セリフは「ヘタ」でいい。

本日は、この話題の第3回となります。

 

ここまでのお話は、こちら👇

 

 

<第1回>

右 セリフは「ヘタに喋る」が正解!?

 

<第2回>

右 演技も、人生も。「ヘタ」こそが、本当の自由を獲得する方法

 

 

セリフと台本の「癒着」状態。

 

つまり、台本の文字や文脈の「イメージ」を、ただセリフに乗せてしまったり。

台本という文脈から引き出される論理的な理解でセリフを喋っている。

 

 

そうすると、相手とのコミュニケーションで生まれた、直感的で生な感覚(サブテキスト)が失われる。

 

 

要するに、リアルな瞬間とはかけ離れていってしまうので。

役の人生を「本当に生きる」(追体験)という演技は達成されなくなってしまう。

 

 

 

さて、ここに。

演技とは、台本の言葉をただ上手に表現するものではない、という、ある有名なエピソードがあります。

 

この話は、僕が学んでいたアクティング・コーチから教わり。

 

ミュージカル『エリザベート』に出演していた時には、ルキーニ役の高嶋政宏さんが、ある日のカーテンコールでのスピーチで同じ話をされていました。

 

 

 

▲ミュージカル『エリザベート』でルキーニ役を演じる、高嶋政宏さん(右)。

この写真……フレームから外れて写ってませんが、僕もステージにいました笑

ちなみに、映画「舞子はレディ」で高嶋さんが演じていた高井良雄役、舞台版では僕が演じさせていただいておりました。

 

 

 

……どんなエピソードかというと。

 

 

 

とある、レストラン。

そこに、俳優と脚本家が来店しました。

 

テーブルに座った彼らは、お芝居について議論を交わしていたそうです。

 

脚本家は「お芝居に大事なのは、脚本だ」と主張していました。

ところが、俳優は「いやいや、お芝居に大事なものは、演技だ」と主張。

 

「脚本だ」「いや、演技だ」

 

ぶつかり合う二人の意見。

そしてついに脚本家が、テーブルに置いてあった料理のメニューを手に取り、こんなことを言いました。

 

「よし、わかった。君が『演技の方が大事だ』というなら、このメニューを読んで、ここにいる客たちを泣かせてみたまえ。」

 

演技の方が大事なら、どんな本でも、レストランのメニューでだって、泣かせられるということだろう?

でも、このメニューで泣かせられなかったら、やっぱり一番大事なのは脚本だ、ということになる。

 

脚本家にそう迫られた俳優は、

 

「よし、分かった」

 

と言って、メニューを読み始めました。

 

 

そして。

周りにいた客たちは、思わず涙を流したそうです……。

 

 

 

 

……この話は、「演技とは何か?」を語る上で、とても有名なエピソード。

(ちなみに、実話だそうです)

 

 

 

そして、この話。

昨年、マツコ・デラックスさんと有吉弘行さんの、テレビ朝日のバラエティ番組「マツコ&有吉  かりそめ天国」で取り上げられ、なんと、本当に実験までやっていたんです!!

(普段、あまりテレビは見ないのですが……偶然、オンエアを見れました!)

 

 

ゲストで登場したのは、二人のお笑い芸人さんと、一人の俳優さん。

メニューを読み上げる「俳優」を演じます。

 

それに対し、一般の方数名がモニターで参加して「観客」役に。

 

その観客に向かって、メニューを読む。

読めるのは10品までで、それまでに観客を泣かせられなかったらアウト。

 

 

……結果は。

なんと、最後に登場した俳優の前野朋哉さんが、メニューを読むだけで観客を泣かせて大成功したのです!!

 

 

 

▲前野朋哉さん。

 

 

 

番組の詳細は、こちらのサイトに掲載されているので、ご興味ある方はぜひ読んでみてください。👇

 

 

 

 

それにしても、前野朋哉さんは。

なぜメニューを読むだけで人を泣かせることができたのか?

 

 

上のサイトにはあまりちゃんと書かれてないみたいですが、番組の中では詳しく紹介してました。

 

 

前野さんは、「セリフをどう言おう」とか、「セリフを感動的に喋ろう」ということは、まったく考えていませんでした。

 

そうではなく。

このセリフを言うための理由(状況)を考えたそうです。

 

 

 

メニューを読む男(役)は、中華料理店の息子。

少年だった頃、お昼になると、お客さんと一緒にこの店のテーブルに座って。

忙しく働いているお父さん、お母さんに注文をして、お昼ご飯を食べていた。

 

やがて、夢を叶えるために実家から巣立った、かつての少年は。

今、夢に破れ、実家に戻ってきた。

 

そうして、久しぶりにお店のテーブルに座り。

あの時よりも年老いたお父さんとお母さんに向かって、あの日と同じように、料理の注文をしている……

 

 

 

前野朋哉さんが用意したプランは、たったこれだけだったそうです。

決して、「鶏の唐揚げ」というコトバを、上手に言おうとしたのではありません。

 

 

 

 

 

 

以前、アメリカで放送されていた、歌のオーディション番組「アメリカン・アイドル」にハマっていた時期があったんですが。

その中で、審査員の最上級のホメ言葉に「お前は電話帳でも歌えるぞ!!」というのがありました。

 

それだけの歌唱力を持っていたら、電話帳をメロディーに乗せて歌うだけで人を感動させられる。

 

メニューで泣かせた俳優のエピソードと、とてもよく似ていますね。

 

 

 

▲僕が一番見ていた頃の、審査員の皆さま。

パフォーマンスに感涙しつつ、審査員たちのコメントがいちいち的確で、参考になってました。

 

 

「僕も、そういう俳優を目指したい」

「エリザベート」のカーテンコールでの高嶋政宏さんは、そうスピーチしていました。

 

 

演技の師匠は僕に、「そんな俳優になってくださいね」と微笑んでくれました。

 

 

普段、ほとんどテレビを見ない自分が、たまたま見ていた番組。

 

 

いろんな演技のスタイルはあるけれど。

僕が目指す「演技とは?」という道は、自然と照らし出されていたんだな。

 

 

 

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 今回登場した作品

 

 

 

 

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