慢性上咽頭炎(微熱・慢性疲労)の整体治療
耳鼻科の検査で、上咽頭の炎症の消失が確認された症例の解説です。
患者Tさん=30才-男性-会社員の症例より
① Tさんの病歴・・・
患者Tさんは、半年ほど前から倦怠感が生じ、また少し経ってから微熱も出だしたので某病院を受診し、抗生剤等の処方を受けていたそうですが、効果がほとんど無かったそうです。そこで別の病院を受診したところ、今度は筋痛性脳脊髄炎(慢性疲労症候群)の疑いとして、漢方等の治療を受けていたそうです。それでも効果は出ず、さらに別の病院を受診し、そこでは上咽頭の炎症所見が確認された事から、微熱-倦怠感などの原因として慢性上咽頭炎の指摘を受け、投薬治療やBスポット治療を受けているそうですが、一進一退だったそうです。鍼灸や整体、オステオパシーなども受診されましたが、改善しなかったそうです。
② Tさんの診察
・血圧は100/50~60mmHgと、やや低めだそうです。
・血液検査では、特段の異常は無いそうです。
・左の後頭部から頸部にかけて、コリの様なツッパリ感があるそうです。
・微熱は37度の前半くらいだそうです。
・咳や痰は無く、胸部レ線でも異常は無いそうです。後鼻漏のようなものも、ほとんど無いそうです。
・食物アレルギーがあり、舶来モノの果物を食べると口峡炎が生じるそうです。
・半年ほど前から両耳で軽度の耳鳴りが続いているそうです。
・胸部-頸部の聴診上、血管雑音は無く、心音や呼吸音に特段の所見はありませんでした。
・甲状腺や頸部リンパ節の腫脹はありませんでした。
・下顎の前方への突出運動(アイーンの動さ)や、左右への臼摩運動に可動域制限がありました。
・腹部聴診上、血管雑音は聴取できませんでしたが、左季肋部(十二指腸空腸曲付近)に著明な血管拍動があり、Kさん本人も自覚していたそうです。微弱なグル音が聴取されました。
・腹部触診上、腹部全般が陥凹していました。右下腹部全般に著明な緊張と圧痛があり、同部の押圧で上腹部への放散痛がありました。臍より上方の腹部全般に著明な張り(緊張)があり、その張りは左右肋骨弓にかけて扇状に広がって、肋骨弓の隙間に指が挿入できませんでした。
➂ 治療目標と整体治療
⑴ 上行咽頭動静脈、最上咽頭動静脈および翼突管動静脈の循環を改善し、上咽頭のうっ血を解消する
⑵ 上咽頭粘膜上皮細胞の線毛運動を促進する
⑶ 上記⑴~⑵により上咽頭部の局所免疫力を回復する
・静脈還流促進テクニック
・翼突筋静脈叢解放テクニック
・上行咽頭動脈解放テクニック
・咽頭静脈叢解放テクニック
・顎動静脈解放テクニック
④ 経過と結果・・・
・5診目来院時、
今まで37.4~5度あった微熱が下がり出し「この二-三日は、37.0度前後になっています」と仰っていました。ただ倦怠感に変化は特に無いそうです。
・7診目来院時、
「最近は36度台の後半にまで下がってきています」と仰っていました。そして倦怠感も「少しマシになってきている気がします」と仰っていました。
・9診目来院時、
「倦怠感はまだ少し残っていますが、先日耳鼻科を受診したところ、担当医から『(上咽頭の)炎症がほとんど無くなっていますよ』と言われました」と仰っていましたので、今回の集中治療を終了することにしました。
⑤ 今回の症例の概説、、、
◆ 「微熱-倦怠感」の原因は ? 慢性上咽頭炎or慢性疲労症候群…
・今回の症例は、その初診の段階で少し迷いがありました。それはTさんの主訴を「慢性上咽頭炎」とするのか、「微熱-倦怠感」とするのか、それで整体治療方針は変わってきますが、その治療方針が確定しづらかったからです。なぜなら、Tさんの辛い症状は「微熱-倦怠感」である事に間違いはありませんが、その原因となる診断名が各医療機関で異なるからです。つまり、慢性上咽頭炎であれば、それに最適な治療方針で臨む必要がありますし、筋痛性脳脊髄炎(慢性疲労症候群)であれば、当然その治療方針は変わります。また、ひょっとしたら、これら以外の未知の原因かもしれません。
・またTさんは、①の病歴でも述べたとおり、病院だけでも数件受診されていますし、また鍼灸や整体・オステオパシーなど、複数の医療機関の受診をされていて、おそらく、各先生方も独自の診立てで治療されていると思います。しかし結局、そのどれも功を奏さなかったのは、事実として残っています。
◆ 慢性上咽頭炎に絞った整体治療目標を設定…
・上記の病歴-治療歴から、そして②のTさんの診察所見でも、これといった「微熱-倦怠感」の原因となる所見が無かったので、現段階で確実に分かっている「慢性上咽頭炎」に絞って(微熱-倦怠感の治癒に結び付くかどうかは不明だが)、その治療方針を立てる事にしました。
・もう一つの診断名である筋痛性脳脊髄炎(慢性疲労症候群)については、その原因や治療方法が確立されていませんし、さらに未知の別の原因を考えるより、まずは目先の確実に分かっている病態から対応していく方が(消去法にもなりますし)、早道だと思ったからです。
◆ 「薬が効かない !」症例は、自然治癒力の低下が原因の事が多い…
・ところでTさんは、ずっと以前は抗生剤を服用されていたり、最近ではBスポット治療などをされていたりしますが、どれも著効を示しませんでした。この事は、Tさんの上咽頭の局所免疫力の減退が横たわっているのでは、だから抗生剤やBスポット治療が無効で上咽頭の炎症が持続しているのでは、といった仮説を蜂起させます。
・そこで上記➂治療目標と整体治療に掲げる
⑴ 上行咽頭動静脈、最上咽頭動静脈および翼突管動静脈の循環を改善し、上咽頭のうっ血を解消する
⑵ 上咽頭粘膜上皮細胞の線毛運動を促進する
⑶ 上記⑴~⑵により上咽頭部の局所免疫力を回復する
を目標として、
・静脈還流促進テクニック
・翼突筋静脈叢解放テクニック
・上行咽頭動脈解放テクニック
・咽頭静脈叢解放テクニック
・顎動静脈解放テクニック
を施術する事にしました。
上咽頭への血流を回復し、局所免疫力を上げる
◆ 5診目でやっと治療効果が出始めた・・・
・初診から4診目まではなかなか効果が現れず、少し不安がよぎりましたが、5診目でようやく微熱が下がり始め、7診目には36度台にまで解熱し、また倦怠感の改善も進みだしたので、Tさんに耳鼻科の受診を勧める段階にまで到達したのでは、と思いました。
・耳鼻科を受診後の9診目来院時、担当医から『(上咽頭の)炎症がほとんど無くなっていますよ』と言われました」との報告を聞き、ホッとしました。
冒頭に申し上げた通り、その初診の段階で迷いがあったので、もしその治療方針に間違いがあったとすると、9診治療しようがが10診治療しようが、今までの治療歴通り、Tさんの微熱-倦怠感は改善していなかったと思われるからです。その意味で今回の症例は、運が良かったのかもしれません。
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