さてと、「アクアマリンふくしま」の中をひと巡り、 「潮目の海」を表した大水槽なども見てきて、同施設の研究や活動を紹介する「オセアニック・ガレリア」というコーナーに戻ってきました。いくつかのブースに分かれてそれぞれに個性ある展示となっておりますが、まずは福島県小名浜の漁業文化の一端、鯨捕りに関するコーナーです。
そも日本の捕鯨の始まりは?…ということですけれど、展示解説にはこのように。
日本での鯨資源の利用は縄文時代から始まっています。専門集団による捕鯨は16世紀中頃には成立しており、長宗我部元親が豊臣秀吉に鯨を一頭献上したという記録も残っています。1675年に和歌山県太地町で網取による古式捕鯨が始まり本格的な産業として根付いていきました。
古式による捕鯨の始まりは和歌山でしたか。千葉県にある白浜や勝浦などの地名が和歌山由来でしょうし、漁業関係の文化で和歌山から東国へ伝わったことっていろいろあるのでしょうなあ。そう言えば、漁業関係ではありませんが、醤油造りも和歌山から銚子へと伝わり、利根川を遡って野田にたどりついたのでした。文化もまた黒潮に乗ってきた…となると、俄然和歌山の存在感が高まるところかと。
さはさりながら、どうもその古式とはいえ当時の最先端であった、船団を組んで組織だった行動を要する漁法はすぐさま真似されるものでもなかったようではありますね。
磐城地方の捕鯨は正保年間(1644~)には隆盛となり、本格的展開は寛文年間(1661~1672)に行われていたと考えられています。当時の磐城平藩は内藤氏が藩主を務めていました。内藤家は磐城へ転封する前は佐貫藩主として房州捕鯨の根拠地勝山も治めており、磐城においても鯨漁を奨励したようです。
だんだんと最先端の導入は図られるにせよ、文化五年(1808年)に刊行された『鯨史稿』という書物には「東山道 陸奥州 磐城」の項に「定まりたる捕鯨の方あるに非ず。其鯨を獲ることあるは、常総と同じ」てなふうに記されて、古くからやってきた力まかせの?捕鯨が続けられていたようにも窺えるところでありました。ちなみに全くの余談ながら、映画『超高速!参勤交代』で過酷な大名行列を強いられた湯長谷藩内藤家は平藩の支藩でありましたなあ…。
ところで、こちらの浮世絵、『大鯰江戸の賑ひ』という一枚は幕末(1860年頃)に描かれたようですが、江戸湾に鯨が舞い込んで江戸っ子たちが大騒ぎしている場面でしょうかね。黒い巨体が潮を吹いていて、この生きものは鯨なはずなのですが、当時の江戸っ子は「大鯰が現れた!」と見たようで。幕末頃も大地震が多かったですものね。それにしても、この頃でも鯨と鯰が混同されていたのでもありましょうか、それとも地震がらみの風刺画であるか…。
と、この「オセアニック・ガレリア」には捕鯨の話の他にもトピックスはあるわけでして、「地球環境の保全活動」を紹介するコーナーがあるあたり、いかにも環境水族館を標榜する由縁でもありましょうか。
とりわけ、こちらの紹介などは福島が直面している問題なのですよねえ。
「アクアマリンふくしま」では近くの海辺の3カ所で毎週、環境放射線を独自に測定しておりHPで公表しているのであると。ですが、HPをうろうろした限りでは2018年12月の測定値しか見つからなかったのはどうしたことか…。とまれ、もひとつ奥のコーナーはもはや全世界的な問題になっている点でありましたよ。プラスチックごみの問題です。
今や、海岸などにレジ袋やらペットボトルやらが漂着している光景を目にすることは少なくありませんけれど、便利な便利なプラスチックは「自然界では分解されることがありません」というやっかいさを抱えておりますね。近頃ではバイオ由来の素材を使ったプラスチックてなものが出てきて、さも環境に優しい印象を醸していますけれど、これもモノによってはやはり分解されないものがあると言いますから、困ったものです。
さらに「紫外線などにより硬くなり、細かく砕けていきます」となれば、塩梅の悪いことこの上なし。砕けたものはマイクロプラスチックと呼ばれますが、昨今はもそっと微細であるとしてナノプラスチックなどとも言われ、とにかく小さい。でも、依然としてプラスチックはプラスチックとして残ってしまうという。
この微小物をオキアミなどが取り込み、それを小魚が食べ、さらに大型魚が餌とし…、小魚にしても大型魚にしても、人間が食するところとなれば、人体にも微細なプラスチックが蓄積されていくのだ…という連続性の中で考えますと、末恐ろしい(どうなってしまうか分からない怖さといいますか)気がしてくるわけです。
ただ、そうは言っても現代においてプラスチックの便利さに浸りきってしまっている人類がこれを手放すことはできないような。となれば、先にも触れたバイオ由来であって、かつ自然界で分解(しかもできるだけ速い時間で)されるという、都合のいいプラスチックが開発されるまで、焼け石に水ではあるにせよ、少しでもプラ系ごみを出さないようにしたいところでありますね。前にこぼしたとは思いますが、極端に走ると現在のスーパーでは一切買物ができなくなるのがまた困ったところなのですけれど。
ということで、環境水族館「アクアマリンふくしま」の面目躍如たる展示コーナーのお話でありました。