さてと、国立天文台三鷹キャンパスを訪ねていちばん最後に覗いたのがこちら、展示室…とはいささかそっけないネーミングのような。
ですが、ネーミングはともかくも、こちらでは「国立天文台が行っているプロジェクト(すばる望遠鏡、VERA、アルマ望遠鏡、TAMA300、太陽観測衛星ひので、TMTなど)の紹介や、観測・研究成果など、最新の天文学に関する展示を行っています」と、これまではどうも天文台の歴史をたどってばかりいたようなところから一気に現代、まさに天文台が取り組んでいることなどが紹介されていたのですなあ。
まずもって、早速にエントランスホールで展示解説されていたのは、日本、米国、カナダ、インド、中国の五カ国協力の下、ハワイに建設が進められているという「次世代超大型望遠鏡TMT」の紹介でありました。直径30mの巨大な主鏡を持つ…となれば、要するに光学望遠鏡の一種になりましょうか。先に、もはや望遠鏡は覗くものではないのであるか…という印象があったところながら、やっぱりどうしても目視したい(実際には撮影するのでしょうけれど)という願望があるのかもです。
完成予想の模型を覗けばドーム一杯に鏡面が見えまして、(見てとりにくいとは思いますが)主鏡面をよく見ますと、いわゆるハニカム構造でしょうか、6角形の小さい鏡が組み合わさってできているのですな。日本ではこの主鏡部分に携わっているのだとか。光学製品は日本の得意とするところかもですね。
そんなTMTが狙うのは「太陽系外の地球型惑星の直接撮影と生命関連物質の検出」、そして宇宙のはじまり、「水素・ヘリウムのみでできた「最初の星」の光の検出」であるということで。技術が進んで「もっと見える」ようになると、「もっともっと見たい」というのが開発を後押ししていくのでしょう、現在運用中の「すばる望遠鏡」がかなり高性能であるが故に天文学者の方々にとっては呼び水ともなっていようかと。
こちらは先に覗いた天文機器資料館の階段部分の壁に(ガムテープで無造作に?)貼られていた「すばる望遠鏡が撮影した木星と土星」の写真ですけれど、これだけくっきりはっきり見えるということは、やっぱりもっともっとと思ってしまうのもむべなるかな、でしょうかね。ちなみに、TMTは直径が30mということですが、すばるの方は主鏡の直径が8.2m。それでも「世界最大級」とは、TMTが度外れた大きさが想像できようかというものです。
と、奥の展示室へと足を進めていきますと、現在進行形のプロジェクトの紹介に至ります。なんだかこの辺になりますと、JAXAの見学とごっちゃになってくる気もしてきますですねえ。例えば、太陽観測衛星「ひので」の運用自体はJAXAが担い、そこで得られる太陽観測データを活用した研究を国立天文台でやっているということになりましょうかね。
そんな「ひので」に搭載されている可視光・磁場望遠鏡の主鏡と副鏡はこのような。主鏡にはハニカム形も見えますけれど、TMTはこれを巨大化したものといったらいいのかもですね。
で、この搭載望遠鏡を使いますと、真っ赤に燃え上がる太陽(とは、些か科学的でない表現ですが)の炎が舞っている見た目よりも奥の奥まで見通せるようで。中で何が起こって、表面の見た目にどうつながるか。この辺りを解明するのに役立つようですな。
衛星利用では火星探査、水星探査などなど進行形のものはありますけれど、そちらはやはりJAXA寄りの話のような気がしますので、天文台らしい(?)「VERAプロジェクト」とやらのことを。
「日本列島の4カ所に配置される電波望遠鏡を組み合わせて観測すると、直径2,300Kmの望遠鏡と同じ性能を発揮することができ」ることを利用して、「銀河系の精度を100倍向上させ、その精密立体地図を作る研究計画」がこのプロジェクトであると。
そういえば宇宙の立体地図ということでは、4D2Uドームシアターで見られる映像にも関わっておりますな。これの精度を上げるために直径2,300Kmの望遠鏡とは、TMTの直径30mに驚いてもおられないわけですが、そこはそれ、電波望遠鏡と光学望遠鏡とでは少々ロマンの点で異なるような。宇宙を眺める少年少女にとってはやはり自分の目で見られるのが何よりというわけで(笑)。
だからこそでしょうけれど、これまで見学コースで見てきた歴史的観測機器とは別に、敷地の片隅にはこんな小ぶりの観測ドームがあるのですな。もっぱら一般公開用として50cm望遠鏡が設置されていて、月に2回ほど定例観望会が行われているようです。ここでもまた「科学の子」が生み出されていることでありましょう。ただ、さだまさしの古い歌に『天文学者になればよかった』なんつうのがありますように、何となく宇宙に惹かれるのは大人になってもでしょうかね。って、よおく思い返してみますと、この歌の歌詞、およそ天文ロマンではありませんでしたなあ(笑)。