秋学期に向けた一橋大の施策は疑問ー大学生の自主性に任せるべき | 日本ファミリーオフィス協会

秋学期に向けた一橋大の施策は疑問ー大学生の自主性に任せるべき

秋学期の導入に向けて、各大学では検討が進んでいる。まず問題になるのは、4月から9月までの期間をどうするかという話だ。一橋はこの間に英語とか大学で学ぶ基礎的な教育をすると考えているようだが、これには反対だ。


確かに日本的な考えだと、大学は「何かをしなければならない」と考えるのはある意味当然だ。しかし、相手はもう18歳以上の大人である。ここは大学生の自主性に任せてはどうか。勉強をしたい者はそうさせて、外国へ留学したい人は自由に行かせるなど、自由にやらせたらいいと考える。


アメリカでは、この期間は全くフリーだ。但し、勉強したい、あるいは単位を取りたいという人は当然いるので、その人たちのために「サマースクール」をやっている。要は学生が自由に選択できるようなシステムをつくっておけばいいのだ。これについては、以前、エール大の浜田宏一教授(自称、学界のハマコー)がいいことを言っていた。


浜田教授はずっと東大で教授をしていたが、とにかく日本の有名教授は「時間がない」のだという。審議会の委員になったり、大学の中の会議などに忙殺され、研究している暇がないそうだ。確かにそうだろう。アメリカの大学にいくと、学期中は生徒の教育(日本の大学ではここは甘い)に忙殺されるものの、夏休みが4ヶ月以上あり、この期間に教授が自由に研究できるのがアメリカの大学の研究の質を上げ、学生には「懐の深さ」をつくっているという。


この「懐の深さ」こそ、アメリカ人のエリートが伸びている秘訣だと感じている。夏休みに研究を深化させる者、あるいは世界一周旅行をする者、あるいは寮でポーカーに興じる者(ビル・ゲイツはこのタイプだった)など、各人が「自分で考えて」時を過ごすのだ。日本の大学生にはその機会が非常に少なく、大学がつくったレールの上で4年間を終えてしまう。これでは「大物」は出ないだろう。


まさに大学教育の大きな転機であるこの時期に、私のゼミの先生だった元大学審議会会長の石川忠雄先生がいないことが悔やまれる。石川御大だったら、こういう取りまとめは学界髄一だったので、日本の大学教育をいい方向に導いてくれただろう。また私も先生に意見を言って、日本の教育政策に若干でも貢献できたかも知れないと、残念でたまらない。