人事評価のQ&A -402ページ目

13.応援を断って取り組む!

 多少困難に出会っても自分一人で取り組み、最後までやり抜こうとするのですが、結果としてうまく行かないことが多い人がいます。どう評価したらよいでしょう。


 最後まで自分一人でやり抜こうという姿勢は大事です。しかし、業務に支障をきたすようでは困ります。責任性というのは与えられた仕事を完了するために最善の努力をしたかどうかということです。
 何らかの事情、例えば、突発的事情が発生したとか、仕事そのものが難しいとか、自分の能力が不足しているとかで仕事が完了できない予測がついた場合は、その仕事を完了させるためにあらゆる手段、例えば、上司に報告し援助を得るとか、同僚に手伝ってもらうとかしてでも完了させる努力が必要です。


 自分一人でやり抜こうとしてたまたま失敗をしてしまったのであれば、責任性があると判断できますが、いつも失敗するのは、責任性をはき違えているか、見通しが甘いかのどちらかです。
 したがって、責任性「CまたはD」(責任性というよりは一人よがり)か、責任性「BまたはA」判断力「CまたはD」となります。

12.頑張ったり、手抜きをしたり

 目立つ仕事は張り切って、すごい責任感を持ってとりくむが、目立たない仕事は人任せにしたり、手抜きをします。この場合の責任性はどう考えればよいでしょうか。


 責任性を含めて、情意考課の標準Bはいつも期待通りということです。
規律性でいえば、いつも規則を守って期待通り「B」ということです。3回規則を破ったが5回見本を示したから帳消しというわけにはいきません。いつも守って当たり前なのです。


 同じように、責任性においても、かげひなたなくいつも一生懸命で、期待通りということです。目立たない仕事だから手を抜くということであれば、期待にそぐわないわけですから、責任性は「C」となります。


 このように、情意考課は考課期間を通して、連続的に期待通りであることが標準「B」の要件となります。「C」に該当するような行動があり期待通りの連続性が途切れた場合は、「C」となります。


11.遅刻の常習犯?

 遅刻の常習犯が数名います。しかし仕事のできる役職者に多く、他の子の倍仕事をし、遅刻に対してもいつも深く反省をしているのですが、なかなか起きれないようです。意識は高いと思っている子たちなのですが、遅刻というのは他の子に示し持つかないし・・ひどく罰していいものでしょうか。


 仕事ができるということと、遅刻をするということは別問題です。仕事ができるということはそれはそれで、能力や成績でプラス評価ができますが、遅刻をよくするということは情意考課(勤務態度評価)の規律性でマイナス評価となります。


 いいところはいいでほめてあげる(その点に関しては高い評価をする)、しかし、いけないとことはいけないで注意し、その点についてはマイナス評価をするということになります。


 評価上は上記のようになりますが、問題は本人が遅刻をせず、今まで通り一生懸命仕事をするように仕向けることです。どうるればよいか、・・・・・・

 上司の対応が大切です。
遅刻が悪いと思っていないのであれば、なぜ遅刻がダメなのかをまず教える必要がありますが、今回の場合は、「遅刻はいけないことだ」ということをわかっているのに遅刻してきる状況です。
こんな人間に例えば別室に呼んで、「規律とは・・・」とか「遅刻とは・・・」などいくら説明しても効果はありません。


 わかっているのにしない、できないは理屈の問題ではありません。
対応が甘いからナメているにすぎないのです。そんな人間には、感情に訴える必要があります。簡単にいうと大きな声で叱ることです。遅刻をしてきたら、その場その時に「おそい、何時だと思っているのだ」と叱ることです。
「またか、気をつけろよ」くらいでは、しかったうちには入りません。周りの人がびっくりするくらいの大きな声で叱る、これが一番です。もちろんしかるときは、その行動のみを叱り、性格や人間性を叱ってはいけません。


いけないことはいけない、仕事ができるできないことは関係なく、いけないことはその場で叱る。
そのような対応、そのような職場環境、そのような管理者の育成が必要ではないでしょうか。
 「その場その時に、その事実を叱る」これが必要です。

その上で、人事考課の情意考課で規律性にCまたはDをつける、ということになります。

 その場で叱りもしないで、皮肉のひとつぐらい言って、評価で他の項目も含めて大幅にマイナスにするとか、あとから遅刻をしたから賞与を減額するとかというのは、よい方法ではありません。
その場で指摘できないから、叱れないから、後で人事考課で仕返しをするというのは、不信感を招いてしまいます。 今回のケースにおいては(状況はよくわかりませんが)、遅刻をしてきたらその時点で、激しく叱る、これがまず第一歩だと思います。その後、2時間くらいしてから別室に呼んで、仕事ができる点をほめて、期待していることを話します。そして、その後もう一度遅刻をするということは、会社だけでなく本人にとって、あるいは本人の将来にとってどれだけマイナスになるかを話します。これでなおるはずです。激しく叱る。2時間は我慢する。これがポイントです。 

10.あがってしまってうまく話せないのは?

 仲間うちで話をしているときは、全く問題ないのですが、お客さんの前や会議の席で話をするときは、上がってしまい、何をいっているのか分からなくなってしまいます。 こんな場合、表現力はどう考えればよいでしょうか。

 
 お客さんと話をしたり、会議で発言することがその人の職務の中に入っており、等級にふさわしい内容の話であれば、当然人事考課の対象になります。
 上がろうが上がらなかろうが、わかりやすく話が出来ないということは、表現力で「C」と判定されます。また、そのことで業務に支障があれば「D」となります。
性格やクセ、資質等は関係ないということです。その業務(この場合はわかりやすく話をすること)を期待通りできるかどうかだけをみます。性格だからしょうがないと言って見逃すわけにはいきません。わかりやすく話が出来るように努力するなり、工夫するなりすることが必要です。


 もし、改善が不可能であったり、身体的な問題がある場合は、はじめからそのような職務を与えないようにするべきです。
 人には性格や身体的なものなどで、向き不向きの仕事があります。
これらの適性は、仕事を与える前に考慮すべきものです。
仕事を与えた以上は、その仕事をどれだけできるかどうかで人事考課を行います。
 

9.仕事を完了し雑談しているのは?

 多少手が遅くても、時間ぎりぎりまでコツコツ仕事をやっているタイプと、 手が早くて、時間前には仕事を完了し、雑談しているタイプがいます。どう評価すればよいでしょう。

 
 一人一人、別々に考えます。まず、手が遅いということは能力(技能)に問題があると考えられます。時間ぎりぎりに仕事が完了するということは成績考課(仕事の量)に問題があります。自分の仕事を完了するためにコツコツやるのは当たり前です。
したがって、技能「C」、仕事の量「C」、責任性「B」となります。


 また、手が早くて時間内に仕事が完了するということは、その仕事の難易度にもよりますが、等級レベルの仕事であると考えれば、能力(技能)[A]、仕事の量「B]または[A]となります。


 自分の仕事を完了して雑談しているという点については、自分の仕事が完了しているわけですから責任性は不問ですが、「自分に余裕があるにもかかわらず、同僚の手伝いをしようとしない」という点で協調性「C]、または、「自ら進んで、現状以上の仕事をしようとしない」という点で、積極性「C]が該当します。
 また、雑談が顕著であれば、規律性「C]も該当します。

8.恩着せがましい協力は?

 仕事の応援を頼むといつも手伝ってくれるのですが、恩きせがましいことを言ったり、いやな顔をしたりします。この場合の、協調性はどう考えるとよいでしょうか。

 
 この場合も、事実だけを冷静に判断します。いつも手伝ってくれるのですから、協調性「B」となります。人のいやがる仕事や緊急の頼みごと、また、自分自身が忙しい時の手伝いであれば「A」となります。
 イヤイヤであっても、手伝ったという事実に着目してください。


 逆に、非常に愛想がよく、調子のいい事は言うがいざとなると「うまい理由」をつけて手伝わないという場合の方が問題です。
 話し方や態度、日頃の人間関係などでつい感情的になってしまいますが、人事考課をするときは冷静に事実だけに着目するようにします。

7.自分の仕事をせず協力するのは?

 受付にいつもの加藤さんに変わって田中さんが座っていました。「どうしたの?」と尋ねますと、「加藤さん、風邪ぎみで病院に行っているんです。その間だけ、私が見てあげることにしました」という返事です。田中さんはよく他人の仕事を手伝ってくれます。
 この間は秘書室でタイプを打っていましたし、1週間ほど前には営業で封筒に切手を貼っていました。彼女は会計課ですが自分の仕事にはあまり身が入っておらず、他人の仕事を手伝うことばかり熱心です。このような場合どう評価したら良いでしょうか。

 

 会社の中にはそれぞれ持ち分というものがあります。
みんながそれを守ることによって組織の中の分業が成り立っています。ところが、個人が持ち分を守ることだけにあくせくし、他人の仕事に注意を払わなければ全体としての効率は低いものになってしまいます。
そこで、それぞれの持ち分の接点のところでは助け合い、力を合わせる必要があります。それが協調性です。


 しかし、協調性を云々できるのは自分の持ち分を一通り果たした上でのことです。
つまり、責任性が『B』以上でないと協調性に『A』をつけることはできません。
自分に任されたことをやらずに他人の手伝いばかりしているのは、単なるでしゃばりに過ぎません。


 このケースの場合田中さんの日頃の行動から、責任性が『A』(困難を克服し、自分の業務を最後までやり遂げようとした)、または責任性が『B』(自己の業務を最後までやり遂げようとした)であれば、協調性を『A』と考課してもよいです。
 文面から判断して、責任性が『C』(自己の業務はほったらかしになっている)とすれば、単なるでしゃばりとしか取れないわけですから協調性の考課対象とはなりません。

 もし他に協調性を考課できる行動(チームワークを高めるようとする態度など)があった場合、その度合いに応じて『B』以下に考課をすることになります。
 

6.ネクラなタイプの評価は?

 少しネクラなタイプの若者がいます。仕事が遅れたり、ミスがあっても同僚や先輩はだれも助けてくれません。他の人であれば、回りの人が協力して何とか仕事は完了するのですが、彼の場合は、いつも残ってしまいます。やはり、協調性に問題があるのでしょうか。

 世の中には、人付き合いの苦手な人や、無口でネクラな人もいます。しかし、それは性格の問題で人事考課には全く関係ありません。あくまでの、職務行動のみを対象にします。


 仕事が遅れたり、ミスがあるということは、その仕事の難易度にもよりますが、等級レベルの仕事であれば、成績考課、能力考課は「C」となります。


 しかし、協調性は協力する方の問題であって、協力される方は関係ありません。協力するほうが、選り好みの協力をしているわけですから、そちらの方を協調性で「C」とすべきです。
本当に協調性があれば、組織目標のために相手がだれであろうと、機会があれば協力するはずです。相手によって、態度を変えるのであれば、協調性に問題があるとしなければいけません。 

5.残業拒否の場合!

残業を拒否するのは、どう評価すればよいですか。


まず、規律性について考えてみましょう。
よく残業命令と言われますが、残業は命令できるものでしょうか。厳密には、命令とは業務時間内で通常の担当業務内においてのみ、効力があるわけです。したがって、残業は命令できません。あくまでも依頼になります。逆に、時間内で通常の業務内のことであれば、言い方は依頼であっても、命令になります。


 命令は受けて当たり前、標準B、拒否すればC・Dが妥当でしょう。
しかし、依頼は受ければ、協調性でプラス評価(B以上)、拒否しても不問ということになります。

 つまり、残業は命令ではなく、あくまでも依頼であるため、拒否しても規律性には該当しないということです。

 次に、責任性を考えてみましょう。
これは、残業の理由によってちがってきます。会社の都合で突然残業が必要になったり、仕事量そのものが多くて残業が必要な場合は、本人の責任は問えませんので残業を拒否しても不問とすべきです。残業を引き受けたのであれば、組織への協調ということで協調性でプラス評価、または、量的チャレンジということで積極性でプラス評価できます。

本人のミスや能力不足で残業が必要になり、これを拒否したのであれば、責任性でC・Dと判定できます。この場合、残業を行って当たり前、責任性Bが妥当でしょう。


 ただし、自分の責任で残業が必要な場合でも、残業できない理由があり、それを事前に連絡し、手を打ったのであれば、残業できなくてもマイナス評価はできません。

 ここでいう、段階BとかC、Aはこの一つの事実に対して、ということであり、これだけで、半年の評価が決まるということではありません。
 また、プラス評価というのは、その度合いにより、それぐらい当たり前Bの場合と期待以上Aの場合があるということです。

補足説明
 「就業規則、36条協定があれば、残業は「命令」てぎますし、就業規則で懲戒処分の対象ともなり得ます。」というご意見をいただきました。
確かにその通りだと思います。(むやみに拒否すれば) 現在の法律の解釈として、
「36協定の範囲内であれば、正当な理由がなければ残業は拒否できない。」が通説だと思います。
ということは、「36協定の範囲内であっても、正当な理由があれば拒否できる。」という意味でもあります。
 問題は「何を正当な理由か」という問題であり、たとえデートであっても本人にとって一生を左右するものであれば、正当な理由となると思うのですが、いかがでしょう。

 また理由の内容はともかく、その理由は本人が申告するわけであり、それによって、「正当化かどうか」が決まるのであれば、絶対的命令にはならないのではないだろうか。
(本人申告による理由により、従わなくてもよいことがある)
そのような理由で、あえて、「依頼」という言葉を使っています。
誤解のないようにお願いします。
「残業はむやみに拒否できるということではありません。あくまでも正当な理由があれば拒否できるということです。」

補足の補足

 私は、残業を命令で「しょうがなく行う」ものではなく、各人が残業の必要性を感じて、行うものだと思っており、そのように日頃から、意識付けすることが大事だと思っています。

法律や36協定をたてに、嫌がっているものを無理やり残業させるのではなく、そうならない様に日頃の意識付けをしっかり行うことの方が大事だと思います。
命令しなくても、必要性を感じて、従業員が自ら申告してくるように、仕事の重要性や目的を知らしめることが経営としては大事だと思っています。
その意味で、管理者研修等で、残業は命令でさせるものではなく、必要性を理解させて、行うものである。一方的命令はダメだ。といっています。

4.あいさつは評価に関係するか?

 Y君は職場の通路ですれ違ってもめったにあいさつをしません。自分からあいさつをすることは全くといってよいほどなく、こちらから「おはよう」と声をかけると、機嫌の良い時には「おはようございます」と小さな返事が返ってきますが、多くの場合はちらっとこちらを見るだけで、後は知らん顔をしています。同じ会社の中にいても、あいさつさえできないのでは人間関係がうまくいくはずがありません。そこで、Y君の協調性を『C』と評価したいと思います。どうでしょうか?

 同じ職場の中であいさつをするしないは、仕事以前の社会常識の問題です。また、Y君が持って生まれた性格・生い立ちの問題ともいえます。ここで考えていただきたいのは、人事考課は人間そのものを評価するのではなく、仕事を遂行する能力・取り組み姿勢・結果を評価するものだということです。
 
 Y君があいさつをしないことによって、仕事上具体的な不都合を引き起こしているのであれば、その具体的事実を上げて評価に反映すべきでしょうし、そうでなければ評価の対象にはなりません。
 もし、「あいさつをしなさい」という業務命令があって、あいさつをしないのであれば服務規程に反するということで、規律性を『C』とすることもできますが、あいさつは業務命令でするものではないと考える方が適切です。

 大切なのはそのことを評価に反映させてからY君の態度を改めさせようとするのではなく、気持ち良くあいさつをすることが、周囲の人達にもY君にとっても良いことなのだとあなた自身のアプローチで気づかせることではないでしょうか。