つい最近知ったOVE INGEMARSSONがお目当てなのと、第33回スカンジナビアン・コネクションのための予習ということで入手。
本作のバンド名はPERSONKRETS II-V-I。アルバムタイトルがOBSOLETE MUSIC(時代遅れの音楽)となかなか洒落ております。しかし曲名は全てOBSOLETE PIECE(時代遅れの小品?)で、#1 から#8までの番号がふってあるだけ。これ、ちょっと愛想無さすぎません?予習すんのに曲覚えにくいしー(笑)
本作に収められた全8曲は、ANDERS PERSSONがイェーテボリ・ジャズ協会とスウェーデン放送からの依頼で書き下ろしたものだそうで、録音は2006年5月。本作はおそらく一発録りでオーヴァーダビングなどは無いようです。
OBSOLETE PIECE #1は、YASUHITO MORIの印象的なベースラインで始まる。苦みばしったムードと哀愁や叙情が交錯するハードボイルドな曲想がいい感じ。
OBSOLETE PIECE #2は、ドスの利いたベースラインと跳躍する音使いのホーンでテンションが高まる。JOHAN BORGSTROMの咆哮するテナーソロには思わず注目。MAGNUS GRANのブラシはもっと壮絶に走ってもいいぐらいだけど。
OBSOLETE PIECE #3は、気だるげなルバートで始まり、一転してなんともいえない不安感と切羽詰った緊張感でいっぱいのテーマへ。ジャズで聴くぶんにはいいけれど、のんびりやの私の人生にこういう不安と緊張が訪れるのはヤだ(笑) JOHAN BORGSTROMのテナーソロはなかなかの熱血でエキサイティング。最低音と最高音のそれぞれで思い切り良く大見得を切る吹きっぷりが良い。音色を自在に変化させ色彩豊かな表現も。
OBSOLETE PIECE #4は、朗々と歌いながら徐々に盛り上がるOVE INGEMARSSONのテナーが聴きもの。ANDERS PERSSONは、ソロもいいけれどバッキングの方が光ってるんじゃないでしょうか。
OBSOLETE PIECE #6は、哀愁漂う可愛らしいメロディーが美しい。切ないムードを醸し出すOVE INGEMARSSONのテナーソロがええのだ。
OBSOLETE PIECE #7は、緊張感とユーモアが交錯しつつ淡々と運んで行く感じ。聴きものはJOHAN BORGSTROMの豪胆なテナーソロ。
OBSOLETE PIECE #8は、明るく爽快な雰囲気で軽快に飛ばしていて、JOHAN BORGSTROMのソプラノとOVE INGEMARSSONのテナーの掛け合いも楽しい。ちょっぴりラテンフィーリングのあるピアノソロが良いアクセントとなっています。
バンドのリーダー格と思しきANDERS PERSSONは、特に超絶なソロで聴き手を唸らせるわけではありませんけれど、硬軟両面でセンスある響きを聴かせています。アルバム全体にわたる丹念で重厚な音作り、メリハリのつけ方、叙情と哀愁のさじ加減が抜群に上手いバッキングのセンス等には並々ならぬ才能を感じます。本作は、「ホレ、行ったらんかい!」的暴走ハードバップとはまた違っていて全体に洗練されおり、ハードドライビングではあるけれど品性ある大人のハードバップという感じ。作曲・アレンジともに良いので繰り返し聴いても飽きない作品ですね。
JOHAN BORGSTROMのテナーソロは大らかで野生的。「しょうもないことでくよくよすんなー!」と言って背中をバーンと叩かれたわけではないけれど(笑)メリハリを利かせて豪快に歌う頼もしい番長タイプという感じか。ソプラノサックスはOVE INGEMARSSONのほうが私は好きですけど。
OVE INGEMARSSONのテナーは、コントロール抜群の美しい音色で朗々と歌う文武両道に秀でた優等生タイプ(しかも涼しい眼をした男前)という感じかな。5月の青空のように爽快!だったり、切なく訴えるような抑制された歌心もあったりと表現力も豊かです。この人のクラリネットは少女のように可愛らしい音色だと思いました。ちょっと対照的な二人のソロを聴き比べたり、息の合ったユニゾンが醸し出す分厚いホーンサウンドやアンサンブルの妙を堪能したりしてなかなか楽しめました。
YASUHITO MORIのベースは自らは決して突出せず目立たないけれど、全体をしっかり支えている感じで好感が持てました。
ただひとつだけ難を言わせてもらうと、本作の録音はいまひとつかなぁ。特にピアノの音が綺麗に聴こえてこないのが残念です。
さて、このメンバーで来日し、ツアー真っ最中の第33回スカンジナビアン・コネクション。関西で聴けるのはちょっと久しぶりなのです。
御用とお急ぎでないかたは、スウェーデン在住のコントラバス奏者 “森 泰人”さんの「Mori Music KB 森 泰人」のウェブサイトをご覧ください。森 泰人さんは、北欧と日本の音楽のかけ橋”スカンジナビアン・ジャパン・コネクション”プロジェクトを主催されています。
http://www.music-net-jp.com/morimusic/
本作のボス(?)、ANDERS PERSSONのウェブサイトはこちら。
http://www.gac.se/andersP/aboutAP.html
■PERSONKRETS II-V-I / OBSOLETE MUSIC (Imogena Records IGCD 137)
OVE INGEMARSSON (ts, cl)
JOHAN BORGSTROM (ss,ts, bcl)
ANDERS PERSSON (p)
YASUHITO MORI (b)
MAGNUS GRAN (ds)
入手先:HMV(通販)
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