台本読解の重要性について……
谷口浩久@演技向上アカウント@equestc台本の読解ができていない限り、どのコトバを立てれば良いのかすら分からないはず。 「読解ができていない→伝わらない」という、コトバ的な理由は、ここにある。 きちんと読解して、的確なコトバを立てなくては、結局、観客が分からないどころか、誤ったインフォメーションが伝わってしまうのです。
2021年11月09日 16:15
……この問題については、以前のブログ記事でもお話させていただいています▼
さて。
今日はちょっと別の側面から、台本読解の大切さについて見てみましょう。
よくある、演出家やコーチからのダメ出し。
「相手役にもっと集中しろ!!」
「相手役とコミュニケーションを取れ!!」
この言葉に「はい!」とすぐ答えて、そして実行できるだろうか??
相手役に注意を向けること、コミュニケーションを取ることは、当たり前すぎるくらいの “演技の基礎” です。
ところが、どれだけの人がその基礎を理解し、そして実行に移せているだろうか??
こんな指示が演出家やコーチから飛んできたら、皆さんの胸の中に、次のような声が聞こえるのではないだろうか??
「ちゃんと集中してるつもりだし……」
「これ以上、どうしろってんだよ……」
実は、単に「相手に集中しろ」「コミュニケーションを取れ」という指示ほど、乱暴なものはありません。
俳優側は、そんなことは重々承知でしょうし、やれるもんならもぅすでにやってる!って話。
▲「もっと相手役に集中しろ!」「オッケィ!!」……って、そんな簡単にやれるのなら、もうみんなやってます!!
なぜそれができていないと指摘されるのだろう? 難しく感じるのだろう?
……このダメ出し、なぜ「乱暴」かと言うと。
例えば、皆さんがいきなり「探せ!」と言われたら、どうしますか??
「探せ!!」
……さぁ、どうしますか??
「え……??」
って、動きが固まるんじゃないでしょうか。
次に、
「いきなり『探せ』って言われても……どうすりゃいいの??」
という思考が起きる。
▲オイオイ、いきなりそんな風に言われても困るぜ。
その通りなんです。
当たり前かもしれませんが、人はいきなり「探せ!」とだけ言われても、何も探せない。探しようがない。
だって、「何を」探せばいいのかが分からないのですから。
で、何を探したらいいのか分からないから、とりあえず動きが固まる(命令してきた相手を見つめる)か、何かを探してる「フリ」をする。
当たり前のことですが、「何を?」という具体的な指示語がない限り、「探す」という行動を実行できないですよね?
(試しに、今、身の回りの「赤いもの」を探してみてください。……具体的な指示さえあれば、なんなく実行できたと思います!!)
つまり。
「相手に集中しろ!」と言われても、相手の「何に」集中して良いのかが分からない限り、集中のしようがない。
具体的な目標がなければ、集中のしようがないんです。
「コミュニケーションを取れ!」と言われたって、「何について」コミュニケーションを取ればいいのか分からない。
これ以上、コミュニケーションの取りようがない。
安心してください。
それって、人間としてすごく自然なことですから(笑)
……ところがやっぱり、演技の場面で「相手に集中しろ!」「コミュニケーション!」と、謎すぎる言葉が飛んでくる。
▲もっと相手役に集中しなっさぁ〜い!! コミュニケーション取りなっさぁ〜い!!
▲だから、それが分からないって言ってんの!!
結論。
実はこれ、演出家やコーチが悪いと責める前に、「集中すべきこと」「コミュニケーションをすべき内容」について、俳優が見つけられていないのが、そもそもの原因です!!
役は、相手役の「何に」注意を払っているのか?
相手役と、「どんな」腹の探り合いをしているのか?
それを具体的に掴めていないから、相手に注意の向けようがない。
言葉の裏のコミュニケーションを取りようがない。
つまり、これが「台本が読めていない」ということなんです!!
男「もう時間遅いけど、帰らなくていいの?」
女「うん、明日仕事だし…そろそろ帰ろうかな?」
例えば、たったこれだけのやり取りでも、二人を包み込む「状況」が理解できていれば、いろんな意味を持つようになる。
男は、女のことが嫌いで、早く帰って欲しいと思っていたら?
男は、女に愛の告白をしようとしているのだとしたら?
女は、男に別れを告げようか迷っているのだとしたら?
女は、男が他の女性と浮気をしているのを知っていたら?
一回ずつ、それぞれの状況を入れながら、二人のやり取りを見てみてください。
……変わったでしょ??
▲その想い、口には出さないけど……。
相手に集中したり、コトバの裏側のコミュニケーションって、やっぱり恋愛に例えるのが一番分かりやすい(笑)
状況をクリアにすることで、相手の「何に」注意を向けるべきか、見えてくる。
ソワソワしている相手の視線なのか、その表情なのか、あるいはチラリと腕時計を見る相手のしぐさなのか。
しっかり状況を掴んでいれば、相手との「セリフの裏側のコミュニケーション」が自然と生まれてくる。
想像が湧いてくる。
台本読解とは、役の置かれた状況をきちんと拾い上げる作業。
そこから、役は何をしたがっていて、何に注意を向けているのかをクリアにする作業。
その時、コトバの裏側で、どんなコミュニケーションが生まれているのかを見抜く作業。
セリフというのは、海面に突き出た氷山の一角でしかありません。
海の中を見れば、ホントの氷山はもっと深くまで続いている。
台本読解をせずにパフォーマンスをするというのは、氷山の「海面に見えている部分」しか見ていないのと同じです。
役を氷山に例えれば、海面の下に氷山の本体は沈んでいます。
台本読解とは、その「海中の氷山」を見ていくのと同じ作業なのです。
▲海面に見えているところだけに、騙されるな!!
台本読解術を使ってきちんと読むことで、役の行動や目的、取り巻く状況を掴み、整理することができます。
その結果、どのセリフを立てて言おう、といったことはもちろん。
注意を向けるべきところが具体的になるので、相手への集中力を高めることができ、コトバ以上のコミュニケーション(腹の探り合い)が生まれてくる。
「もっと相手役に集中しろ!」
「ちゃんとコミュニケーションを取れ!」
その乱暴な言葉も、氷山で言えば「水面に見えている部分」に過ぎず。
海の中を探れば、「台本の読解不足」という根深い原因が見えてくるかもしれません。
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