さてはて、予定の期日よりも一日早くしれっと再登場いたしましたけれど、皆さまはGWをいかがお過ごしでしたでしょうか。当方は野暮用にうつつを抜かしておりましたが、それはそれとして、例によりしばしのお休みがまるでなかったかのようにお話は続いてまいります(笑)。

 


 

先日の近隣サイクリングでは立ち寄りスポットが3カ所で…と申しましたが、江戸東京たてもの園の話ばかりが長引いてしまいましたなあ。ようやっと二つめに移りまして、江戸東京たてもの園からは新小金井街道をひたすら北上、小平市のガスミュージアムへとたどり着いた次第です。

 

 

 

何度か訪ねたことのある博物館ですけれど、「明治42年(1909)に文京区本郷に建てられた東京ガスの出張所の建物」(ガス灯館)と「明治45年(1912)に荒川区の千住に建てられた東京ガス千住工場の建物」(くらし館)とを移設復元した2棟の赤煉瓦建物は、なかなかに雰囲気あるなあと。

 

ただ、常設展示の方は変わりないのだろうと高をくくっておりましたところ、黎明期のガス事業と関わり深い渋沢栄一が新しい一万円札の顔になったりするのを機会と、リニューアルしたようで。すっかり渋沢栄一推しの展開になっておりましたよ。

 

 

ガス灯館の中、右手には若き日の渋沢栄一の等身大パネルが置かれてありましたけれど、150cmそこそこであったということですので、至って小柄。将軍慶喜の弟・徳川昭武に随行して出向いたパリ万博では、さぞかし上を見上げてばかりおったのではなかろうかと。かように見上げたもののひとつに、コンコルド広場でパリの夜を明るく照らすガス灯があったということで。

 

渋沢とガス事業とのその後の関わりは、別棟「くらし館」にある「渋沢栄一ギャラリー」というコーナー展示に詳しく紹介されておりましたですよ。

 

 

日本におけるガス事業は横浜を嚆矢として、次いで東京へ。東京では当初、渋沢も関係する東京会議所なる組織(江戸時代の江戸町会所の後身だそうな)が手掛けますが、1874年の事業開始以来どうにも需要者が増えず経営に苦しんだ末、2年後に事業は東京府瓦斯局に移管されることに。渋沢は瓦斯局長となります。

 

1885年には民間払い下げとなったガス事業経営のため、東京瓦斯会社が設立され、これまた渋沢が初代社長(当時の呼称は会長と)に就任するのですな。設立当初のガス契約者は「わずか343戸」だったそうですが、「1910年(明治43)には約12万6,000戸にまで増え」たのだとは、今さら言うまでもないことながら、渋沢の才覚は大したものだったのでありましょうねえ。

 

ちなみに以前ガスミュージアムに来て気付かされたことですが、元々ガスの利用法は「ガス灯」にあったわけで、もっぱら明かりを灯すためのものであったというのですな。それだけに、1887年に東京で電燈事業が始まりますと、しばらくはガス灯優位の状況は続いたものの、やがて明かりを灯すという点では電気に取って代わられることに。

 

ですが、早くも1896年段階で渋沢は欧米のガス事情調査として技師を派遣、その報告から「今後のガス需要は『熱源利用』が主流になる」と考えるに至り、一般家庭の炊事用としてガスを普及させる方向へ向かっていくと。さらには暖房器具、内風呂の普及にもまた。

 

 

ということで、くらし館には東京ガスが手掛けてきた熱源利用としての製品と変遷が、さまざまに展示されておりますですよ。ですが、気候温暖化の叫ばれる昨今、「ガスって要するに燃焼する熱源だから、CO2がたくさん出て…」とも。ま、ガスミュージアムは東京ガスの企業ミュージアムですので、そのあたりへの取り組みを紹介することも抜かりないようですな。

 

 

文系人間には小難しいことは分かりませんですが、「CO2から都市ガスをつくる」というのが取り組みの一つであるようで。そんな永久機関みたいな(?)ことができるのと思ってしまいますけれど、説明にはこんなふうに。

  1. 工場などから出たCO2を回収、同時に再生可能エネルギー由来の電気で水素をつくる
  2. CO2と水素を合成してメタンを作る(e-メタン)
  3. 都市ガスとして供給

「e-メタン」は「これまでの都市ガスと同じように使うことができ」、「既存のガス導管などの都市ガス供給設備やご家庭のガス機器もそのまま使用できる」のに、「CO2実質ゼロ」でもあると。「ほおほお!」と思うも、へそ曲がりな性質としては「きっとどこかに落とし穴が…」なんつうことを思ったり。

 

ま、渋沢栄一由来の企業としては、渋沢語録にある「できるだけ多くの人に、できるだけ多くの幸福を与えるように行動するのが、我々の義務である」と言う言葉を信奉しているだろうと思っておきましょうかね。くれぐれも「できるだけ多く」の範囲の考え方を誤らないようにしてもらいものですが…。