先日(10/8)の晩はさぞかし夜空を見上げていた方々が多かったことでありましょう。夕方のニュースで「すこし欠け始めましたね」てな話があって、一応気に掛けてはいたものの、うかうかしているうちにすっかり皆既月食の状態を逃すことになってしまい…。

 

 

取り敢えずは「赤褐色になる」と言われたその片鱗は見て取ることができたので、まあいいかと(笑)。ともあれ、夜空を見上げて月星を眺めやる。古来からヒトには、何かしら遠くあるものへの憧れみたいなものが備わっているのでしょうか。天文学というものも、そんなところから始まっているように思うところです。

 

とそんなふうに話を切り出したところで、この間の小淵沢滞在中に出かけた野辺山のことを少々。JR小海線で清里までは何度も出かけていますが、そのひと駅先にある野辺山には初めて出向いたのですな。

 

JRの駅としては最高所となる標高1,345.67mにある(路線としてはちと清里寄りに最高所がある)ことで夙に知られるわけですけれど、今回訪ねたのはそんん空に近い野辺山らしい、こちらの施設なのでありましたよ。

 

 

正式名称が実に長い。大学共同利用機関法人自然科学研究機構国立天文台野辺山宇宙電波観測所と。八ヶ岳の麓である点でさほどに清里と変わることはあるまい…てなふうに考えていたのは大きな間違いでありまして、甲州清里から信州野辺山に入りますと、実に広大な土地が平たく広がっている印象。山裾を離れて木立よりも農地の方が目に付くところなのですね。高所であって、空に向けても大きく開けており、しかも降雨量が少ない…ということは雲がかかることが少ないとも言えましょうか。宇宙観測には打って付けの場所なのでありましょう。

 

ですので、そんな場所にはパラボラアンテナがずらりと。小さなものから大きなものまで、かくもたくさん並んでいようとは想定外でしたですなあ。単にたくさんというわけではありませんで、それぞれに役割が異なっているのだそうでありますよ。

 

 

こうした並びを見ておりますと、ついこの間まで古墳の話などを書いていたものですから、あたかも古墳に付随する祭祀場に並ぶ埴輪の列を思い浮かべてしまったり(笑)。もちろん役割は祈りといった原初的なものはなくして、太陽表面の活動を探るための「電波ヘリオグラフ」という電波望遠鏡なのですけれど、2020年3月末で運用を終えたとなりますと、もはや偶像のようなものにも思えてきますですねえ。

 

 

「電波ヘリオグラフ」は小ぶりの代表格ですけれど、もそっと大きなものとなりますと「ミリ波干渉計」というものになりましょうか。台座の周りに線路が見えておりますけれど、これは望遠鏡の移動用らしいですなあ。

 

 

公式HPの説明に曰く(写真には3台しか見えていませんが)「6台のアンテナをケーブルでつないで同時に観測することで、最大で直径約600mの電波望遠鏡に相当する解像力で天体画像を描き出」すことができるのであると。本来的に望遠鏡というとレンズで覗く、天文台といえばドーム型の屋根が開いて大砲のような望遠鏡が出てくる…てなことを思い浮かべるのはもはやレトロな世界でしかないのでしょうかね…。ちなみに、こちらの望遠鏡も運用を終えているとか。

 

とまあ、あれもこれも運用終了となってきますと、この施設自体、もはや見学のためだけの施設であるのか…とも思うところながらさにあらず。こんな看板がありますのでね、確かに電波望遠鏡への干渉を避ける必要があるのですなあ。

 

 

では、現在も運用されている望遠鏡とは?!いよいよ真打登場というわけでして、いささかもったいぶった感じで観測所敷地内の一番奥に鎮座ましましておりますのが「45m電波望遠鏡」であると。

 

 

先に見た「ミリ波干渉計」のアンテナ直径が10mであるのに対して、こちらは45m。いやあ、威容を誇っておりますなあ。1982年に完成して以来、毎年改良を続けて世界トップクラスの観測施設として運用され続けているそうですが、ちなみにかかった費用は約50億円とか。果たして高い買物なのか、安い買物なのか。この頃に事業仕分けがあったなら、「世界トップクラスでなくてはダメなんですか」と言われてしまったかも…。

 

ところで天体観測にもシーズンがあるようでして、10~11月は準備期間、12月から本格的な観測シーズンに入って4月まで継続、その後5~9月はメンテナンス期間となるのだとか。あったかくなってくると大気中の水蒸気量が増えてしまい、観測には適さないそうで。このメンテナンス期間、パラボラアンテナは真上を向いた状態になって、これがアンテナの「お休みポーズ」だそうでありますよ。

 

と、ひとしきり観測所内を眺めて周りましたですが、見学コース沿いにはいろいろな内容の解説パネルが設置されておりまして、そこで知った天文学の(素人でも咀嚼できる)ことを、改めてまとめておきたいと思うところです。近頃、Eテレで『コズミックフロントΩ』を見ていた程度で太刀打ちできないかもしれませんが…(笑)。