二種類の原因によるの慢性腰痛の整体治療
患者Mさん=33才-女性-主婦/検査技師の症例
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① Mさんの病歴・・・
患者Mさんは、20代から慢性的な腰痛があるそうです。腰痛の部位は腰椎L1~L5の縦に長い範囲と、左右第12肋骨下縁から左右側腹部を経て左右腸骨稜にかけての横長に広い長方形の範囲だそうです。これらの部位で一日中重だるい鈍痛がするそうです。前者の縦長の方は昼前後から増強しだし、仕事が終わる夕方頃に一番重痛くなるそうです。後者の長方形の部位は安静時痛もあり、就寝時に横になっても痛みが取れないそうです。整形外科での検査で異常は指摘されなかったので、特段の治療は受けていないそうです。その他に、接骨院での骨盤矯正やマッサージ、オステオパシーと鍼灸治療も受けられましたが、一向に改善しなかったそうです。
② Mさんの診察
・血液検査では家族性の脂質異常症が指摘されていますが、それ程大したことではなく、血糖値などにも問題は無いそうです。血圧は100/75mmHgだそうです。
・月経周期は3か月前後だそうですが、挙児希望なので婦人科にてホルモン療法を受けているので、現在は月経が毎月あるそうです。
・生理痛は無いそうですが、月経時に下腹部が膨隆するそうです。また、排卵痛があるそうです。
・食欲は普通で、便は毎日あるそうです。
・6年生の時、自転車で走行中に右側面から来た自動車にぶつけられて転倒する交通事故にあっているそうです。その際、左頭頂骨後方から後頭骨にかけて陥没し、その開頭手術を受けたそうです。
・職場の環境は、椅子に座って机の上を前かがみになった姿勢で検査をされているそうです。
・腹部聴診上、血管雑音はありませんでした。また微弱なグル音が聴取できました。
・腹部触診上、左右の恥骨結節の上方に緊張と圧痛がありました。
・SLRテストやトーマステストは陰性でした。ナフツイガーテストは左で陽性(左下腿部でしびれ↗)でした。
・下肢の神経学テスト、MMTで異常はありませんでした。
➂ 治療目標と整体治療
⑴ 子宮広間膜の緊張(?)、易刺激性を解消する
⑵ 子宮膣静脈叢など骨盤静脈叢のうっ血を解放する
⑶ 腰椎前腕を回復し、椎間板内の髄核の位置を正常に復する
⑷ 不良姿勢を避ける
⑸ 腰部・腹部の筋肉の筋力増強
・子宮膣静脈叢解放テクニック
・その他の骨盤静脈叢解放テクニック
・子宮広間膜解放テクニック
・マッケンジーエクササイズの指導
・良姿勢環境の時間を増やす
・腰腹部を中心とした全身的な筋肉トレーニング・体操の推奨
④ 経過と結果・・・
・3診目来院時、「(長方形の部位の)安静時痛はかなりましで、以前の半分くらいだと思います。でも腰椎の縦長の部位はあまり変わりません」と仰っていました。
・3診目来院時、初診時陽性だったナフツイガーテストの反応が減弱していました。
・4診目来院時、「この1週間に(長方形の部位の)安静時痛は一度もありませんでした。腰椎の縦長の方はまだあります」と仰っていました。この後、Mさんの別の愁訴(排卵痛など)が改善する12診目まで、横長の部位の安静時痛は一度もありませんでした。また、初診時陽性だったナフツイガーテストの反応も次第に減弱し、これは6診目にはほぼ消失し、その後もこの反応は12診目の最後までずっと陰性でした。従って、安静時痛の方はこれで様子をみて頂く事にしました。
・ところが5診目来院時になっても縦長の腰痛の方は改善しませんでした。そこで5診目より改めて治療方針を変えることにしました。つまり5診目よりマッケンジーエクササイズを取り入れることにしました。マッケンジーエクササイズの指導後に腰の感覚を尋ねると、「何か腰が軽くなった気がします」と仰っていましたので、これを2~3分程度、毎朝と夜にする様に指導しました。
・6診目来院時、「(腰痛は)いつもの半分くらいで、夕方もかなり楽でした」と仰っていました。
・7診目来院時、「今週はほぼ(腰痛は)ゼロでした。夕方や就寝時も痛みはほぼありませんでした。」と仰っていました。
・Mさんの別の愁訴(排卵痛など)が改善する12診目まで、腰痛はほぼゼロの状態でしたので、本件を含む全ての治療を終了し、これで様子をみて頂く事にしました。
⑤ 今回の症例の概説、、、
・今回のMさんの慢性腰痛は二種類の腰痛(原因)が合併していたものと思われます。ですから、なかなかややこしかったのかもしれません。
それではまず最初に、左右第12肋骨下縁から左右側腹部を経て左右腸骨稜にかけての横長に広い長方形の範囲の「安静時痛」から見ていきます。
【横長の安静時痛について】
・いわゆる安静時痛は、腰痛に限らず膝痛であろうが足痛であろうが、運動器=筋骨格系=の原因の可能性は低い、と言われていて、むしろ内臓性・炎症性などの可能性が高まります。最悪の場合、悪性腫瘍や動脈瘤などの重篤な原因の事もあり、要注意のケースとなります。
・ただMさんに関して言えば、その慢性腰痛は10年以上前から続いているので、内臓性などの可能性はありますが、しかし悪性腫瘍などの重篤疾患の可能性はかなり低いものと考えられます。
・ではMさんの腰痛に関係する内臓とは何なのか?が問題となります。そこでそれを考えるヒントがあります。その一つは横長に広範囲な腰痛部位であり、もう一つは月経時に下腹部が膨隆する、という所見です。つまり、前者についてはその腰痛範囲から「腹膜性の腰痛の可能性」が疑われ(☚特に子宮広間膜)、後者については「子宮膣静脈層などのうっ血の可能性」が推測されます。
・整形外科での検査では全くの原因不明ですから、この推測に基づいて治療を進めていくほかなく、実際に施術しました。その結果、安静時痛に関しては4診目にはほぼ全治の状態でしたので、概ねこの考えで良かったのでは、と思われます。おそらく、Mさんの愁訴の一つとして排卵痛がありますが、持病である多嚢胞性卵巣症候群などの影響もあるのか、排卵時の卵胞液などがその周辺に漏れ、それが子宮膣静脈叢付近で癒着を起こし、それが同叢のうっ血や腹膜(子宮広間膜)の易刺激性の原因となって慢性腰痛を生じさせていたのかもしれません。
【縦長の腰痛について】
・次に夕方に増悪する腰椎の「縦長の腰痛」についてですが、これに関しては特段の整体テクニックは施術していません。マッケンジーエクササイズと呼ばれる一種の腰痛体操の指導をし、それをMさん自身で毎日続けて頂くだけでした。
・実は、意外と多くの腰痛患者さんにおいてMさんと同様のケース(☚整体の施術をしないケース)が少なくありません。言い換えれば今回のMさんの縦長の腰痛原因は、整体テクニックやその他の処置では効果が出ないタイプの腰痛原因、だと言えると思います。
・医師法的に診断行為は医師にしか許されていませんので、我々整体師は想像・推測するだけですが、今回のMさんの縦長の腰痛の症例は、おそらく内障症候群的な機序・原因で生じていたのでは、と推測されます。
・内障症候群の説明の前に、ヒトの脊椎について簡単に述べますと、31個ある脊椎は上から頸椎➡胸椎➡腰椎➡仙骨/尾骨と縦に連なっていて、それぞれ下記の様に前後方向に彎曲しています。
頸椎(7個)➡前彎
胸椎(12個)➡後彎
腰椎(5個)➡前彎
仙尾骨(5個の仙椎と3~4個ある尾椎が思春期~成人期頃に1個の大きな仙尾骨に融合する)➡後彎
・ところが、日常生活や仕事による不良姿勢などによって腰椎が「後彎」の状態のまま長時間維持・固定されると、腰椎と腰椎の間に挟まっている「椎間板」と呼ばれる軟骨が変形し、それが慢性腰痛の原因になることがあります。これを内障症候群と呼びます。
・この腰痛理論を提唱されたのはニュージーランドの理学療法士であるロビン・マッケンジーです。そしてその治療法として考案されたのがマッケンジーエクササイズです。これは実に簡単な体操で、そのやり方は以下の通りです。
「伏臥位になり、臍から下は床に接着して伸ばし、臍から上の体幹を後上方に”エビぞり”の様にのけ反らして腰椎の前腕を誘発・維持する事で、変形していた椎間板を元の正常な形に復する」
これが今回、Mさんにして頂いた体操です。
・今回のMさんに関してはその問診から、職場において「椅子に座って机の上を前かがみになった姿勢=腰椎が後彎化している=」でほぼ一日中(☚休憩時間以外)職務している、とお聞きしています。これは明らかにマッケンジーの腰痛理論に合致する状態だと思われます。
・この仮説であれば、Mさんが今まで病院や接骨院・オステオパシー院等で受けた様々なテクニックやお薬などが奏効する可能性が極めて低いのは当然です。逆に言えば、このマッケンジーエクササイズが一番効果的である事は言うまでも無く、実際Mさんも同様でした。
・ただ一つ注意なければならない事は、このエクササイズを一生続けておればOK、と言うものではありません。それはどういう事か、と言うと、このマッケンジーエクササイズが奏効する期間は限りがある可能性がある、と言うことです。言い換えれば今の不良姿勢状態(職場環境)を続けていると、先述の各腰椎間に挟まっている「椎間板」に長期にわたって機械的ストレスが蓄積され、あるいは脆弱化し、将来的に椎間板ヘルニアや変形性腰椎症などに発展・悪化していく可能性がある、と言うことです。
・特にMさんは、ナフツイガーテストが初診時に陽性だったことから、腰椎部の椎間板の突出or脱出などの占拠性病変が疑われますので、尚更注意が必要だと思われます。
注1)…Mさんの初診時に陽性反応であったナフツイガーテストは治療が進むにつれ減弱し、6診目には消失していた。
注2)…Mさんの初診時に陽性反応であったナフツイガーテストがなぜ消失したかについては、我々整体師に科学的に証明は出来ません。しかしそれをあえて推測すると、腰椎部の椎間板の突出or脱出などの占拠性病変が改善された、と言うよりは、本件と並行して整体治療をしていたMさの別の愁訴である「慢性頭痛」や「顔の浮腫み」の際に施術した「頭顔面の静脈還流を促進させる整体手技」によって、その硬膜内圧が軽減していったからではないか、と思われる。従って、やはり長期に渡ってマッケンジーエクササイズに頼ることは、禁物である。
・ですから③「治療目標と整体治療」に
⑷ 不良姿勢を避ける
⑸ 腰部・腹部の筋肉の筋力増強
を加え、Mさんにその旨を理解していただくように何度も説明をし、また念のために整形外科での再検査も勧めておきました。しかし実際には、⑸の腰部・腹部の筋肉の筋力増強はともかく、⑷の不良姿勢を避ける…といった問題への対処として、その職場環境を良姿勢にすることはMさん自身の意見だけで採用される可能性は低く、この点に関しては我々整体師の限界の一つ、だと認識せずにはいられません。
・このタイプの腰痛患者さんを減少させるには、企業の管理職も従業員も、あるいは厚生労働省なども含めてこの腰痛理論を社会的に共有し、それを避ける職場環境を考えていく、それが肝要な事だと思われます。そんな社会が来るまで(来るかどうか分かりませんが)、それまでの間はマッケンジーや筋トレなどで自己防衛するしかないと思われます。もし皆様の中で、Mさんと同様の状況にあるのでは、と思い当たる方はマッケンジーエクササイズや筋トレを実践してみてください。
Ps
腰痛は何十-何百もの原因で起こります。当院においても下記に掲げる様に、患者さんそれぞれの腰痛の原因が異なっています。ですから慢性腰痛だからといって、必ずしもMさんと同様のケースとは限りません。必ず適切な医療機関で精査を受けるようにしてください。
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