先に「国立天文台三鷹キャンパスは歴史的建造物だらけ…」てなふうに書きましたですが、もちろん新しい施設、建物がありますのは言わずもがな。「レプソルド子午儀室」や「ゴーチェ子午環室」の近くにもこれ、このとおり(?)。

 

 

…と言いつつ、何もないではないの?と思うのも当然、最先端研究に関わる施設はこの細長く続く芝地の地下(!)にあるのですなあ。まあ、ひと月くらい前のEテレ『ザ・バックヤード』で国立天文台を取り上げた放送回をご覧になった方は「ああ、あそこか!」と思いあたるところかと。こんな形の観測施設が地下にあるわけでして。

 

 

地表でもって看板を見ている位置は、下にある300m通路の中間から左手寄りくらいのところですかね。普段見られないところに入り込む番組では特別に地下施設へと案内されていましたけれど、一般見学者は「この下にねえ…」と想像するばかり。ですが、この地下で何が行われているのかは、説明版を見ておきましょうねえ。

 

地下にあるのは「レーザー干渉計型重力波望遠鏡」というものでして、300mの間隔で折れ曲がっているところからか、「TAMA300」と呼ばれるそうですけれど、そも望遠鏡とは視界の開けたところで覗き見るもの…てなイメージはすでにレトロSFの世界なのかも。電波望遠鏡自体、もはや覗き見るものではなくなっているわけですものね。

 

ともあれ、非常に微細な振動である「重力波」を捕捉するためにできうる限りの干渉を排除すべく、地下に設置されているようですけれど、ではこれで何が分かるのか、解説板にはこのように。

重力波は、時空のひずみがさざ波のように時空そのものを伝わる現象です。重力波の存在は、アインシュタインの一般相対性理論によって予言され、電波望遠鏡による連星パルサーの観測により間接的に証明されていますが、重力波が直接とらえられたことはありません。重力波をとらえることができれば、宇宙のはじまりや超新星爆発の中心部、ブラックホールの表面など、これまでの観測手段では見えなかった宇宙の姿が観測できると期待されています。

単純な印象として、地下に潜っているものが電波望遠鏡でもとらえられないものをつかまえられるのか…とはピンと来にくいところがありますけれど、まあ、なんにつけ科学の最前線は、それこそEテレ『サイエンスZERO』あたりでかみ砕いてもらわないと理解が及ばないのですけれどね(苦笑)。

 

ですので、木立の中の道を抜けて開けた芝地に出ますと、見えてきたものに「ああ、天文台であるなあ」と些かの安心感があって。といっても、やはりヒトの眼で覗くのではない電波望遠鏡なのではありますが。

 

 

で、こちらの「6m ミリ波電波望遠鏡」はもはや観測には使われておらず、「日本の電波天文学の出発点ともいえる望遠鏡」、「電波天文学の重要な歴史遺産」としてここに静態展示されているとは、なんだか「碓氷峠鉄道文化むら」に並ぶ車両を思い出してしまうところです。

 

 

お隣にはもそっと小ぶりな、そして何やら科学工作でもあるような手作り感ある望遠鏡も展示されておりましたよ。この「1.2m パラボラアンテナ電波望遠鏡」は太陽電波の観測用だそうで、1968年、野辺山に太陽電波観測所が設けられると、三鷹から野辺山に引っ越ししていたと。今は古巣に戻って展示物になっているわけですな。

 

と、気付けば望遠鏡の話にばかりなってしまっておりますが、そもそもは国立天文台の三鷹キャンパス内には歴史的建造物ばかりではないであったということを記すつもりでしたなあ。ということで次には、展示アンテナのある広い芝地の奥に見える大きなドームに向かいます。さすがにこれはレンガ壁でも木造でもなさそうなので、歴史的建造物ではなかろうと思うところでして…。