ベネッセ「ルートH」の実績に驚きー8人中5人がハーバード、エールへ
先日、たまたまベネッセがやっている「ルートH」というアメリカの大学学部への留学サポート機関のパンフレットを見た。2年前に、ハーバードとエールに受かった灘高出身の古賀健太君から、初めてルートHのことを聞いた。彼もこのパンフで合格体験談を語っている。帰国子女以外でハーバード、エールに合格している高校生は、ほとんどここに通っていたことが分かった。
最近のインターネットの発達により、日本にいてもアメリカの大学のことはだいぶ分かるようになった。しかし、学部(undergraduate)の入試情報はなかなかつかめない。日本にも学部を卒業した若者はいるのだが、コンタクトは取りにくい。日本同窓会にコンタクトすると親切に教えてくれるオジサンもいるが、高校生ではこんなこともできないだろう。
しかし、高校生で英語を不自由なく話せ、なおかつ一芸を持っているスーパー高校生が日本でも結構いるのは驚きだ。特に灘高に多い気がする。東京の開成や筑駒にもこういう学生はいるのだろうが、今までは海外に目が向かず、東大理Ⅲに行っていた。しかし、少なくとも開成はハーバード教授をしていた柳沢さんが校長になったことで、来年あたりから合格者も出てくるのではないかと思われる。
日本でも秋学期が実施されれば、アメリカ留学もかなり容易になるだろう。同時に外国の学生も日本に入ってくる。驚いたことにアメリカの学生の留学先として一番人気があるのが「日本」だという。しかし、学期の違いにより難しくなっている。このバリアが外れればどちらの学生にも交流の機会が増える。東大は3年前からエールと提携をしているが、学生の相互交流はまだ順調に行っていないと聞いている。秋学期の効果は大きいだろう。
栄光学園出身の小成君は、東大とエールに合格し、7月までは東大に通っていたが9月からエールに行って、まず留学生の数の差に驚いたそうだ。東大は一学年3100人中、留学生は46人しかいなかったようだ。これでは国際交流などできるわけもない。アメリカは10%が留学生だ。もちろん授業の質も大きく違う。
日本で留学サポート機関は、時々問題を起こしたりしてうさんくさく思われてきたが、ベネッセが参入してきてちょっと変わってきそうだ。こういうところなどを利用して、若者にはどんどん挑戦していってほしい。
ハーバードで本当にサンデル流の「白熱教室」があるかー少なくともメジャーではない
ここ2年ほど、サンデル教授が日本で有名になったため、ハーバードでは全ての授業でああいう議論形式で授業を行っているという誤解が広まっているようだ。確かにそういう授業もあるが、本当に少数派だ。サンデル教授の授業は常に正解や結論がなく、そればかりではさすがに学生も困ってしまう。
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」のエズラ・ボーゲル教授が日本で有名になったときに、日本人は「ハーバードの教授は皆そう考えている」と勘違いした。しかし、日本で有名なこととハーバードで有名なことは違うことが多い。
サンデル教授も有名教授ではあるが、ハーバードで誰もが知っている教授ではない。むしろ日本での知名度が高い。
ハーバードの中で有名な教授といえば、経営学、経済学、政治学といった文系分野では、マイケル・ポーター、ロバート・マートン、ジョゼフ・ナイといったところだろう。こういう人々はハーバードのほとんどの学生が知っていて、日本でも有名だ。その授業は決してサンデル流ではなく、むしろ日本の大学の授業に近く、指名してくることもほとんどない。もちろん、学生の方からの質問は多い。
「日本で有名」な教授は政治家的な要素が多い人だ。それは日本で有名になると企業が大金をもって招くからだ。ポーターなどはある金融機関が1000万円で呼んだという話を聞いた。こんなことは他国の企業ではありえない。ただ、本人に日本のこと、日本企業のことに関心を持ってもらうにはいい。2002年にポーター話したときに特定の日本企業の情報を多く持っていることに驚いた。また質問もされた。
アメリカの教授が優れているところは、授業の話の質だ。サンデル教授の授業は、進め方はすごく上手だが、何かすごい話を聞いたかと考えると、疑問符がつく。ポーターやナイの授業は毎回自分が「知らなかった」視点に気づかされ、それは刺激的だった。こういう刺激的な授業が日本でほとんどないのは残念ではある。
北朝鮮の打上げはまたも失敗ー宇宙開発は一朝一夕には無理
世界が注目していた北朝鮮のミサイル打上げは大失敗に終わった。何ともあっけなくて、白けた結果になったが、この事態は予想されていた。2006年にも失敗はあり、我々が知らないところでも失敗はしているだろう。アメリカは偵察衛星を多く持っているので、こういう動きは瞬時に把握している。
米ソでさえ、宇宙開発は失敗の連続だった。多くの宇宙飛行士が犠牲になってきた。旧ソ連では自由化前は情報公開が十分でなく、しかも宇宙開発は高度な国家機密の世界なので、失敗も隠されてきた。有名なガガーリンの前にも大気圏外から地球を見た宇宙飛行士はいたとウワサされるが、最初に地球に無事に戻ってきたのはガガーリンだ。だから彼は有名になれた。アメリカもチャレンジャー事故など、失敗は数多い。
日本も宇宙開発分野では世界最高の安全技術を誇るが、それでも打上げ失敗は5%程度は出てくる。こんな難しい分野に北朝鮮の科学者、技術者がいくら努力しても、経験がないだけに難しい。宇宙開発は失敗を繰り返して技術も進歩するものだ。そのあたりの ことを北朝鮮首脳は分かっているのだろうか。
日本の宇宙開発は1950年代に糸川教授が「ペンシルロケット」の実験を行ったことから始まった。それから50年研究者が精魂を傾け、ようやく自前の大型ロケットを持ち、欧米にも対抗できるようになった。北朝鮮も一流になるには相応の時間と経験が必要であり、それを分かっていない独裁為政者は今後も失敗を続け、国の威信を失うだろう。
今月の日経「私の履歴書」は蜷川幸雄さんー開成出身の同期出世頭?
今月の私の履歴書は演出家の蜷川幸雄さんだ。この人とは当然、何の接点もないが、最近よく話しをしている元経団連事務総長の内田公三氏の開成同期で、同期ではやはり一番の有名人だという。しかし、ご本人が書いているように、中高では落第をしたり大学受験も失敗したりと、そういう面では落ちこぼれていたようだ。
これは誰でも経験しているだろうが、20年ぶり、30年ぶりに同級生に会うと、意外な人が出世していたり、成績がよかったのに全然つまらない仕事をしていたりと、驚くことが多い。いわゆる「東大までの人」も多く、そうかといえば、二流の大学出身でも大企業の部長に早くなっている人もいる。全く不思議な話だ。
この原因は何だろうかと誰でも考える。飲み屋でのサラリーマンの会話を聞いていると、この話題は非常に多い。あいつは高校時代は俺より全然勉強はできなかったのに今では出世している、という類の話だ。アメリカで「IQよりEQが重要だ」といって注目された学者がいたが、それもこの原因を考える一つの試みではあった。それでもまだまだ定説は出ていないのではないか。
開成で「二番」だった内田さんは、東大から経団連に入り事務総長になったのだから、それなりに出世した方だろう。他にも企業や役所で重要な地位を占められた方は多いようだが、一番の有名人は蜷川さんだそうだ。まあ大企業の社長になっても「有名人」とは違うので評価は難しいが、少なくとも高校時代の成績と社会に出てからの成功は違うものということは事実だろう。
ビジネススクールはハーバードよりスタンフォード?-ハーバード日本センターの悩み
先週、ハーバードビジネススクール(HBS)の日本同窓会に参加した。年度末だったので参加者は少なかったが、日本センターの方から意外なことを聞いた。それは、ハーバードとスタンフォードのビジネススクール両方に合格した日本人で、スタンフォードを選ぶ人が増えていることだ。冷静に考えると、そもそも難易度はスタンフォードの方が高いという事実もある。あるいはケロッグ(ノースウェスタン大)の方が難易度が高いとも言われる。
日本人はどうしても大学の難易度をピラミッド型で考える習慣がついてしまっている。日本の大学はそうだが、アメリカでは上位10くらいの大学はほとんど差がない。学部によって難易度はまちまちだったりする。確かにハーバードはトータルでみると全米一かも知れないが、ハーバードが全米一の学部は本当に少ない。ビジネスやローでトップだったことはないかもしれない。
HBSは定員が一学年900名と非常に多いことで難易度は低くなっている可能性がある。しかし、日本人はハーバードは日本で言うと東大だと多くの人が思っているので、例えばケロッグとHBSを合格した場合に多くはHBSにいく。たまにケロッグにいく日本人がいると驚いて、東大を蹴って慶応に行ったようなものだ、などと言われる。
そもそも、アメリカ人は大学で「何をしたいか」で進学先を考えるので、ハーバードを蹴って他の大学に行く人は多い。合格者の2割くらいいるので特にニュースになることもない。だから今人気のあるグーグルやアップルのあるシリコンバレーで就職したい人はスタンフォードにいく。当然の話だ。日本人もようやくこういう人が増えてきただけの話だ。
東部の大学出身者には寂しい話だが、明らかに今は西の方が活気があるので仕方がないことかもしれない。
エール大浜田宏一教授の師匠である館龍一郎先生ー今日の日経「交友抄」
今日の日経交友抄は、「学界のハマコー」ことエール大教授の浜田宏一氏だった。先月、舘龍一郎先生が亡くなられたが、浜田教授の師匠だけに随分落旦しているのではないかと想像していた。何と言っても、2003年初頭に浜田教授がエール大学に帰るときに私にくれた本が、舘・浜田の共著「金融」だった。
浜田教授は日銀の政策を批判することで知られているが、その根本には舘先生から教わったことがあるようだ。しかし、これは誤解かも知れない。何でも政府、日銀のすることを批判するのはおそらく舘先生の意思に反するのではないか。しかし、浜田教授の日銀批判は一生続けてほしい。これが自称、学界のハマコーたる所以だ。
もう一つ、浜田教授は舘先生から、「新たな次元をひらく研究」を薦められたという。これはアメリカの教授なら誰でも考えていることだが、日本人の苦手な分野でもある。浜田教授もゲーム理論や行動経済学など、新しい分野で実績を残そうとしたようだが、これはそう簡単ではない。
浜田教授は1 986年に東大からエールに移って、当時は「頭脳輸出」と騒がれたようだ。本人もそのころはノーベル賞への夢もあったようだが、エールにいくと相当な天才ぞろいで、一時ノイローゼ気味になったという。今年は日本人の若手経済学者がエールに就職するという話もあり、浜田教授にはそういう後進への指導に期待するところ大だ。
開成の強さと海陽学園の躍進ー今年の東大合格者
今年も東大合格者が発表された。相変わらず開成の強さが目に付いた。数では31年連続トップで2位の灘の倍以上だから、今後もよほどのことがない限り開成の日本一は続くだろう。もっとも、合格率では灘や筑駒の方がいいかもしれない。
今年はもう一つ、愛知の海陽学園の「結果」が注目されたが、前期で13人合格ということで予想通りの好結果だった。トヨタなどの企業が支援しているため、奨学金も潤沢で、来年以降も優秀な人材を集めますます伸びるのではないか。個人的には特に日本で「全寮制」の学校が必要だと考えている。
全寮制はイギリスで始まったようだが、その趣旨は「青白い秀才をつくらないこと」と聞いた。要は、通学時間に多くをとられていると文武両道を成し遂げるための「時間」がなくなる。時間をつくるために通学時間をなくして勉強と運動を十分に行う趣旨のようだ。日本の高校生は都会でも地方でも通学時間が長いので「全寮制」のメリットは大きいだろう。
東大合格200人以上の開成にしても、もちろん問題もあるらしい。経団連の元事務総長で開成の理事を14年間務めていた内田さんに聞くと、東大に毎年200人も合格しているのに伸びる人が少ないという問題があるようだ。いわゆる「東大までの人」が多いということだろう。このあたりは、昨年から校長になった戦略的な柳沢さんは十分に考えており、ハーバードで教授をした経験を今後、開成で活かしてくれるだろう。先日話をしたら「より本質的なことを理解させる教育をしている」とのことだった。
才能のある若者が伸びないのなら、これは日本の損失だ。今年から開成もハーバードのブックプライズに参加していることもあり、トップの生徒はどんどん海外に「学部」から出て行って、世界的な人材になってほしいものだ。そのためのボランティアは、ハーバード卒業生なら誰でも喜んでするだろう。
秋学期に向けた一橋大の施策は疑問ー大学生の自主性に任せるべき
秋学期の導入に向けて、各大学では検討が進んでいる。まず問題になるのは、4月から9月までの期間をどうするかという話だ。一橋はこの間に英語とか大学で学ぶ基礎的な教育をすると考えているようだが、これには反対だ。
確かに日本的な考えだと、大学は「何かをしなければならない」と考えるのはある意味当然だ。しかし、相手はもう18歳以上の大人である。ここは大学生の自主性に任せてはどうか。勉強をしたい者はそうさせて、外国へ留学したい人は自由に行かせるなど、自由にやらせたらいいと考える。
アメリカでは、この期間は全くフリーだ。但し、勉強したい、あるいは単位を取りたいという人は当然いるので、その人たちのために「サマースクール」をやっている。要は学生が自由に選択できるようなシステムをつくっておけばいいのだ。これについては、以前、エール大の浜田宏一教授(自称、学界のハマコー)がいいことを言っていた。
浜田教授はずっと東大で教授をしていたが、とにかく日本の有名教授は「時間がない」のだという。審議会の委員になったり、大学の中の会議などに忙殺され、研究している暇がないそうだ。確かにそうだろう。アメリカの大学にいくと、学期中は生徒の教育(日本の大学ではここは甘い)に忙殺されるものの、夏休みが4ヶ月以上あり、この期間に教授が自由に研究できるのがアメリカの大学の研究の質を上げ、学生には「懐の深さ」をつくっているという。
この「懐の深さ」こそ、アメリカ人のエリートが伸びている秘訣だと感じている。夏休みに研究を深化させる者、あるいは世界一周旅行をする者、あるいは寮でポーカーに興じる者(ビル・ゲイツはこのタイプだった)など、各人が「自分で考えて」時を過ごすのだ。日本の大学生にはその機会が非常に少なく、大学がつくったレールの上で4年間を終えてしまう。これでは「大物」は出ないだろう。
まさに大学教育の大きな転機であるこの時期に、私のゼミの先生だった元大学審議会会長の石川忠雄先生がいないことが悔やまれる。石川御大だったら、こういう取りまとめは学界髄一だったので、日本の大学教育をいい方向に導いてくれただろう。また私も先生に意見を言って、日本の教育政策に若干でも貢献できたかも知れないと、残念でたまらない。
Face Bookのザッカーバーグと同じ学歴を持つ日本人ーフィリップス・エグゼターからハーバード
Face Bookがアメリカで上場するということで、創始者ザッカーバーグは20代にして数百億の金持ちになることが話題だ。ザッカーバーグは言うまでなく大天才で、日本人から見ると非常に遠い存在に思える。しかし、知られていないが、サッカーバーグと同じ高校、大学にいった日本人も少なくとも数人はいるのだ。
ザッカーバーグの通った高校は、ニューハンプシャーのフィリップス・エグゼター。アメリカ人なら誰でも知っている全米一の高校だ。全寮制で物事の本質を教え、自分で考える力をつけるという、アメリカのボーディングスクールの典型のような学校だ。そこからは多くの学生がハーバードに進学する。ザッカーバーグも当然のようにハーバードに行った。
確かに、私がハーバード大学院にいたころ、よく同じ学科の学生が「おれとテッドはエグゼター出身だ」と言っていたのを思い出す。当時は何を言っているのかまったく分からなかったが、今思えば、それは自慢だったのだろう。まあ当時から私は、ハーバードの学生は「別世界」の人間だと思っていたから、彼らとまともに競い合うことなど考えもしなかった。
しかし、世の中は広いもので、エグゼターからハーバード(学部)に行っている日本人もいるのだ。ハーバードクラブに出ると若手でそういう経歴の日本人が複数いる。彼らは外資系企業に勤めているが、おそらく大天才なのだろう。こういう人を日本企業は採用する度量はまだないだろうが、大天才を使いこなせないと日本企業の国際化も絵に描いた餅に終わってしまう気がしないでもない。
天才の気持ちは凡人には分からないが、日本社会や日本企業もそろそろ天才を「異質」なものと捉えないで、国の宝と思わないと、日本はいつまでも農耕社会のままで国際化などできないと思うのは私だけだろうか。韓国のサムソンなどは、こういう天才を積極的に採用しているようだ。日本企業も負けてはいられないだろう。
日経も「オーナー系企業」の業績のよさに注目ーやはりファミリービジネスが日本復活の鍵
どうも「ファミリービジネス」というと「それは何」という反応が多く、日本ではまだまだ馴染みが少ない。日経新聞では「オーナー企業」という表現を使っていたが、この方が分かりやすいかなと思った。日経は、今の日本企業で業績がいいのはオーナー企業であり、特に地方のオーナー企業がその地域の経済を引っ張っている例が多いという。その通りだ。
未だにオーナー企業というのは、オーナーだけがおいしい汁を吸っていて、社員のことを考えず業績も悪い、というイメージを持っている人は多い。確かにかつてはそういう企業もあっただろうが、日本企業の淘汰とともにそういうオーナー企業はなくなってきている。日本でもようやくオーナー系企業の「よさ」が認識され始めてきた段階だろう。事実そうなので、この芽は大きくしていかねばならない。
そうはいっても、まだまだマスコミ等でオーナー企業が槍玉に挙げられることは多い。昨年の林原、大王製紙の問題がいい例だ。しかし、冷静に考えるとこの二つとも会社の問題というよりは、「ばか殿」の問題であり、まともなオーナー企業はそれを防ぐためにさまざまな工夫をしている。養子や番頭がその一例だ。
あるオーナー企業のトップは、「大王製紙みたいにおもしろおかしく報道される危険があるので、私は身の回りのことは相当注意している」と語っていた。私は「自然体でいいのではないですか」と申し上げたが、今のマスコミの姿勢は日本で唯一の希望といっていいオーナー企業の発展にとってマイナスだろう。
まだまだ、日本ではオーナー企業というとアレルギー反応を起こす人は多いが、本当は強いのがオーナー企業だ。むしろ、誰も言わないが、勝ち組のオーナー企業は就職先としてもいいのですよ、ということまで広めていきたいと考えている。