お気に入りのSTEFANO BOLLANIらが参加するEGEAレーベル作品ということで迷わず入手。39:49というLP並みの短さですが、内容は素晴らしいです。本作は、EGEAレーベルにおけるRAFFAELLO PARETIの2枚目のリーダー作で2006年リリース。前作のメンバーにSTEFANO BOLLANIが加わり、2005年10月と2006年4月にペルージャのAUDITORIUM SANTA CECILIAで録音されています。全9曲中7曲がRAFFAELLO PARETI作曲、1曲がBEBO FERRA作曲、もう1曲は作者不詳の小曲でタイトル曲となっています。ANTONELLO SALIS、STEFANO CANTINI、BEBO FERRA、RAFFAELLO PARETIのカルテットが主体のオールイタリアンによる演奏は素晴らしいの一言。美しいメロディや心浮き立つリズムを生かしたトラッド色を感じる明るく楽しい雰囲気の曲が多く、曲によってはユーモラスに、あるいはメランコリックにという具合で聴き応えは満点です。私、STEFANO CANTINIを聴くのは本作がおそらく初めてかと思いますが、彼のソプラノサックスはいいですね。
2曲目のLA DANZA DI ZOEは、イタリアの田舎の陽気なダンスを思わせる曲調でアコーディオン、ピアノ、ベースのトリオによる演奏。ANTONELLO SALISのダミ声スキャットとともに強烈にドライヴするアコーディオンソロや、軽やかに歌いまくるSTEFANO BOLLANIのピアノソロが楽しさいっぱい。
3曲目のMISSINGは、ちょっぴりメランコリックなムードのスローボッサふう。STEFANO CANTINIのソプラノサックスはいいですね。BEBO FERRAのギターも素敵な、海を感じる1曲。
4曲目のDROST NIAは、陽気なダンスを思わせる曲。ANTONELLO SALISのスキャット混じりのご機嫌なアコーディオンソロとなり、途中で誰かが何かを訴えるように話し始めると、それぞれが皆一斉に何かを叫び始め、演奏もしだいにグッチャグチャになって何やら騒然としたムードになっていくのが可笑しい。が、ANTONELLO SALISはノリノリでアコーディオンを弾きまくりながらダミ声でスキャット、スキャット、スキャーット!ん~、楽しいなー!
*私には、なかなか終わろうとしないANTONELLO SALISのソロにあきれ果てたみんなが「ああ~、また、おやっさんのいつものが始まった。いかん、完全にあっちの世界へ行っちまってるぜ。おい、誰かヤツを止めろ!」などと騒いでいるように聞えるのですが(笑)誰かイタリア語が堪能なかた、この部分を通訳してくださいませ<(_ _)>
5曲目のINFANZIAは、ゆったりしたテンポ。ちょっぴり切なく美しいメロディが印象的。穏やかに心に沁みてくるような演奏には優しさがいっぱいで、思わずうっとりと聴き惚れてしまう。BEBO FERRAのギターが素敵。
6曲目のVALA RALBONI ! は、ソプラノサックスとピアノのデュオ。中盤のボラーニの生き生きとしたピアノソロが素晴らしい。
8曲目のCOME NEI FILMは、歌謡的な雰囲気がたっぷり。主役のソプラノサックスがよく歌っています。
9曲目、BEBO FERRA作曲のYUSIFは、ANTONELLO SALISの演奏するプリペアードピアノが印象的で、民族楽器のような壊れたシタールのような、なんとも切なく不思議な音色で強烈にドライヴしています。ベースがアルコで奏でる悲しげなフレーズの繰り返しが印象的。
イタリアのペルージャ(ウンブリア州の州都)で設立されたジャズレーベルEGEAのコンセプトは“地中海”への帰属意識ということなんだそうです。実際にいろんな作品を聴いてみると分かるのですが、いわゆるスウィングやバップなどのアメリカ的なジャズとは一線を画す音楽性で、地域性と風土色を強く感じさせる独自のレーベルカラーを打ち出しています。作品にストリングスが入るのは珍しくないですが、ドラムの起用がほとんどありませんし、パーカッションの入らないことも珍しくないので、室内楽的雰囲気を感じることが多いのも特徴のひとつでしょうか。
“地中海”ということで考えてみますと、本作にはそれがよく表現されているような気がします。イメージされるのは、眩しい太陽の光、穏やかな海、乾いた空気が運んでくる潮の香り、歌とダンス、そこはかとない郷愁、といったもの。洗練されているけれど、どこかのどかで飾らない素朴さや陽気な民族性が感じられて、心地よく耳を傾けているうちに時間はあっという間に過ぎ去ってしまいます。そしてもう一回、もう一回と繰り返し聴きながら、まだ見ぬイタリアと地中海へと思いを馳せてしまうのでした。
*どうでもいいオマケ
あの~、前々から不思議に思っていることがあるのですが、ANTONELLO SALISさんは何でいつもタンクトップ姿なのでしょうか?(笑)
なるべく太陽の光を全身に受けるようにしているからなのか?暑がりなのか?鍛え上げたボディを見せびらかすためか?たんにそういうスタイルが好きだからなのか?
謎です。
でも、私は、ANTONELLO SALISの演奏が好き♪これからもぜひトレードマークのタンクトップ姿でがんがん弾きまくってほしい。でも、風邪ひかないようにね、ANTONELLOさん。
ANTONELLO SALISのHP
http://www.antonellosalis.com/
STEFANO CANTINIのHP
http://www.stefanococcocantini.it/
EGEAのHP
http://www.egeamusic.com/
本作もそうですが、EGEAレーベル作品のほとんどはペルージャのAUDITORIUM SANTA CECILIAというホールで録音されるのですね。ここで、キューポラを備えるバロック建築の様式美を眺めながらジャズのコンサートを体験したらきっと素敵でしょうね~♪(うっとり)誰か、連れて行ってくれぇー!
http://www.auditoriumsantacecilia.it/
■RAFFAELLO PARETI / MAREMMA (Egea Records SCA 199)
ANTONELLO SALIS (acc, prepared piano, perc) (1950年2月28日、イタリア、サルデーニャ島の生まれ)
STEFANO CANTINI (ss) (1956年生まれ)
BEBO FERRA (g) (1962年4月29日、サルデーニャ島の生まれ)
RAFFAELLO PARETI (b)
STEFANO BOLLANI (p) (on 2, 3, 6) (1972年12月5日、ミラノ生まれ)
WALTER PAOLI (perc) (on 4)
入手先:VENTO AZUL RECORDS(通販)