いやはや、東京でもまた雪 ですなあ。

都心はともかく、多摩の方は先日の大雪の残骸がまだまだあちこちで目に付くというのに…。


とまれ、月日は巡っていくところではありますが、

横浜美術館のコレクション展でシュルレアリスム作品を見た話 が続いておりまして。

展示解説にあった「11の標語」をたどって4つめまで見て来たわけですが、

ここからはちと歩幅を大きめにとって進めましょう。


7つめの標語がいかにもシュルレアリスムらしいと思われるものなのでして、

「おとなの人形あそび」とありました。すぐに思い浮かぶのはこの人の作品でありましょうねえ。


ジョルジョ・デ・キリコ「吟遊詩人」


ジョルジョ・デ・キリコ の「吟遊詩人」という作品。

横浜美術館には「ヘクトルとアンドロマケ」 という彫刻作品もありますけれど、

こちらも「吟遊詩人」と同じくマネキンがフィーチャーされた造形で、

キリコ作品にはよぉく登場しますよね。


解説では、シュルレアリストたちが「人形」を「ものと生命の境目を行き来する存在」として

着目したことを記しておりましたが、画面によってはそれよりも素の人間の姿とか、

上っ面を剥いでむき出しになった人間性とか、そうしたものに見えたりすることもありましょう。


それだけにこの「吟遊詩人」では、左下に見えている人影こそが気になる存在ではないかと。

姿を見せなくても「人」たることは示せるものの、陰もまた人間性不在であって、

大きく扱われたマネキンとの関係をいやでもあれこれ想像してしまいますから。


一方、改めてシュルレアリストが「人形」に着目したことを気に掛けてみますと、

同じコーナーにあったポール・デルヴォー の「階段」にも描かれている、

画家がまいど描く画一的な女性像も人形だと捉えることも可能だったのですなあ。

これまであまりそのようには考えてこなかったですが。



もっともこの作品がこのコーナーに配されたのは、

左手前のマネキンの故なのかもしれませんけれどね。


さて、お次の標語は「讃える方法」というものです。

「偉大な先達へのオマージュ」となる作品を作ることはシュルレアリストにもあることながら、

「だれに捧げたものかすぐには判らない手の込んだ表現をとることがしばしば」あると。

あまりにも「いかにも」過ぎて、ニンマリしてしまうほどでありますよ。


マックス・エルンスト「子供のミネルヴァ」


これはエルンストの「子供のミネルヴァ」という作品。

遠目には雪にとりまかれた幻想の中に人物像が描かれて…的ですけれど、

近寄ると塗りの筆跡などから制作過程の画家の姿を思い浮かべる楽しみもある一枚です。

が、これはレオナルド・ダ・ヴィンチと詩人エリュアールを讃えたものだというのですね。


展示解説にそれとは俄かに判らないとあるように、まあ詳しくない人にはなおわからない。

オマージュという形をシュルレアリストがまま手がけたにせよ、

見る側に読み解く予備知識を求めることになってしまうとすると、

ちと特殊なカテゴリーと考えた方がいいのかもしれないとも思いましたですよ。

もっともそうした見方から離れてはいけんよと言われているわけではありませんが。


    と「11の標語」を飛ばしに飛ばして、取り上げる標語としては最後になるのが

シュルレアリスムにとってはかなり重要と思われるもの、曰く「絵と言葉が出逢った」です。


シュルレアリストは「絵と言葉の間にも『思いがけない出逢い』を期待しているようでもありまして、

ひとつにはタイトル付けにその傾向が表れてもいるような。

上のエルンストの「子供のミネルヴァ」でも、単純にタイトルと画面を見比べながら

見る側が何かしらを思い描く、それは必ずしもオマージュ作品であることを意識せずに…

ということにもつながっていくわけですが、かなりシュルレアリストのタイトル付けはあざといなと。


ルネ・マグリット「王様の美術館」


そのことは、例えばこの作品もそうですけれど「王様の美術館」なんつうタイトルで、

ルネ・マグリットのタイトル付けにはひときわ顕著と思うところなわけです

実際マグリットは作品タイトルに関してこんなことを言っていたのだあね…という紹介が

展示解説の中にもありました。


ここで触れたいところではありますが、実のところもうしばらくいたしますと、

ブリュッセルで立ち寄ったマグリット美術館のことを書くことになろうかという頃合い。

それだけに申し訳のないところながら、マグリットの言葉はそのときに

引用させてもらおうと考えておりまして(笑)。


…ということで、シュルレアリスム作品をいろいろ見ることで

あれやこれやの話をしてまいりましたですが、これにて終了。

ここまでのところで取り上げ漏らした横浜美術館所蔵のシュルレアリスム作品を

次にはさらっと落穂拾いして、本当のおしまいとなる予定でございます。


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