人事評価のQ&A -400ページ目

33.対人関係が苦手な社員

 営業部長をしている45才のものです。2人の部下のうち一人に手を焼いています。日ごろから、私に対しても反抗的な態度をとります。以前顧客から、態度・しゃべり方が悪いので、担当を替えてくれ、とクレームがありました。彼は仕事は細かい事まできちっとやります。ただ、対人関係はニガテです。他の社員のなかにも、彼の言動に不快感を持っている人はおります。

 さて、この社員を解雇したいのですが、どのような方法が適切でしょうか。また、解雇できないのであれば、どのように退職にもちこめばよろしいでしょうか。


 ちょっと問題のありそうな社員さんですね。
ただ、性格が悪いからといって、即解雇というわけには行きません。

 今後の行動に着目し、何らかのトラブルを起こしたら、警告書を出すようにしましょう。警告書には「過去に何度か指導したが、本人が善処しなかった」ことを明記します。
 それで、改善されれば問題ありませんが、それでも変わらない場合は、始末書を書かせてください。そのとき、今後このようなことだあれば、厳しい処分があるということを告げます。
 それでも、トラブルがあれば、減給等の処分をする。
 退職勧奨する。という風に順を追って処理するとよいと思います。

 始末書3枚(5枚で確実)取れば、普通解雇の時の根拠にできます。
 

いずれにしても、何かトラブルがあったら、その事実と指導したことがわかる文書を残しておくとよいでしょう。

32.相対考課の方が現実的

 絶対考課では基準を揃えるのが難しく、相対考課の方が現実的ではないか。

 
 社員同士比較して優劣をつけることがよいことかどうか?それぞれ条件もちがうわけで納得性があるかどうか、疑問があります。育成のためには絶対考課が必要です。人事考課は職務遂行能力の分析評価であり、言い換えれば「職務遂行能力の健康診断」です。

 基準に対して劣っているかどうか、勝っている点はどこかを判断して今後の仕事に活かしていくためであり、今後の行動を改善するためのものでもあります。


 例えば、実際の健康診断で「あなた○○さんより健康です」といわれて何か役に立ちますでしょうか。
 育成のためと考えれば、やはり、絶対考課で行う必要があります。処遇だけでいいのであれば、相対考課で行うこともできますが、組織力を必要とする企業ではチームワークが保てないので難しいようです。

31.公正な評価ができるかどうか心配だ。

 公正な評価ができるかどうか心配だ。


 人事考課と評価を区別して考える必要があります。評価とは「物の善悪・美醜などを考え、価値を定めること。」と辞書に書いてありましたが、人事考課とはその評価の範疇の中で「仕事上の行動や結果、能力を評価すること」になります。


  仕事をする中で、誰をどのように評価するかということは、基本的に自由であり、気に入ったとか、ウマが合うとか、いろいろありますが、基本的にどう思うかは自由でしょう。 そして、それにあった付き合いをすればよいことであると思います。


 しかし、人事考課と評価とは別物です。年に2回か3回、人事考課を行う時は、そのような個人的な判断ではなく、決められたルールと基準で行うことが「人事考課」なのです。人事考課は一定のルールと基準によって仕事上の行動や結果を評価することであって、決して人物評価や好き嫌いの評価ではありません。 


 人事考課する前に、人事考課のルールと基準を明確にすることが大前提です。そして、「事実に基づいて、基準と照ら合わせて、ルール通りに」人事考課を行えるように考課者訓練をしっかり行うことが必要です。考課される人にも、被考課者訓練で人事考課のルールや基準を浸透させると効果的です。

30.会社の都合でクビにできる?2

 会社の業績不振で製造部門の正社員を半分くらいにしたいと思います。補充は派遣でまかなう予定です。合法的に解雇できるでしょうか?(製造業の経営者Yさん)
 

 よく経営者の中に予告手当を払えばいつでも解雇できると思っている人がいますが、この予告手当は解雇するための最低条件であり、それだけで解雇できるものではありません。


 普通解雇には次のような、制約がありますので、その制約をクリアーする必要があります。


1.法律上の制約
次のような解雇は認められません。
・ 国籍・信条・社会的身分を理由とした差別的解雇・業務上の災害
・ 疾病による休業期間中及びその後30日間
・ 産前産後の休業期間及びその後30日間
・ 結婚・妊娠・出産・産前産後の休業等を理由とした解雇
・ 育児休業の申し出・取得と理由とした解雇
・ 労働基準監督署長等への申告を理由とした解雇
・ 労働組合への加入・結成・組合員であること及び労働組合の正当な行為を理由とした解雇

2.自主規制
・ 労使の話し合いによって定められた内容

3.民事上の制約
・ 権利の濫用と認められる解雇は認められない。
・ 解雇する場合には合理的な理由が必要である。
 特に合理的な理由が業績不振である場合、なぜ対象になったのかの合理的な理由が必要です。
 また能力不足の場合は、具体的な根拠、指導の適切さなどが問題になりますし、勤務態度不良の場合は少なくとも3枚以上の始末書が必要でしょう。

Yさんのご質問ですが、極力整理解雇を回避する手を打つことが必要です。
 役員の賃金カット、管理職の賃金カット、非管理職の賃金カット、時間外勤務抑制の施策、たとえば交代勤務制やフレックスタイム、希望退職を募る、新規採用の停止などです。
 それでも会社存続のために整理解雇が必要な場合は、被解雇者の選定基準を明確にした上で、雇用者とよく話し合って、たとえば退職までの期間とか、転職支援とか、解雇される人の生活を考慮して、慎重に進めることが必要です。 


 整理解雇は特段雇用者に責任がないのに解雇されるわけですから、十分な配慮が必要です。
(まったく責任がないわけではないが、工場で上司の指示通り作業をしている人よりは、経営者の方がすっと責任が大きいはず。)

29.会社の都合でクビにできる?

 先日、社長から「業績不振で会社をやめてくれ、1か月分の給与を払うから」といわれました。言われるとおり、会社をやめないとといけないのでしょうか?(社員Tさんから)


 退職や解雇については慎重に考える必要があります。まず、退職。解雇について整理してみましょう。


1.自主退職
労働者からの一方的な雇用契約の解約
最低14日以前に申し出る。(退職の意思表示をして、2週間経過すれば、使用者の同意,不同意は関係なく、退職となる)


2.定年退職
雇用契約の消滅
就業規則等に規定されたとおり。


3.合意退職
労働者と使用者が合意の上での雇用契約の解約
合意した条件のとおり。


・奨励退職
 使用者からの退職奨励を労働者が受け入れた場合


・希望退職
 使用者が退職者を募り、それを希望した場合


4.解雇
使用者からの一方的な雇用契約の解約
30日前の予告(または予告手当)が必要。


・普通解雇
 勤務態度不良や能力の著しい低下などによる解雇
 (それ相応の理由が必要、解雇権の乱用はだめ)


・整理解雇
 工場の閉鎖、事業縮小などによる解雇
 次の4つの条件を満たしていることが必要
 1 人員整理の必要性
 2 解雇回避努力の履行
 3 被解雇者選定の合理性
 4 手続きの妥当性


5.懲戒解雇
使用者からの一方的な雇用契約の解約
解雇予告も予告手当の支払いもなく、退職金も支給されないのが一般的。(使用者は、労働基準監督署の除外認定を受ける必要あり)
就業規則の懲戒解雇の規定に当てはまることが最低条件。


 Tさんの場合は、上記3の合意退職(奨励退職)に当てはまると思われます。1か月分の給与を払うというのは、合意を得るための条件であって、「1か月分(30日の予告手当分)払うから、会社の都合で即解雇」というわけにはいきません。
したがって、Tさんが合意すれば退職になりますし、合意しなければ退職にはなりません。 よく経営者の中に予告手当を払えばいつでも解雇できると思っている人がいますが、この予告手当は解雇するための最低条件であり、それだけで解雇できるものではありません。

28.残業命令?

 現状、残業するのにあたり従業員から「時間外勤務申請書・報告書」というのを提出してもらい事前申請という形で残業しております。 が、従業員の中から「会社側の命令で残業している」という形に変えて従業員自らやりたくて残業しているのではないというのを形付けて欲しいと言われました。 今までこのような話を聞いたことがなく総務側としてもどのようにしたら判らない状態です。「残業命令書」なるものが、世間では使われているのでしょうか?


 「残業命令書」なるものは、聞いたことがありません。残業とは、業務の必要に応じて管理者が要請し社員が了解した場合、または 社員が申し出て管理者が承認した場合に発生するものであり、 一方的に、管理者が命令するとか、社員が自由に行うというものではありません。
 残業命令という言葉がありますが、絶対的命令ということではありません。 「正当な理由があれば拒否できる」ということが、法律解釈ですから やはり、本人の合意が必要ということになります。(例外的な場合は、ありますが)


 今回、申請という言葉に対して、疑問を感じていらっしゃるようですから、 申請という言葉をなくして、単にその事実を届けるというニュアンスで 「残業届」になさるとよいと思います。当然そこには管理者の承認印の欄は必要でしょう。

27.考課者訓練の内容

 当社では新しく評価制度を改定し、評価者のレベルアップのため考課者訓練を実施したいと考えております。どのように考課者訓練を進めるのでしょうか。また、当社の制度にあわせて実施してもらえるのでしょうか?

 

 おっしゃるとおり、人事トータルシステムが狙いどおり機能するかどうかは、その核となる人事考課が公正に行われるかどうかにかかっており、人事考課を公正に行うためには、考課者訓練等を通じて考課者のレベルアップを図ることが不可欠です。


 人事考課については、各社いろいろな考え方や、用語があり事前打ち合わせの上、ルールの確認、用語の確認を行い、それにあわせて研修テキストを作成し、実施いたします。もちろん、人事考課の浸透状況により、研修内容を調整いたします。


 人事考課の浸透状況というのは
 ・ 明確な人事制度が確立されてない。この研修をきっかけに制度の確立を目指す状況
 ・ 新しく人事制度を確立し、その浸透を図るとともに評価者のレベルを上げたい
 ・ 人事制度は定着したが、人事考課にばらつきが多い。面接も十分でない。
 ・ 人事制度も定着し、人事考課や面接もしっかり行われているが、それだけで、育成や活用に発展していない。
などの状態をいい、その状況と目指す方向によりカリキュラムを組替えます。


 研修の進め方は、基本的には
 基本的な講義→事例研究→解説→グループワーク→解答解説と応用
になりますが、状況により、基準作りや実例に対するQ&Aなど、打ち合わせの上、より効果の高い方法を選択します。

 また、時間や予算の関係により、人事考課の研修だけでなく「人事考課通信添削」や「人事考課力診断テスト」を併用して、より効果が上がるようにカリキュラムを組みます。


 例えば、2日間の研修を、時間の関係で
「診断テスト+1日研修」 や 「1日研修+通信添削」 に組替えるなどです。 人事考課者訓練は、ただ単に考課力を向上させるだけでなく、部下の指導育成能力を開発し、リーダーシップを強化するという点においても著しい効果があります。


 また、考課者訓練の講師は、考課基準や考課ルールがある程度浸透するまでは、外部の講師の方が良いでしょう。これは、予期せぬ質問があったり、事例研究で感情的になったりして社内講師では対応できないことが多いからです。
以上、考課者訓練についてですが、最終的には各社打ち合わせの上内容を決定しております。


 考課者訓練のホームページ

26.賃下げはできますか?

 社員50人ほどの工場を経営していますが、業績の悪化が続き、賃金の引き下げを検討しております。合法的に賃下げはできるのでしょうか?


 雇用契約も「契約」ですから、契約の中身である賃金などの労働条件を変更するには、原則として、使用者・労働者双方の同意が必要です。したがって、労働者の同意のない一方的変更は無効となりま。逆にいえば、双方が合意すればよいということでもあります。賃下げや減給には次のようなものがあります。


1.減給処分
就業規則上の懲戒規定による減給処分
一回の減給額が平均賃金の一日分の半額を超えてはならず、かつ、一賃金支払期における総額がその期における賃金総額の十分の一を超えてはならない。
雇用契約どおりであり、合法


2.返上
管理職従業員などが本人の意思により賃金の一部を返上する措置(本人の真意であればOK)
合意によると見なし合法

 

3.役職交代による手当減額
役職手当が支給されており、役職が変わった場合、当然それに見合った手当に変更される。手当が引き下がることもあれば、役職を外れた場合は0になる。
使用者の配属権限に帰することであり、合法


4.職務給の減額
職務給を採用している場合、職務が変わり職務給も変更になることは当然のことであり、職務給が引き下がることは当然ある。


5.年俸制
年俸制はもともと、労働者の業績等に応じ、交渉の結果として賃金の減額がありうることを予定している制度であり、年俸制の根拠規定がある以上は、賃金減額は当然ありうる。
合法


6.職能給の減給
基本的に職能給の減給はない。
合意による減給ルールがある場合はOK。
合理的ルールがあれば合法


7.制度見直しによる減給
仕事内容が変わらなく、制度が変わったという理由、あるいは新制度での格付けが変わったという理由で賃金を引き下げることは違法との判例あり。合意があればOK。
合意がなければ違法


8.年齢による賃金カット
一定年齢以上は00%カットというような賃金カットは労働者の合意があればOK。通常、定年延長等の代替にて合意している。使用者の一方的な賃金カットは違法との判例あり。
合意がなければ違法


9.業績不振による賃金カット
業績不振で整理解雇を防ぐための賃金カットについては、労働者の合意が得やすい。また、就業規則不利益変更の合理性に該当するケースが多い。
手続きを踏めば合法


 今回の場合は上記の9に該当しますが、会社の状況をよく説明し、雇用の確保のために、「いたしかたがない」ということを納得してもらうことが必要です。

25.人事考課と処遇のズレをどう考える?

 人事考課でAをつけたのに 昇給や賞与ではBになって、部下にフィードバックした内容とことなり返答に困ってしまった。おかしくないか。

 
 人事考課をするということと、昇給や賞与の査定を決めるということは別問題です。人事考課は半年間上司が部下の仕事振りを見て、よかった点悪かった点を確認し、本人に伝えるとともに今後の育成に活かしていこう、あるいは今後の仕事の与え方に反映しようということです。

 その点を伝えればよいわけです。賞与の評価や昇給の評価は1次考課者が考課した時点ではわかりません。2次考課もあれば、相対区分もあります。
 わからないことを言うから返答に困るのです。わかることだけ言ってください。1次考課の時点でわかることは、仕事振りに対してどうだったかだけです。


 人事考課するときは絶対考課で行いますが、処遇に活用するときは目的に応じて「絶対区分と相対区分」に分けて活用します。考課者は人事考課をするということと、処遇に活用するということは別の問題であると考える必要があります。(育成のための人事考課)


・ 絶対区分
 絶対区分とは、ウエイト計算により算出された点数をそのまま使用する方法で、全員Aとか、全員Dということが起こりうる可能性があります。


・ 相対区分
 相対区分は算出された点数で、上から順に並べ分布規制により、総合評価を決めていく方法です。必ず、S何人、A何人と規定の人数(%)が該当します。これは、定員の決まっている賞与等の配分に利用されます。

24.他の場所にいる部下の評価方法は?

 考課者と被考課者が違う事業所に在籍しており、普段の行動が見えない場合、どのように評価すればよいのかわからない。

 

 評価のために仕事をしているわけではありませんから、特別にチェックするとかの必要はありませんが、通常業務の中で仕事振りをよくみておく努力は必要です。そしてその中知りえた事実で評価することになります。


 成績考課は、目標(与えた仕事)の達成度を見るわけですから、離れていても結果を見ればわかります。
 そのような結果になった事情を本人から聞いたり、関係者からの情報を本人に確認したりして、取り組みの状況を確認し、その妥当性から能力考課や情意考課を判定します。


 ここで注意したいのは、周りの情報だけで判断するのではなく、本人に確認してから評価に反映するということです。
 仕事の結果を見れば成績考課ができ、また、その結果になったのは何か理由があるはずです。その点を確認すれば、能力考課なり情意考課なりが判断できます。判断する事実や情報がない場合は情意考課はBとなります。