのではないか、と考えられます。

  いわば、馬の「体幹トレーニング」といったところでしょう。
  
  

  馬も人も、体幹を「鍛えて」使える身体になるには、

やみくもに頑張ることをやめ、働かせたい筋肉と協働するような「他の筋肉をリリースする」ということから考えてみる必要もあるのではないか?というように思います。