日本ファミリーオフィス協会 -35ページ目

古賀茂明さんの「官僚の責任」-ほとんどの若手官僚が同じことを感じている

霞ヶ関官僚というのは、おそらく一般の人にとっては深いコンタクトがない人種だろうが、私にとっては経団連時代や現在を通じて、一番コンタクトのある人々だ。彼らといろいろと本音で話をしたのは、留学中だ。私は学生寮に2年間入っていたが、寮にいる日本人はほとんどが大蔵、通産、外務から派遣された官僚だった。日本人はそもそも少ないこともあって、時間があるときはお互いの部屋でビールでも飲みながら語ったものだ。


役所も20代後半で留学させることから、同世代だったし、気楽に話ができた。皆、東大法学部でトップに近い成績で国家一種試験でトップの人もいた。当時は彼らは皆「国のために何をすべきか」ということを熱く語っていた。しかし、20年経った今、彼らの話は「いかに省益を守るか」というつまらない話になっている。いやむしろ、出世している官僚ほどそういう話をするのだから、何とも残念なことだ。


このあたりの事情を、話題の古賀さんが「官僚の責任」で明確に書いている。官僚で出世するには、国のために何をしたかなどは全く関係なく、「その役所のために何をしたか」であると。まさにその通りであろう。だからその役所のため、必要のない天下り団体をつくり再就職先をつくった人が評価される。しかし、このことは「国家」にとっては損失である。「優秀な」官僚ほど国のためにならないことをやっているのだから、この国の未来は暗い。


そのあたりの事情は、もちろん中にいればすぐにわかる。だから、「おかしい」と思っている若手は多く、外に出れる人は出てしまっているのが現状だろう。多くは「黙って」出て行くが、古賀さんのように言いにくいことを公言する人もたまにいて、この人たちは永遠に役所から睨まれる。しかし、こういう人々が一般社会で考えると「まとも」なのだから、本当にいやになる。


最近、ある中堅官僚と話をしたが、彼は「役所の出世は、天下り機関をいくつ作ったかということと、「長時間労働」だ」と言っていた。このことは古賀さんの本にもあり、なぜ霞ヶ関官僚がいつも終電まで職場にいるかというと、そうしなければ出世できないから、ということだ。確かに、夜、仕事がなくても酒を飲んで終電までいるという役人を見たのは一度や二度ではない。


日本をよくするには、まず霞ヶ関と永田町を変えねばいけないというのは、衆目の一致するところだろうが、これは実現するのは考えられないほど困難だ。内部から変わってくるとはとても考えられない。私も生きている間に何か「一石を投じる」ことをしたいとは思っているが。

防衛大学学長に国分良成教授ー大学時代に論文のご指導を頂いた

防衛大学の五十旗頭学長の退任に伴い、国分さんが後任になるという話は聞いていたが、先週正式に決定した。国分さんは慶応の石川忠雄ゼミの先輩で、慶応の塾長になると思われていたが、防衛大の学長ということになった。この方には20数年前の学生のときに非常にお世話になった。


慶応の場合「学生論文集」というものがあり、慣例として有力ゼミから一名投稿することになっていた。石川ゼミからも毎年誰かが出しており、たまたま石川先生から「今年はお前が書け」と言われ、初稿を先生に見せにいった。当時、石川忠雄塾長は臨教審の仕事などいくつもの要職をつとめていたので、とても見る時間はないだろうと思っていた。


先生の指示は、何と、「国分君に直してもらえ」ということだった。当時は国分さんもゼミを持ち始めたばかりで多忙だったが、さすがに石川塾長の指示は聞かねばならない。学生の論文なので、「出せるもの」にするため相当ご迷惑をおかけしたが、何回かの修正の後、何とか出せるものになった。しかし、今見ると甘くて話にならないような論文ではあるが、国分さんに論文の書き方をいろいろと教えて頂き、その後の基礎となった。


経団連に就職し、4年目にアメリカに留学したが、日本の大学とは比べ物にならない厳しい世界を体験した。その時にも国分さんに教わったことが随分役にたった。国分さんも若いころハーバードに留学し、苦労されたという話を聞いた。私などに比べると全然できる方だが、日本人は誰でも苦労するんだと安心もした。


防衛大学の学長は中曽根内閣のときに石川先生にも声がかかったような要職だ。五十旗頭さんも審議会の会長をするなど、随分目だっていた。国分さんがどうなるか分からないが、沖縄の米軍問題が国の防衛のみならず、大きな政治イッシュになっている今、重大な役職であることは間違いない。







なぜ政治主導ができないのかー官僚は政治家をバカにしている?

民主党が政権をとった一因に「官僚政治から脱却し政治主導を実現する」ことにあった。国民の多くはこれに賛同したはずだ。ところが現実はこの通りである。なぜこんな簡単なことができないのか。政治家(大臣)は官僚をクビにすることができる生殺与奪権を握っているはずだ。


しかし、ある意味、答えは簡単だ。官僚の方が優秀だからだ。よく有力省庁の昔の留学仲間や仕事仲間と話をすると必ず出るのが、「官僚で出世できない人が政治家になる」という話だ。今は大臣や知事になっている○○は役所にいた時には仕事ができなくて困った、という話はミミタコのように聞いている。残念ながら事実のようだ。


そうなると、菅さんや野田さんが財務省のいいなりになって「消費増税」などと言っている理由もよく分かる。田中真紀子が外務大臣のときに官僚の人事に口出しをして(法律上も当然できるはずだが)変な情報をリークされ追い落とされたこともよく分かる。よく官僚が「今度の大臣は話を理解してくれなくて大変だよ」と愚痴る、とともに安心する理由もよく分かる。


政治主導を実現するには、優秀な人が政治家になるシステムつくりが先決になることは明らかだ。現状でいくら「官僚からの脱却」を言っても、現状が示すとおり、すぐに元に戻されてしまう。政治家に与えられた権限を官僚に骨抜きにされてしまうのだ。使命感を持ったふりをして「税と社会保障の一体改革をするのが自分の役割」と公言する野田総理は、国民には洗脳された「オセロ中島」と同じにしか見えないだろう。


まずは、優秀な人が政治家をめざす日本にするのはどうしたらいいかを考えることが先決で、それが実現できれば、わざわざ「政治主導」などという当たり前のことを主張する必要もなくなる。




AIJ問題は氷山の一角?-年金基金はおいしい分野

AIJ投資顧問の驚くべき実態が明るみになってきている。2000億円の預かり金が2%くらいしか残っていないという報道もあり、運用の失敗だけではない不思議な消失ぶりを見せている。おそらく、他の投資顧問にも同じようなところはあると考えられ、金融庁の調査によって驚愕の結果が出てくるだろう。人に運用してもらうことの限界も感じられ、投資の難しさが浮き彫りになってきた。


以前、「年金基金」の担当者が集まる会議に出席し、年金基金はどうやって投資先を決めているのか伺う機会があった。これも驚くべきことに「素人」が投資先を決めているのだ。たまたま異動でその部署に2年くらいいる人が投資先を決めてしまうわけだから、これは何か問題が起こらねばいいがとその時思った。


一方、年金基金をターゲットに投信を売っている知り合いにも話を聞いた。年金基金は個人よりも当然規模が大きいので一つ取れると大きく、相手も素人で厳しくなく、おいしい分野なので、多くの投資顧問が参入してきているという。その結果、最近では競争が激しくなり「過去数年間の実績」が厳しく問われるようになった。だから、AIJのように直近の実績をごまかす会社が現れた。年金基金の担当者はその嘘が見抜けなかったが、素人では無理だろう。


日本では「投資顧問」業は登録制だ。アメリカのように許可制になっていないので、極端にいえば、誰でも500万円の保証金を預け、もっともらしい事業計画書をつくれば登録できる。それで名刺には「関東財務局登録○○番」と入れられるので、実態を知らない素人は「財務省がチェックしてのなら大丈夫だな」と勝手に思ってしまう。詐欺師がそこにつけこまないわけはない。


金融庁がこの事態にどう対応するか。投資顧問を許可制にして雁字搦めにすると、役所への説明とか資料づくりに追われ、本来の業務ができなくなる。そうでなくても投資能力の低い日本人、日本企業だから、ますます国際的に遅れを取ってしまう。役所も自己保身をしなければならないので、結局は何らかの規制強化になるのだろうが、それによって競争力がそがれるという日本のいつものパターンになる。


少数の悪人のために多くの善人、正直者が損をするのが日本社会の特徴だ。今回もこれが繰り返されるなら、何とも残念だ。



HSBCが富裕層ビジネスから撤退ー参入した時から分かっていたこと

昨年、HSBCがプライベートバンキング部門をクレディ・スイスに売却したことがニュースになったが、昨日、その下の1000万円クラスの「プレミア」も撤退するということが大きなニュースになっていた。しかし、これは大騒ぎすることでは全くなく、6年前の参入時から分かっていたことだ。


その時に、ある支店長と懇談したが、証券出身の方らしく、単純に富裕層の方が高額な投信が売れるので「イケル」という感じだった。私からは、そんなに単純な話では全くなく、周辺のサービスもしないと富裕層は無理ですよと申し上げたが、全くの???だった。日本の証券会社でノルマ営業をしてきたようで、全く理解されなかった。


多分、その方も1、2年で「あいつの言っていたことはこういうことだったのか」と理解されたと思う。しかし、気づいた時はもう遅く、どうにもならなかっただろう。富裕層を顧客にするには時間がかかるのだ。今まで、多くの外資系金融機関が日本でやってきた失敗の繰り返しだったと推察する。


昨年秋に何人かの知り合いが、クレディ・スイスのプライベートバンキング部に移ったが、HSBCの部門を買収したので人が必要になったのだろう。内藤忍さんもそこに移ったが、なかなか大変な苦労をされていると想像する。但し、内藤さんは富裕層ビジネスについてかなり研究しており、組織では厳しいということも知り尽くしている。それだけに何か新機軸を考えているはずで、私も楽しみにしている。


外資系金融機関が日本の富裕層ビジネスに参入して、数年後に撤退を繰り返しているのでは、日本の富裕層ビジネス自体が萎んでしまう。確かに超富裕層は「最難関」のマーケットで、マーケッティングの本場アメリカの金融機関でさえ、ほとんどが失敗している現実がある。しかし、金融機関のような組織でも何かやり方があるはずで、内藤さんに期待するところ大である。「やっぱりダメだった」の繰り返しは、そろそろ誰もが御免だろう。

東北大学の今村文彦教授と32年ぶりに再会ー津波の権威

先週は高校の同窓会の打合せがあり、これにたまたま東京にいた今村教授が参加してくれたので、何と32年ぶりに会うことができた。彼は高校の時のクラスの中では目立つ存在ではなかったが、東北大学に入ってから勉強したのだろう。大器晩成とはよく言ったものだ。今では地震や津波の権威だ。


打合せ会後の飲み会では、もちろん今村君に地震の質問が集中した。あの関東での大地震「4年以内に70%」とはどういうことか、という今話題の話だ。何と、今村君は地震の専門家ではなく、津波や災害の専門家ということだが(世間ではそうは見ていないが)、4年以内に70%というのは、可能性の中で高いところを取った数字だろう、ということだった。まあそうでないと困るのだが。


その上で、地震予知はまだまだ難しいことを言っていた。素人でよくわからないのだが、これだけ科学が発達したのに地震がいつ起こるかが分からないというのは、本当に困ったことだ。20年ほど前に東海大地震がすぐにも起きるということで、多くの古い建物が解体されることになったが、まだ起きていないのも皮肉だ。東京の人々が今一番恐れているのは大地震だ。


今村君は話し方が流暢で(昔はどもっていた記憶があるが、訓練の賜物だろう)、今が旬の地震関連の話ができるので、今年の同窓会では同級生の代表として講演をしてもらうことになった。彼が世の中に出てくること自体、地震が起きたということで喜ばしいことではないのだが、当然、こういう分野の専門家も必要だ。地震の被害を最小限にとどめるため、新しい研究をして新しいアイデアも出してほしいものだ。




ハーバード学部にまずは日本人3人合格ーうち一人はバイオリンの名手

アメリカの学部試験は、何回かに分けて行うのが通例だ。今結果が出ているのはearly registrationで、ハーバードには日本人が三人合格したそうだ。東京の高校生とアメリカンスクールの高校生、特筆すべきは大分の女子高生が合格したことだ。既にネットでニュースになっている。


この女性はバイオリンの国際大会で賞をとっている。こういう一芸があるとアメリカの大学は有利だ。日本の大学入試だと、何が出来ても普通入試では筆記試験の成績だけで判断されてしまうので、ある意味不公平ではある。まあアメリカの大学は、「自分の大学名を将来上げてくれるような人材をとる」のが基本なので、一芸があると有利なのは当然だ。また、そういう基準で学生をとるのが合理的な気もする。


もっとも、当然ながら一芸だけでは合格は覚束ない。特に外国人は英語ができないとお話にならない。英語の試験もかなりの高得点を取るのが「必要条件」ではある。その上で、一芸が効いてくるわけだ。だからかなりの難関である。しかも、いったん入ってしまえば、留学生であろうが誰であろうが同じ基準で成績はつけられる。


アメリカに行ったときの一年目で、分かっていたのに英語で違う意味に書いてしまい0点になった苦い思い出がある。教授に口頭で説明したら、「何だ、君は分かっているじゃないか。でもこの答案の英文の意味は違うのでバツだ」と言われた。それがフェアなのだろうと感じた。日本の大学だったら留学生にはこういう場合、点をやることが多いだろう。


私がアメリカに留学したのは28歳のときだったが、やはり新しいことを学ぶには「遅い」気がした。既に頭が固くなって、記憶力も低下していた。これが18歳であれば、多くのものを吸収できただろうと残念に思った。今年ハーバードの学部に行く18歳には、本当に多くのことを学んでそれを将来、日本のために活かしてほしい。


日銀がついにインフレターゲット導入へー浜田宏一教授も満足か?

今週は日銀の追加緩和という意外な政策があった。しかし、もっと意外だったのは1%のインフレターゲットの実質的導入であった。バブル崩壊後から、欧米流のインフレターゲットを推奨する経済学者は多かった。その中でも有名なのはエール大の浜田宏一教授(学界のハマコー)であった。


浜田教授はなぜか、日銀の政策に常にかみついてきた。学界のハマコーといわれる所以だが、特にインフレターゲットをやらねば日本経済はよくならないといい続けてきた。それが結実したのだから、感無量だろう。もっとも今回の日銀の政策変更に浜田教授の言動がどれだけ影響したかはわからない。


思えば、ちょうど9年前になるが、浜田教授が内閣府の経済社会総合研究所の所長を退任し、アメリカに帰国するときに原宿の公務員宿舎に行って引越しを手伝った。その時に頂いたのが、舘龍一郎、浜田宏一共著の「金融」だった。折りしも、今週、舘先生がなくなられた。舘先生がどういう金融政策を推奨されたかは存じあげないが、浜田教授にとってはショックだっただろう。


浜田教授も70代後半を迎え、体もきついだろうが、せっかくエールで最先端の経済学に触れておられるのだから、もっともっと日銀批判も日本の経済政策批判もしてほしいものだ。



鯉師は究極の「ファミリービジネス」ーサラリーマン根性ではできない

先週、山古志の鯉師を何人か訪ねたときに、複数の方から同じ発言があった。それは、「鯉師はサラリーマンのような気持ちではとてもできない」という話だ。これは単純に「生き物を相手にする仕事なので、朝9時から夜6時まで働いていればいいというものではなく、24時間いつでも仕事」という意味だ。


鯉師は会社にしているにしても、従業員はせいぜい10名程度。その中核はあくまでもファミリーだ。ファミリーが24時間、錦鯉を監視している。一匹が数十万以上するので、盗まれでもしたら大変だ。病気で死なせてもゼロになってしまうので、そのあたりのチェックも日々、細かくしなくてはいけない。大変な仕事だ。


それでも多くのファミリービジネスが悩んでいる後継者不足の問題はないという。どの家も息子さんがあとを継いでいる。なぜか?おもしろいからだという。錦鯉を卵から育て、選別をし、品評会に出せる状態にして出荷するまでが楽しい。ものづくりと同じで生き物を育てるのはおもしろいのだろう。子供のころからそういう生活を続けてきているので、違和感なく跡継ぎになるようだ。


また、「結果がはっきり出る」こともおもしろいのだという。品評会で結果が出るので、何の言い訳もできない。サラリーマン社会のように、責任の擦り付け合いとか、言い訳ができればいいという世界とは全く異なる。皆、錦鯉が好きで、餌をやるときの表情が印象的だ。まさに、ここに「ものづくり日本」がまだ生きていると感じた。


錦鯉産業は、ニッチであるが、地方の元気なファミリービジネスの一例として特記すべきものだろう。

山古志村の「錦鯉」ー日本のクール・ジャパンの一つ

錦鯉といえば、誰もが思い出すのが目白の田中邸だ。田中角栄が人気があったころ、よく池の錦鯉に餌を与えている映像が流された。それは今日では、日本人にあまりいい印象を残していないのだろう。国内での錦鯉の売り上げは伸びていないそうだ。その代わり、海外での売り上げはアジア中心に伸びている。


先日、山古志村(現、長岡市)の錦鯉の養殖場を何件か訪ねた。まず驚いたのは、こんな山奥にも係らず、外国人がうようよいることだ。皆、錦鯉を買いに来ているという。長岡のホテルでも随分外国人を見たが、ほとんどが錦鯉の愛好家だという。不思議な世界だ。


だから、鯉師の方も英語ができないと困ることになる。そのため、子弟を欧米に留学させている家が多い。これにもまた驚いた。世界最大の錦鯉流通会社はオランダにあるそうで、オランダに留学する人も多いようだ。そこで英語を学ぶ。


時代の流れで、錦鯉に興味を持つ中国人も増えている。2,3年前にブームになっていたようだ。これからは山古志村の若者が中国に留学して中国語を学ぶ時代もくるのではないか。


震災で全国から義捐金が集まった山古志村だが、コスモポリタンで完全に復興していると感じた。